ウーマンズインサイトアジェンダ特別企画 #01

女性のインサイトを捉えるための効果的な方法とは【オイシックス・クレディセゾン・コーセー・ニッセン・吉野家 座談会】

 女性向けの商品・サービスのマーケティングをテーマに掲げたカンファレンス「ウーマンズインサイトアジェンダ2019」が10月28~29日に京都で開催される。開催を前にカンファレンスのカウンシルメンバーの中から5人がインサイトの重要性やカンファレンスへの期待について意見を交わした。

 
左から吉野家 CMO 田中安人氏、ニッセン セールス本部ネット企画部サイト企画チーム マネージャー 小林加寿美氏、オイシックス・ラ・大地 執行役員/サービス進化室室長 菅美沙季氏、クレディセゾン データビジネス部 栗田宏美氏、コーセー 宣伝部 宣伝企画 PR課課長 小林祐樹氏。
 

インサイトを捉えるための各社の試みを公開


——まずは「ウーマンズインサイトアジェンダ」のメインテーマである「インサイト」について考えていきたいと思います。皆さんは、その重要性について、どのように考えていますか?

田中 非常に重要だと考えています。例えば、今年5月から売り出した「ライザップ牛サラダ」は、インサイトを起点に開発して売り切れが続出したヒット商品なんです。「牛丼を食べたいけど、ボディメイクも気になる」というインサイトから入り、そこにRIZAPの持つエビデンスが加わって生まれました。

実は、当社でも約10年前から“食べたら食べるほど痩せる牛丼”の開発を目指して大学の研究室と実験しており、その成果が出てきたタイミングでもあったんです。インサイトだけでもエビデンスだけでもダメ、そのバランスが大事ですよね。あとは、「今夜はお酒を飲むから、これにしておこうか」みたいな“言い訳需要”も狙っています。
田中安人氏
吉野家 CMO
コミュニケーションコンサルタントとして組織のコミュニケーションをPDCAで回しながら業績に貢献する手法を実践。マーケティング領域で多数の業種、業界をコンサルティングしながら、吉野家ではCMOとしてマーケティング総括を担当。グリッド 代表取締役社長/公益社団法人日本スポーツ協会ブランド戦略室委員会委員として、日本のスポーツの未来設計を担当。

 
Oisixの食品宅配サービス自体が日々の献立に悩んだり、忙しくて買い物に行く時間がなかったり、時短で料理したいという主婦のインサイトから生まれています。

ただ、お客さま側から「こういうものが欲しい」という意見は聞いても出てこないため、当社では仮説を立てながら、その中で出てきたアイデアをお客さまにインタビューして検証した結果、商品化しています。

最近では「ちゃんとOisix」という3~5日分の食材とレシピが届くサービスを試験的に始めました。これもインサイトを掴んだ結果から生まれた商品。1食分ずつの食材がカットされた状態で届く人気サービス「Kit Oisix」に“割高感”や“食材カットは不要”と思っていた方々に支持をいただいて好評です。
菅美沙季氏
オイシックス・ラ・大地 執行役員、サービス進化室室長
化粧品通販会社を経て、2009年6月にオイシックス(当時)へ入社。2013年7月、必要量の食材とレシピがセットになったミールキット「Kit Oisix」を立ち上げる。2016年10月、同社初の女性執行役員となる。

小林(祐) 
マーケターがものを売るとき、インサイトは絶対に必要ですよね。なぜなら、戦略の振り返りができるから。クラフトマンシップで良い商品をつくって売れるケースもありますが、それでは再現性が難しいですよね。

アドマンの存在価値は、インサイトを考えてその仮説をどう組み立てるかにあるのではないでしょうか。そして、お客さまが喜ぶことを考えて、その戦略が当たったときにまた振り返ることができる。この一連の流れがマーケティングだと思います。
小林祐樹氏
コーセー 宣伝部 宣伝企画・PR課 課長 
広告会社営業にて通信、飲料、教育、出版など様々な広告主を担当。コーセー入社以来コミュニケーション分野に従事。雪肌精、ファシオなどのプロモーション企画、電波・デジタルメディア買付、CLUBKOSE(会員組織)運営、フィギュア・ゴルフなどのスポーツマーケティングを担当。

栗田 そうですよね。クレディセゾンはカードビジネスであるため、インサイトはお客さまとの接点であるWebサービスのUIやUXに反映されます。最近の取り組みとしては、カード会員向けのプログラム「セゾンクラッセ」を導入して、サービスの利用実績によって受けられる特典が変動する仕組みをつくりました。

また、セゾンカード会員には女性も多いので、常に“女性目線”は忘れてはいけないと考えています。そこで、アプリのUI/UXも実際に女性社員に使い勝手をヒアリングしたり、アイディアを募って反映したりしながら、改善を行なっています。

先述の「セゾンクラッセ」は、若手の女性社員がプロジェクトを引っ張ったんですが、デジタルネイティブの着眼点やコミュニケーションが得意な女性ならではの感性を活かしており、すごいなぁと思いました。ユーザーと同じ視点になれるのは、強みですよね。だから、ユーザーに憑依できないプロジェクトほど、苦労します。
栗田宏美氏
クレディセゾン データビジネス部 
地域密着型メディアの広告企画営業、Web広告代理店コンサルタントを経て、2014年クレディセゾン入社。オウンドメディアの立ち上げ、チームリーダー兼編集長として、メディア運営によるブランディングと働き方改革の2軸を推進。厚生労働省障がい者雇用テレワーク事業に参画するなどし、2018年4月から現職。カード購買データの利活用及び部署横断型の新規事業プロジェクトを担当。さらに2019年10月からコーポレートベンチャーキャピタル「SaisonVentures」を兼務、イスラエルのスタートアップ投資を担当。12月からイスラエルを拠点に、多角的なイノベーション推進を行う予定。

小林(加) 
その点はニッセンも同じです。インタビューなど実施しているのですが、売上につながるお客さまの本音をなかなか引き出せないという課題があります。

ライフスタイルの変化に合わせたUI、UX、ユーザビリティを重視し、女性を意識するのであれば、直観的な分かりやすさも大事だと思っています。

たとえばバナーをつくる際、多くの文字を詰め込まずに絞るようにしたり、インセンティブを付与したりするときは、良かれと思ってポイントやクーポンをたくさん付けない。その点、Oisixさんの商品名へのこだわりを参考にさせてもらっています。
小林加寿美氏
セールス本部ネット企画部サイト企画チーム マネージャー 
2011年 株式会社ニッセン入社<現職責>ニッセンオンラインにて顧客向けの商品売場・イベント企画立案実行を行う部門の責任者。レディースファッション・インナー・アクセサリー・チャイルド・ホームグッズ関連商品など各商品部門と連携し、年・週・日の販促計画を設計。イベントなどコンテンツへの落とし込み、お客様のニーズ、タイミングにあったサイト上の売場を統括・構築。

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