ダイレクトアジェンダ特別企画

「直近3年でマーケターが取り組むべきミッションは?」アスクル・オイシックス・バルクオム・ビームスのECリーダーが語ったこと

デジタルとリアルの「マージ(融合)」は企業の喫緊の課題

西井 さて、今回のキーノートセッション、最後のテーマです。向こう3年間という近い未来を見据えて、まだ僕らが取り組めていないことは何か、どんな動きをしていかなければいけないのか。それぞれの立場で考えていることを聞かせてください。

野口 「ダイレクトマーケティングのトレンド」らしくない話で恐縮ですが、D2Cブランドとして実現したいと思っているのは、ユニクロが浸透させたSPA(製造小売業)モデルです。バルクオムの“急所”のひとつだと思うのですが、製品のアジャイルな開発やA/Bテストができないのは、Webサービスとの大きな違いだと思っています。SPAの実現によって、それを克服したいと思っているんです。

西井 野口さんと以前お話ししたときに、それを聞いて感銘を受けました。OEM生産はロット数が多いし時間もかかる。それだと、スピーディに変わりゆくお客さまのニーズに追いつけないんですよね。自社で製造できるようになれば、少ないロットでスピーディに商品をつくり、スモールテストをどんどん重ねることができます。

野口 そうですね。新製品の開発はもちろん、既存商品のアップグレードも手をつけやすくしたいなとずっと思っているんです。ようやく工場を持つことが視野に入る企業規模になってきたので、検討を始めたところです。

輿水 野口さんがおっしゃる垂直統合は、私もよく考えています。最近は、いろいろなことの境界が曖昧になってきていると感じています。メーカーと小売りの境界もそうだし、OMO(Online Merge Offline)という概念も出てきて、オンラインとオフラインの境目も不明確になってきました。こうした中で感じているのは、自分たちの領域を超えていくということ。例えば最近だと、「宅配クライシス」で大打撃を受けたことをきっかけに、自社配送を強化しているんです。都市部に限定はされますが、自社商品の配送だけでなく、他社さんの荷物も承るようになりました。

西井 LOHACOの自社商品は、「暮らしになじむデザイン」として、たびたび話題にのぼりますよね。

輿水 LOHACOのオリジナルデザイン商品は100種を超え、売上に占める割合も高くなりました。既存流通では扱いづらい、ECならではのパッケージを、今後も各メーカーと協力しながら実現していきたいと考えています。

矢嶋 EC/リアル店舗という二項対立だった時代から、O2Oを経て、いまはOMOの時代になっています。「マージ(融合)」することの重要性を、強く感じているところです。データやチャネルは「統合」でいいのですが、「人」によってお客さまに価値を届けるときには、「融合」という考え方がよりフィットすると思います。

 ビームスでは、今後3年間で、マージを完了させたいと思っています。リアル店舗で働くスタッフにとって、デジタルやECが当たり前になる、そんな3年後をつくりたい。その実現に向け、組織改編や人事評価指標の改訂にも着手しています。

西井 店頭スタッフが、デジタルマーケティングに関する責任も持ち、評価されるイメージですね。僕はよく中国に行くのですが、現地では「デジタルとリアルをどうつなぐか」という動きが非常に活発です。キャッシュレスの流れもそうだし、アプリからしか注文できないコーヒーショップ「luckin coffee(瑞幸咖啡)」をはじめ、デジタルとリアルの融合が当たり前のように実行されています。日本も、そういう発想が現場から次々と出てくるようにならないといけませんね。

矢嶋 僕も先日ちょうど上海に行く機会があり、それを痛感しました。いまの時代は、デジタルとリアルの融合はもちろん、どんな潮流もお客さまが起点になっていて、お客さまがどんどん先に行ってしまう。私たちは、そこに遅れることなく対応していかなければならないと、気持ちを新たにしています。
 
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