マーケティングアジェンダ2019 レポート #04

楽天 三木谷社長の右腕マーケターは、いかにして生まれたのか?

次に進むために必要なのは、自己否定をし続けること


山口  これまでのお話の中で、キーワードがいろいろと出てきました。社内のコネクティッド・ドット(つなぎ役、翻訳者)になる。自ら手を挙げる。ポジティブシンキング。自分の専門性をつくる。右脳と左脳……。

河野さんも「勇気を持つリーダーになること」「失敗を恐れないこと」をコアに仕事をしているとおっしゃっていましたね。



河野  自分の過去のインタビュー記事を振り返ってみると、毎回その話をしているんです。楽天には「ゆらぎながら進化する」という言葉があります。どんなプロジェクトも、直線だけで進んでいくことはない。“遊び”を利用して調整しながら進めていく勇気が必要です。

ゆらぎながら、時間をかけて進化させて完成したものは、自分で否定しづらいものです。しかし、自分でつくったものを自ら否定する勇気を持たない限り、そこで自分のキャリアは止まると危機感を持っています。

私には「楽天のガラケー事業をつくったのは自分だ」という自負があります。ですが、スマートフォンが入ってきたとき、愛情を込めてつくったガラケーをできるだけ早く潰す方法を自ら考えて、実行しました。自分ならガラケーを進化させられる、進化させたいと思ったのです。

楽天のモバイルを率いる者として、ガラケーで終わらず、スマートフォンの時代もつくることができたのは、勇気をもって自己否定をしたからだと思っています。次に進むためには、自己否定し続けることが必要なのです。

マーケターの強みは、ユーザーと直接接触できること。勇気をもって自己否定し、プロジェクトを前に進める上では、その強みをぜひ活かしてほしいと思います。

山口  すべての判断はボイス・オブ・カスタマーをベースに行うとおっしゃっていました。

河野  上層部・会社を説得するのに、「私はこう思います」という個人的な意見は通用しません。ユーザーの声に触れられるのは、マーケターの最大の強み。

ユーザーの声は、リサーチデータ、生の声、WebやSNSで得られるレビューなど、さまざまなものがあります。私は、大事なデシジョンメイキングの際は、現場のメンバーがまとめたレポートではなく、生ログを見るようにしています。

山口  お客さまを知り、理解した上で、事業戦略と紐づいたマーケティング戦略・施策を実行するということですね。本質的ですが、実に難しいことでもあります。事業戦略に紐づいていないマーケティング施策は少なくありません。

河野  今は、かつて以上に施策の結果、ROIが問われる時代です。しかも、短期的なROIだけで語られてしまうことも多い。ともすると本質を見失ったり、大きな事業戦略に歩調を合わせるのが難しくなることが少なくありません。

しかし、そのバランスをとるのがマーケターの使命。マーケターは、目の前の数字達成と事業の目標達成とのバランスをうまくとれる、優れたバランサーであってほしいと思います。

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