ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #14

日の目を見る、Jリーグのアジア戦略「サッカーに投資すれば、日本企業の進出もうまくいく」【Jリーグマーケティング山下修作】

ビジネスに活用できる「サッカーの可能性」

田岡 実際にJリーグの紹介がきっかけで、海外進出に成功した企業の事例を教えてください。

山下 例えば、横浜F・マリノスのスポンサーである、青森の医療商社 協和医療機器がミャンマーに進出しています。ミャンマーの一大財閥の御曹司をオーナーに持つ「ヤンゴン・ユナイテッド」というチームに育成ノウハウを提供している横浜マリノスが橋渡しをしています。Jリーグの紹介で進出した国でCTやMRなどの医療機器が売れると利益中から一定の割合でお金をもらう契約です。Jリーグはひとチームが年間20試合しかホームゲームがありませんが、この契約で試合のない日でも医療機器が売れれば、チームの収益になる仕組みです。



田岡 色々な会社同士をコーディネートしてビジネススキームをつくり、自社も含めてWin-Winにする、商社のようなビジネスモデルですね。

山下 そう言われることも多いですね。他にも、セレッソ大阪のメインスポンサーであるヤンマーがタイでシェアを広げる際にサッカーを活用しています。セレッソ大阪が「バンコク・グラス」というチームと提携して「U14(14歳以下のチーム)」の組織構築を手伝いながら、ヤンマーがタイの地元の農協と共催してサッカー教室を開催しています。



 そして、その活動を通じて地方のサッカー教室で活躍した子どもをバンコク・グラスのU14チームに加入させ、さらに学校に通わせてあげたりします。すると、地方で光が当たりづらかった子どもにチャンスを与えていると、農協とヤンマーの双方が支持されるようになりました。タイの耕運機シェアはクボタがトップですが、その農協ではヤンマーを手厚く扱うようになってくれたり、サッカーというコンテンツを活用することで売上を上げていく仕組みができたんです。

田岡 面白いですね。次々と新しい事例が生まれているのですね。

山下 はい、正直これほどサッカーがビジネスに使えるとは思っていませんでした。こうした取り組みは、企業だけでなく、地域へのメリットもあります。



 クラブ名には必ず地域名が入っているので、そのクラブが現地で報道されれば有名になります。ヴァンフォーレ甲府にインドネシアのスター選手が加入すれば、甲府に試合を観に来るだけでなく周辺の観光地を周ることにもつながったり、甲府の名産品を買ってみたりということにもつながるのです。 

 Jリーグ発足当初の10クラブ8都道府県だったときは、ナショナルクライアントがパートナー企業でしたが、現在54クラブ38都道府県にまで広がってきており、各地域の企業に支援していただく形が基本的なモデルです。そうなると、クラブの経済規模は地域経済に依存してしまうため、小さな都市のクラブは拡大しにくくなります。

 その課題がアジア進出に取り組むことで、解決できるはずです。例えば、J2の水戸ホーリーホックがベトナムのスター選手を獲得したことで、ベトナムで有名になりました。するとベトナムに進出したい企業や、現地企業がパートナーになりました。そのベトナムのスター選手を応援するためにチャーター機で茨城空港への直行便が飛んできた事例もでき、地域の活性化につながりました。つまり、日本のどこにいても成長できる可能性が広がるのです。
 
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