マーケティングアジェンダ2019 レポート #02
ジム・ステンゲル×音部大輔 最強マーケター対談 「優れたマーケターが持つ3つの要素」
2019/07/16
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国内外のブランド企業からトップマーケターが参加する合宿形式のカンファレンス「マーケティングアジェンダ2019」が、去る5月にロイヤルホテル沖縄残波岬で開催された。1日目のキーノートセッションには、P&G時代にグローバルマーケティングオフィサーとして全世界のマーケティングを指揮し、同社の売上を2倍に成長させたことで知られるジム・ステンゲル氏が登壇。
レポート記事の前編に続き、後編ではジム率いるP&G米国のセントラルチームで働いた経験を持つ、元資生堂ジャパンCMOの音部大輔氏との対談をお届けする。
レポート記事の前編に続き、後編ではジム率いるP&G米国のセントラルチームで働いた経験を持つ、元資生堂ジャパンCMOの音部大輔氏との対談をお届けする。
「4つのステップ」を実行するための処方箋
音部 ジムさん、ありがとうございます。実にインスピレーションに溢れる内容でした。聴衆を代表して、いくつか質問させてください。ブランドリーダーが担うべき4つのステップに関する質問です。
リーダーがブランドパーパスに息を吹き込む役割を担う4つのステップ
- ステップ1:マーケティングをもっと重視する
- ステップ2:日常業務の中でブランドパーパスを具現化する
- ステップ3:独自の共感力を身に付ける
- ステップ4:勇気のあるリーダーになる
まずはステップ1について。社内のマーケティング部門・マーケティング機能をもっと重視し、強化するために、マーケター一人ひとりができることはあるでしょうか。そもそも、強力で活力のあるマーケターとはどんな人なのでしょうか。
ステンゲル 優れたマーケターには、3つの要素があると思います。
第一に、良いビジネスリーダーであること。ビジネスや競合状況を理解していて、正しい戦略を立案でき、財務状況も把握している必要があります。P&Gの若手マーケターだった時代、「知識を持つ人が力を持つのだ」と言われたのを覚えていますが、それは今も変わらぬ真実だと思います。
2つ目は、強力なブランドビルダーであること。パーパスに信念を持ち、クリエイティブなプロセスを評価し、パートナーシップを大切にし、組織・メンバーに対してクリエイティブなアイデアを常に投げかける――こうした姿勢があることです。
3つ目は、多くの人を魅了していること。その人たちの成長に寄与し、強力な後継者を育成することができていることです。マーケティングリーダーは、これらすべてに長けていなければなりません。
ジム・ステンゲル 氏
The Jim Stengel Company代表(元P&G グローバルマーケティングオフィサー)2008年、P&Gのグローバルマーケティングオフィサーの役を退任。Jim Stengel Company LLCのPresident/CEOに就任。Northwestern Universityのケロッグでの助教授、ワシントンスピーカービューロのスピーカー、複数社でのアドバイザーを務める。著書『本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えたトップ企業50』『会社は何度でも甦る ビジネス・エコシステムを循環させた大企業たち』。
The Jim Stengel Company代表(元P&G グローバルマーケティングオフィサー)2008年、P&Gのグローバルマーケティングオフィサーの役を退任。Jim Stengel Company LLCのPresident/CEOに就任。Northwestern Universityのケロッグでの助教授、ワシントンスピーカービューロのスピーカー、複数社でのアドバイザーを務める。著書『本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えたトップ企業50』『会社は何度でも甦る ビジネス・エコシステムを循環させた大企業たち』。
音部 確かに、ブランドパーパスの実現のためには、その3つの要素が不可欠ですね。ちょっと会場の皆さんに聞いてみましょうか。「自分の企業は、ブランドパーパスを持っている」という方、手を挙げてください。
(会場を見渡して)もう少し挙がってほしかったですね(笑)。
では、「消費者にベネフィットを提供している」と言える人は?ベネフィットがなければ、消費者に選んでもらうことはできませんよね。
ブランドパーパスについてもう少し理解するために聞きたいのですが、ベネフィットとブランドパーパスはどのようにすみわけるのが良いのでしょうか。
音部 大輔 氏
P&Gジャパン、マーケティング本部に17年間在籍し、アリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドで市場創造やシェアの回復を実現。のちにUS本社チームでイノベーションなどの知識開発を主導。帰国後、国内外の多様な製品分野で、複数ブランドを成長させるブランドマネジメント組織構築を指揮。2018年より現職。博士(経営学 神戸大学)。著書『なぜ「戦略」で差がつくのか。』『マーケティングプロフェッショナルの視点』
P&Gジャパン、マーケティング本部に17年間在籍し、アリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドで市場創造やシェアの回復を実現。のちにUS本社チームでイノベーションなどの知識開発を主導。帰国後、国内外の多様な製品分野で、複数ブランドを成長させるブランドマネジメント組織構築を指揮。2018年より現職。博士(経営学 神戸大学)。著書『なぜ「戦略」で差がつくのか。』『マーケティングプロフェッショナルの視点』
ステンゲル 「パンパース」を例にとって説明しましょう。「パンパース」のブランドパーパスは、赤ちゃんの健康・成長のための擁護者となることです。赤ちゃんの社会的・肉体的・知的な成長に貢献することが、大命題です。
一方、「パンパース」のベネフィットは、優れた商品・サービスを提供し、赤ちゃんの成長に貢献することです。つまり、ベネフィットはブランドパーパスを実現するためのものと言えます。
音部 ブランドパーパスは、ブランドの存在意義。ベネフィットは、消費者が商品やサービスを通じて得られる、ブランドパーパスを実体験できる価値。――こういう理解で正しいでしょうか。
ステンゲル その通りです。