マーケティングアジェンダ2019 レポート #01

元P&G グローバルCMO ジム・ステンゲルが語る「ブランドリーダーの役割を果たすための4ステップ」

日常業務の中でブランドパーパスをどう具現化するか


●ステップ2:日常業務の中でブランドパーパスを具現化する

ステンゲル マーケターの日常業務は、ブランドパーパスに息を吹き込む活動でなければなりません。そもそもブランドパーパスとは何なのか、まずは改めて定義を確認しましょう。

ブランドパーパスとは、ブランドが世界にもたらすベネフィット、つまり、ビジネスをしている理由そのものです。顧客や社員を強く引きつけるアイデアであり、ブランドのファウンダーが思い描いていた存在意義です。

ブランドパーパスは、コーズ・マーケティング(編集部注:社会貢献に結びつく販促活動)ではありません。ブランドパーパスは、マーケティングメッセージではなく、組織全体の行動指針となるものです。

例えば、レッドブルのブランドパーパスは非常にシンプルです。「人々の気持ちと、身体を高揚させる」。消費者は、レッドブルに触れるたびにそれを体感することができます。

●ステップ3:独自の共感力を身に付ける

素晴らしいマーケターは誰しも、共感・共鳴する力が強いものです。お客さまが抱える問題や感情を深く理解していますか。それをあなた自身だけでなくチームメンバーも理解していて、さらに合意形成できていますか。十分にお客さまと時間を過ごし、理解する努力を重ねていますか。

お客さまとのブランドとの間に共感を生むことに長けているブランドの一例が「パンパース」です。さて、このブランドを担う組織は、赤ちゃん・子どものことを深く知り、彼らにとって重要なことが何かを十分に理解していたのでしょうか。少なくとも私が同ブランドのリーダーを引き継いだときは、決してそうとは言えない組織でした。

私が担当者になった当時、「パンパース」は苦戦を強いられていました。P&Gにおける最も大きなブランドのひとつでありながら、マーケットシェアを大幅に落とし、“最も成功から遠い”ブランドと化していたのです。

その原因は、お客さまへの共感力が欠けていることにありました。上司が「私たちのボスは子どもとその両親ではなく、工場である」と言い切っていたのを覚えています。いかに親子の生活を良いものにしていくかということには、全く目が向けられていませんでした。



そこで、お客さまである親子と多くの時間をともにし、何が重要かを理解するところから始めました。たったそれだけのことですが、それですべてが変わったのです。数年後には、「パンパース」の売上規模は3倍にまで伸びました。すべては、共感力を鍛えることによって為し得たことです。お客さまから「私たちが大事にしていることを、最も気にかけてくれているブランドである」と認識してもらえたことで競争優位性を得たのです。「パンパース」は、子どもの成長に寄り添うというP&Gの企業文化を醸成し、社内の他ブランドの模範にもなりました。

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