探訪!大学マーケティングゼミの現在地 #04
「消費者からマーケターへ」掲げ、時代の先を行く研究で躍進する明治大・加藤拓巳ゼミに潜入
生成AIなどテクノロジーの発達を背景にマーケターの重要性と役割が変容する中、優秀な人材の供給源として企業が熱視線を注ぐ大学のマーケティングゼミでは、何が行われているのか。キャンパスを舞台に活発なマーケティング研究を展開するゼミナールを探訪するアジェンダノートの本連載。第4回となる今回は、明治大商学部の加藤拓巳准教授のゼミからお届けする。
自身がマーケターとしてさまざまな企業との共同研究や商品開発などで活躍する加藤准教授。そのゼミは徹底した「消費者目線」に基づき、科学的かつ斬新な研究によって日本マーケティング学会で評価されるなど、学部生の域を超えた実績を残している。なぜそんなことが可能なのか。加藤准教授の着任とともに2022年に開設され、早くも「就活に強いゼミ」などと異名をとる謎多き加藤ゼミに潜入した。
自身がマーケターとしてさまざまな企業との共同研究や商品開発などで活躍する加藤准教授。そのゼミは徹底した「消費者目線」に基づき、科学的かつ斬新な研究によって日本マーケティング学会で評価されるなど、学部生の域を超えた実績を残している。なぜそんなことが可能なのか。加藤准教授の着任とともに2022年に開設され、早くも「就活に強いゼミ」などと異名をとる謎多き加藤ゼミに潜入した。
企業が直面する課題の「先」を照らす研究
加藤ゼミでは「消費者からマーケターへ」をコンセプトに、企業が現在、あるいはこれから直面する課題を対象に、消費者価値を高める研究を行っている。主要なテーマは2つあり、ひとつ目は「エシカル商品の消費者価値への転換」。環境問題や人権問題に配慮したエシカル商品は社会的意義が大きいものの、消費者にとっての価値になりきれていない場合が多い。エシカル商品の消費者価値をどのように設計すべきか、ということだ。
2025年の日本マーケティング学会のオーラルセッションで発表された学生たちによるグループ研究は、「時間」という要素を取り入れることで、エシカル商品の価値強化に向けて重要な示唆を与えた。たとえば、「夜向けのエシカル食品(カレー、チョコレート)」よりも「朝向けのエシカル食品」の方が、商品に魅力を感じる消費者が多いことを実証したのだ。これは朝のほうが道徳的な思考・行動を行いやすい「朝の倫理効果」によるものと考えられるという。
さらに、環境に配慮したラベルレス飲料については、冬のホットドリンクよりも夏のコールドドリンクのほうが高く訴求するなど、季節によって価値が変わることが判明した。消費者はラベルを「服」のように認識するため、ラベルのないすっきりした外観のコールドドリンクが、暑い夏には魅力的に映るようだ。
※(図1)~(図4)出典:田中美桜里・岩井隆宏・チョブギョン・武藤結衣・加藤拓巳 (2025)「エシカル消費における時間と季節による商品価値の変動 ― 食品業界を対象としたコンセプトとデザインの視点からの検証 ―」日本マーケティング学会カンファレンス・プロシーディングス(https://www.j-mac.or.jp/oral/dtl.php?os_id=560)
生成AIの価値を高める設計とは
加藤ゼミの2つ目の研究テーマは「先端技術の価値を高める設計」。具体的には、世界的に性能競争が激化している「AIエージェント」の魅力度の向上だ。ゼミ生のグループは、生成AIによるフェイクニュース拡散の懸念がある中、AIの学習データを増やすのではなく、むしろ専門家の知見に絞って大幅に減らした「専門家AI」が、現在のAIよりもニーズが高くなることを突き止めた。
※出典:清水碧音・秋本光紀・河西淳志・林咲希・重野ゆら・加藤拓巳(2025)「AIエージェントにおける専門家コンセプトがサービス魅力度に与える影響」日本マーケティング学会カンファレンス・プロシーディングス(https://www.j-mac.or.jp/oral/dtl.php?os_id=567)
さらに、生成AIのUXを高める情報提示の仕方(提示する選択肢の数や理由説明の方法など)の特定にも取り組んだ。その結果、「提示する回答数は5個が最も魅力を感じやすい」や、「回答理由にポジティブな理由だけでなくネガティブな理由も一緒に提示するほうがユーザーにとって価値がある」といった知見を得た。
生成AIはマネタイズの難しさから、今後は有料化や、AIを活用したサービスの開発にフェーズが移っていくと見込まれる。UXの改善も喫緊の課題だ。そんな中、学生たちが示した「専門家AI」というコンセプトやUXの知見は、激化する生成AI開発競争に一石を投じる新たな視点として評価され、いずれも日本マーケティング学会2025でベストオーラルペーパー賞を受賞した。
※(図6)~(図9)出典:丸山実花・加藤拓巳(2025)「AIエージェントにおける効果的な情報提供方法の検討 ― アイコン・選択肢の数・負の側面の観点からの実証 ―」マーケティングレビュー(https://doi.org/10.7222/marketingreview.2026.001)




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