変革のカギを握るCxOの挑戦 #20

富士通の全社DXプロジェクト「フジトラ」、実現した先に見据える未来【執行役員 EVP・CDXO・CIO福田譲】

前回の記事:
社長が人気お笑いコンビのコントを実演? DXを推進する富士通の独特な仕組みづくり【執行役員 EVP・CDXO・CIO福田譲】
 小林製薬 執行役員 CDOの石戸亮氏がマーケティング・DX・CX領域で活躍するエグゼクティブにインタビューし、その人が実績を出している裏側にある考え方を解き明かしていく連載。

 第10回は、SAPジャパンの代表取締役社長から、2020年4月に富士通へ転職し、執行役員 EVP・CDXO(Chief Digital Transformation Officer)・CIO (Chief Information Officer)として富士通を変革する全社DXプロジェクト「フジトラ」を主導する福田譲氏が登場する。前編では、全社で推進しているDXプロジェクトでの具体的な取り組みと推進していくための仕組みについて紹介した。後編では、変革を主導する福田氏が富士通へ入社したきっかけと、日本企業が変革するために必要な考え方などについて詳しく聞いた。
 

「日本を、世界を、もっと元気に!」というパーパスを実現するために


石戸 福田さんがCDXOになられる前は、時田隆仁さん(代表取締役社長 CEO)がCEOとCDXOを兼任していたと聞きました。CEOが自らCDXOやCDO(Chief Digital Officer)を務めるというケースは少ないと思いますが、時田社長はなぜ自らCDXOを務めていたのでしょうか。

福田 おそらく、時田がこの会社で一番危機感を持っていたからだと思います。彼は社長に就任する直前まで英国・ロンドンに駐在し、グローバル・デリバリーの責任者でした。英語圏の事業の競争環境は熾烈で、インドのベンダーなどに苦戦していたのです。
 
富士通 執行役員 EVP・CDXO・CIO
福田 譲 氏

 1997年SAPジャパン入社、23年間勤務、2014~20年の約6年間、代表取締役社長。2020年4月、富士通に入社、現職。CDXO(最高デジタル変革責任者)および社内ITの責任者CIOとして同社自身のDX、日本型DXの探索・実践とフレームワーク化、そしてそれらの変革を推進するITシステム、IT部門、IT人材、そしてITガバナンスへの変革に取り組んでいる。「日本を、世界を、もっと元気に!」がパーパス。

彼は現地でその競争を目の当たりにして、「いまは言葉の壁があるから日本国内では優位だが、AIが発達して言葉の壁がなくなれば、富士通は世界で競争力を維持できないのではないか」という危機感を持っていました。そのような危機感から、前例にとらわれない経営改革を志向し、「富士通をDXカンパニーにする」と就任当初に宣言したのです。私が富士通に入社したのも、そのような経営トップの覚悟や変革への強い意志を感じたからです。

石戸 なるほど。福田さんは、どのような想いで富士通に入社されたのですか?
 
小林製薬 執行役員CDOユニット ユニット長 
石戸 亮 氏

 サイバーエージェント入社、子会社2社の取締役を務め、Google Japanにおいて大手広告主のデジタルマーケティングを支援、イスラエル発のAIスタートアップ企業のデートラマでは日本市場参入を推進。セールスフォース・ドットコムによるデートラマ買収時には、日本市場におけるPMIをリード。2020年4月からパイオニアの全社CDOやカンパニーCMOとして非上場後の再成長期に従事。小林製薬では2021年よりデジタル戦略アドバイザーを務め、2023年より同社へ入社し、CDOとして全社のDX推進を牽引している。ノバセルの事業戦略アドバイザーも兼任。マーケターやIT企業、スタートアップ企業の集まる東京タワー近くの肉バル「Trim」のオーナー。趣味はキャンプ。

福田 富士通はもともとSAPジャパンのお客さまで、パートナーでもあったので、接点は多く持っていました。「富士通は日本株式会社のIT本部のような存在なのだから、デジタルやITを戦略的に活用して本質的な経営改革を断行し、他の日本企業のお手本になるべきだ」と思っていました。私のパーパスは「日本を、世界を、もっと元気に!」でもあり、富士通の改革とタイミングが重なってご縁になりました。
   

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