マーケティングアジェンダ2019 レポート #01

元P&G グローバルCMO ジム・ステンゲルが語る「ブランドリーダーの役割を果たすための4ステップ」

 国内外のブランド企業からトップマーケターが参加する合宿形式のカンファレンス「マーケティングアジェンダ2019」が、去る5月にロイヤルホテル沖縄残波岬で開催された。1日目のキーノートセッションには、ジム・ステンゲル氏が登壇。P&Gのグローバルマーケティングオフィサーとして全世界のマーケティングを指揮し、同社の売上を2倍に成長させ、“世界最強のマーケター”として知られている。
本セッションでは、マーケターが「Purpose(大義)」にどう向き合い、ブランドとしての成果につなげていくべきか、P&G時代にジム率いる米国のセントラルチームで働いた経験を持つ、元資生堂ジャパンCMOの音部大輔氏のナビゲートのもと、ひも解いていった。その一部をレポートする。
 

結婚式とマーケティング、ここから得られる教訓


ジム・ステンゲル
The Jim Stengel Company代表(元P&G グローバルマーケティングオフィサー)
2008年、P&Gのグローバルマーケティングオフィサーの役を退任。Jim Stengel Company LLCのPresident/CEOに就任。Northwestern Universityのケロッグでの助教授、ワシントンスピーカービューロのスピーカー、複数社でのアドバイザーを務める。著書『本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えたトップ企業50』『会社は何度でも甦る ビジネス・エコシステムを循環させた大企業たち』。

ステンゲル 私は今日、この会場にいらっしゃるブランドパートナー、そしてブランドビルダーの皆さんに、とある「チャレンジ」を持ってきました。その内容はのちほどご紹介することにして、まずは個人的なストーリーから始めましょう。と言っても、皆さんがより良いブランドビルダーになっていくことに、密接にかかわる話です。

私の息子はこの夏、結婚することになりました。数日前にはフィアンセと私を含めた3人で誕生祝いをしました。実は3人の誕生日は、1日違いで連続しているんです。

結婚にあたっては、さまざまな決定を下さなければなりません。その中で最も大切な決定のひとつが、どのウェディングケーキにするかということ(笑)。私も試食会に招かれ、色々な種類を試した上で、最終的にケーキを決めました。もし皆さんが息子の結婚式にお越しくださったら、チョコレートケーキを召し上がることになります。

私は親として、この結婚式のプランニングに携わるなかで、これがマーケティングに似ていることに気づきました。結婚式とマーケティング――ここから得られる教訓はなんでしょうか。

音部 どちらも「体験」をつくるという点で共通していますね。

ステンゲル そのとおり。結婚式もマーケティングも、「体験」をつくるものなのです。私たちは製品・サービスではなく、「体験」を売っている。それが、今の時代のマーケティングのあり方です。私がマーケターのキャリアをスタートした当時とは、まったく異なる世界と言えます。



結婚式とマーケティングの共通点をブレークダウンしてみると、3つほど挙げられると思います。

ひとつは「感情的なもの」であること。

結婚式は、さまざまな人のさまざまな感情が動く一日になるでしょう。マーケティングを上手くやれば、招待客の皆さんの心に訴えかけることができます。そのために、私たち家族は一丸となって準備を進めていく必要があります。

二つ目は「緻密な計画のもとで行われる」こと。

マーケティングはすべて計画ありきで進められるもので、偶発的に何かが起こるものではありません。ブランドとパートナーのコラボレーションが不可欠です。そしてこれには、大きな投資を伴う場合があります。どんな文化圏でも、結婚式には莫大なお金がかかるものです。マーケティングの世界でも、優れたキャンペーンにはそれなりの投資が必要であることが多いでしょう。

三つ目は「評価」です。

良い結婚かどうかを評価する指標とはどんなものでしょうか。素晴らしい結婚式をすること、結婚生活の正しい一歩を踏み出すことも重要ですが、当然ながら結婚式当日がすべてではありませんよね。長きにわたって上手くいくかどうかが重要です。私自身は36年間、結婚生活を送っています。実は、今回来日するための出国日が結婚記念日でした(笑)。

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