自由の毒味 #05
なぜ、あえて社内ベンチャーを選ぶのか?その3つのメリットを紹介【サインコサイン 加来 幸樹】
メリット① 心から熱中できることに打ち込める
佐藤航陽氏の著書「お金2.0」の中にも、「自分が心から熱中できることに打ち込んでいると、結果として利益を得られる。逆に利益を最優先に行動すると利益を得るのは難しいということが起きます」という一節があります。個人的にも直感的にも経験的にもこの考え方に強く共感しています。サインコサインはセプテーニ・ホールディングスから100%出資を受けている会社ではありますが、これまでのキャリアも通じて私のことを誰よりも理解してくれている株主ということもあり、基本的には私が「熱中して打ち込むべき」と考えることを優先しながら、一定の投資を行うこともできています。
人にも寄るとは思いますが、自己資本で会社を興す場合にはどうしても短期間で考え目の前の利益を優先するケースがでてきたり、多額の資金調達に成功した場合でも出資者との折り合いをつけるのが簡単にはいかない場合も少なくはないのではと思います。そう考えると社内ベンチャーは高い確率で自分が心から熱中できることに打ち込める環境を手に入れるための手段になるはずです。
メリット② 親会社・グループ会社の資産で実験できる
基本的には親会社やグループ全体のほうが自社よりも圧倒的に多くの従業員やオフィス環境を保有しているはずなので、これらに(比較的自由に)アクセスできるのも社内ベンチャーのメリットのひとつです。サインコサインの場合は、現在、ブランド・アイデンティティの構築やインナーブランディング支援を主要なビジネスとしているので、今後のソリューションとなり得るようなアクションをグループ全体に対して日々実践(実験)しています。例えば、研修ワークショップ、外部講師を招いた理念浸透のための勉強会、チームビルディングのためのスナックイベント、など実例は多岐に渡りますが、これらの実施を通じて我々は有益なフィードバックを得ることができ、より質の高い対外的なビジネスソリューションとして磨き上げていけます。
また、グループ内でもこういったアウトプットを行い続けることは、他グループ会社との実ビジネスを生み出すきっかけにもなるので、自社の営業機会という意味でも、グループ全体でシナジーを発揮するという意味でも、実はベンチャー規模の会社に限らず意識的に実行し続ける価値があるはずです。完璧に自信の持てるサービスやプロダクトを世に出したとしても成功する確率が高いとは言えない時代の中、いい意味で「恥をかける」フィールドを自社の範囲を超えながら持つことは、ベンチャーが生存確率を高めるための立派な戦略の1つとも言えるのではないでしょうか。
メリット③ より大きな仕事に近道できる
先日リリースされましたが、親会社であるセプテーニ・ホールディングスのコーポレート・ロゴリニューアルをサインコサインにて担当しました。自分自身ずっと在籍している会社を対象にした仕事ではありますが、まだまだ無名の会社が設立当初から1000人~2000人規模の会社のブランド・アイデンティティ構築案件を担当できる機会は中々ありません。このように、環境を活用しより大きな仕事に近道でたどり着ける可能性があるのが3つ目に紹介したいメリットです。今回のプロジェクトは、私の社内ベンチャー開始のタイミングと、当社が目指す事業領域、またセプテーニ・ホールディングス代表とのこれまでのキャリアにおける関係性、といった、いくつかの要因にも恵まれて実現に至りました。
最終的なアウトプットも満足いくものになりましたが、そのプロセスにおいてもサインコサインで志すスタイルを検証することができ、今後のビジネスに向けても自信を深めることができました。「社内ベンチャー」を検討する方であれば自社やグループに対しても一定の信用を得ている方が多いのではないかと思いますので、ぜひ今の身の丈以上の大きな仕事でも、それを任せてもらえる機会を親会社やグループ会社に対して求めてみてはいかがでしょうか?それが必ずや対外的なより大きなチャレンジの原動力にもなるはずです。
社内起業も社外起業もトレードオフの価値がある
ここまで社内ベンチャーのメリットとして「心から熱中できることに打ち込める」「親会社・グループ会社の資産で実験できる」「より大きな仕事に近道できる」ということを紹介してきました。もちろん社外起業でもこれらを実現できないわけではないですし、成功すればより大きなリターンや栄誉などを手に入れることができるかもしれません。この記事でお伝えしたいのは、どちらが絶対に正しい・正しくないということではなく、要はリスクとリターンのバランスについてです。
私のように必ずしも社長や経営者になることが目的ではないが、今よりももっと自由な環境を手に入れやりたいことを実現したい、という方にとっては「社内ベンチャー」という選択肢は悪くはないかと思います。
大切なのは今よりも上のレイヤーに視点を持つこと
たしかに正直なところ周囲の経営者からは、「社内ベンチャー」という選択肢について、賛否両論の意見をいただくこともあります。しかし、本当に重要なのは「どのような環境に身を置いているか?(WHERE)」ではなく「なんのためにやっているのか?(WHY)」のはずです。
そして、その「WHY」の視点は少しでも高いほうがきっとより面白い事業になり、その結果からより大きなリターンが得られるはずです。自社のためよりも、セプテーニグループ全体のため。セプテーニグループ全体のためよりも業界全体のため。業界全体のためよりも日本のため。日本のためよりも世界のため。
まだ私の「毒味」は始まったばかりなので、あまり偉そうなことは言えませんが、少なくとも見たことのない景色を見るために始めたことだけは確かなので、近い将来に目に見える結果をもって「社内ベンチャー」という選択の可能性を証明していきます。
それではまた次回、違った視点からの「毒味」をお待ちくださいませ。
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