変革のカギを握るCxOの挑戦 #22

「ミッションを策定しない」と決めた天才エンジニア、独自の視点で築いた組織カルチャー【WED 代表取締役 山内奏人氏】

 

エンジニアとしてのキャリアを諦めた天才エンジニア


石戸 今後のWEDとしての山内さんの展望をお聞きできますか。

山内
 最近は、ソフトウェアとそれ以外の領域の関係性がものすごく近づいていると感じています。たとえば、ARグラスをかけて、ただの紙の上に何かを映したら、その紙がディスプレイになる、つまりハードウェアになるわけです。また、米国マサチューセッツ工科大学メディアラボ(MITメディアラボ)でも、「タンジブル・メディア」という触れるメディアの研究が行われています。

その中で、我々がソフトウェアだけに目を向けていればいいのかといえば、そうではないと考えています。そこで、ソフトウェアとそれ以外の領域が重なるところに対して、何かできることはないだろうかと日々思案していますね。
 

石戸 なるほど。山内さんは情報のアンテナの張り方が他の起業家やマーケターと違うような印象があります。普段から、どのように情報をキャッチアップし、どのような観点でインプットしているのでしょうか。

山内 情報源は主にTwitterですね。そこで興味をもった話題について、できるだけ原文を読んだり、元の映像を見たりしています。石戸さんがぼくに感じるような少し特殊な部分は、ぼくはエンジニアのキャリアを諦めたエンジニアだからだと思います。

石戸 天才エンジニアと言われたのにですか?

山内 はい、そうですね。というのも、技術がどのように展開していくのか、その技術によって何を成し遂げるのか、どのようなプロダクトをつくると良いかを考えるほうがコードを書くよりも得意だと気づいたんです。

つまり、ぼくは「手のない画家」だと思います。ぼくの構想を実現するためには、エンジニアやデザイナーなどのメンバーと一緒に取り組んでいく必要があり、メンバーからぼくの脳みそを信頼されていないとそれは成り立ちません。プロダクトづくりはとても難しく、5年先、10年先の世の中がどうなっているかを見通しながら開発する必要があります。ぼくの判断が少しでも間違っていたら、組織はまったく違う方向に進んでしまうので、そこにはある種の危機感があるんです。

石戸 エンジニアのキャリアを諦めたという話には驚きましたが、そういう思いがあったのですね。最後に、挑戦しようとしている人に向けて、アドバイスをいただけますか。
  

山内 いろいろな人と話す中で多くのアドバイスをもらいます。ただ、一見良いアドバイスに見えても、実は悪いアドバイスのときもあります。それは相手が悪気があってそうしているのではなく、その人の経験でしか語られていないため、正しいアドバイスであるとは限らないということです。

それを間違って取り入れてしまったときに、後々すごく自分を苦しめることになるので、アドバイスは何でも受け入れるのではなく、話半分に聞いておくくらいの気持ちでいるのがいいのではないかなと思います。

石戸 それは自分の軸や信念を大事にするという感じですか。

山内 そうですね。また、どんな相手であっても素直に真実を伝えていくことが大切だと思います。少し生意気な感じに思われるかもしれませんが、ぼくは意外とそれで良かったなという感覚があるんです。

石戸 貴重なお話をたくさんいただきました。本日は、ありがとうございました。
  
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