マーケティングアジェンダ2019 レポート #02

ジム・ステンゲル×音部大輔 最強マーケター対談 「優れたマーケターが持つ3つの要素」

失敗を迎え入れ、容認することこそが勇気である


音部 では、ステップ3に関する質問です。「共感力を高めて、お客さまを理解する」というのは、マーケターなら誰もが望むことだと思います。具体的に、何をすればいいのでしょうか。マーケターが新たなアサインメントを与えられた時、最初の一歩としてすべきことは何でしょうか。

ステンゲル まず、ブランドの関係者と話をすることです。かつて私は、担当ブランドが変わったとき、上司に「このブランドにおいて最も重要な人物は誰ですか」と尋ねたところ、10人ほどの名前が挙がりました。R&Dの担当者、消費者調査の担当者、メディア企業側の担当者……。

そして、彼らに「このブランドを成功させるために、何をしたらいいでしょうか」と尋ねて回ったのです。10人から回答を得ると、ある一定のテーマが浮き彫りになり、まるで目の前の景色がひらけるように、やるべきことの優先順位が明確になってくるのです。

もう一つは、とにかくお客さまとともに時間を過ごすということです。1週間、1カ月、お客さまの近くに身を置いて、お客さまが何をメリットと感じ、何に不満を感じるのかを目の当たりにすれば、有用なインサイトやアイデアがいくつも得られると思いますよ。



音部 コンシューマーの日常の中に身を置くということですね。

さて、ステップ4に関する質問です。勇気とは何でしょうか。ジムの著書の中に、こんな印象的な言葉がありました。「勇気とは、手に銃を持つことを意味するものではない。失敗を迎え入れ、容認することこそが勇気である」――これに共感しました。

しかし、失敗体験が次の成功にどうつながっていくのかが見えないと、どうしても直感的に失敗を恐れ、なかなか実践できないのが人間の性だと思うのです。勇気を携えるために、失敗の恐怖に打ち勝つ強い気持ちを持つために、何をすればいいでしょうか。

ステンゲル お客さまのインサイトに基づくクレイジーなアイデアに、ちょっとした予算・時間を振り向けることが必要だと思います。実験を続けることです。

そして何より、企業風土を醸成することです。たくさんのアイデアを持ち込み、ブランドパーパスに基づいて実施の是非を決定し、それに沿う取り組みであれば失敗したとしても受け入れる風土です。

いま私は、ある大手飲料メーカーの社内イノベーションを創発するために、アイデアを精査するプロセスを構築しているところです。CEOもメンバーとして参加する委員会を毎週開催し、どのアイデアを実行するか決定するのです。決定したアイデアはプロトタイプをつくってみて、10人くらいに試用してもらい、好評価なら次のステップに進みます。

ブランドパーパスを具現化するためには、実用的・現実的なステップにブレークダウンすることが必要です。イノベーションを促すようなプロセスの立ち上げにも、ブランドリーダーのリーダーシップが不可欠です。

音部 今回のキーノートのテーマは、ブランドパーパス。普段のマーケティング業務にいかにしてブランドパーパスを息づかせ、具現化していくかという話でした。最後に、ジムの会社のブランドパーパスは何ですか。

ステンゲル 「多くの世界のリーダーがブランドパーパスに基づいて行動できるよう、前向きな触媒となること」です。ブランドパーパスに基づいて行動できる企業が増えれば、事業を成功させることができる企業も増えると信じ、今後も活動していきたいと思います。

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