リテールアジェンダ 特別企画 #01
マーケティングプロフェッショナルが語る「リテールとメーカーの連携」で本当に必要なこと
リテールとメーカーの連携を促進し、消費者までの一気通貫のマーケティングを目指すカンファレンス「リテールアジェンダ2019」が12月3日、4日に大磯プリンスホテルで開催される。そのカウンシルメンバーであり、リテールマーケティングのプロフェッショナルであるイトーヨーカ堂 顧問の富永朋信氏、店舗のICT活用研究所の郡司昇氏、デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏の3人が「リテールとメーカーの連携」に必要な考え方や取り組みについて議論した。
メーカーとリテールの連携を阻む要因は何か?
——「リテールアジェンダ」のテーマである、メーカーとリテールの連携を促進し、消費者までの一気通貫のマーケティングを実現するためには、何が必要でしょうか。
富永 まずメーカーが「店舗はオススメが体系化された存在」ということを認識するべきだと思います。リテール各社で少しずつ違いますが、たいていは本部にいる商品部がオススメする商品を決めて、販促チームがコミュニケーション施策を考えて、店舗が実行していくという流れになります。そして、消費者にそのオススメを楽しんでもらうわけです。
その文脈から考えると、あくまで「商品」はオススメの体系における、ひとつのパーツでしかないわけです。メーカーの営業やマーケティング担当は、その体系の改善にどう食い込んでいくか、という視点を持つ必要があると思います。
富永 朋信氏
イトーヨーカ堂 顧問 /Preferred Networks 執行役員CMO マーケティング関連の職務を歴任して現在9社目。CMOは4社目。株式会社イトーヨーカ堂 顧問、株式会社セルム 顧問、厚生労働省 年金局広報検討委員、内閣政府広報アドバイザー、マーケターキャリア協会理事。
イトーヨーカ堂 顧問 /Preferred Networks 執行役員CMO マーケティング関連の職務を歴任して現在9社目。CMOは4社目。株式会社イトーヨーカ堂 顧問、株式会社セルム 顧問、厚生労働省 年金局広報検討委員、内閣政府広報アドバイザー、マーケターキャリア協会理事。
鈴木 往々にして思うのは、メーカーとリテールの双方がお互いの仕事を理解するべきだということ。インターネットによってあらゆるモノがつながった時代、生活者がますます賢くなる状況で、リテールとメーカーがそれぞれで施策をしてもうまくいく状況ではありません。
鈴木康弘氏
デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。1996年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に従事し、ネット書籍販売会社イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立代表取締役に就任。2006年資本移動によりセブン&アイHLDGS.グループ傘下に入り。2014年にセブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任、グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。2015年同社取締役執行役員CIOに就任、グループシステムの改革に 着手し、デジタルシフトの骨格を作り上げる。2016年12月に同社を退社。2017年3月にデジタルシフトウェーブを設立、同社代表取締役社長に就任。
デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。1996年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に従事し、ネット書籍販売会社イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立代表取締役に就任。2006年資本移動によりセブン&アイHLDGS.グループ傘下に入り。2014年にセブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任、グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。2015年同社取締役執行役員CIOに就任、グループシステムの改革に 着手し、デジタルシフトの骨格を作り上げる。2016年12月に同社を退社。2017年3月にデジタルシフトウェーブを設立、同社代表取締役社長に就任。
郡司 リテールとメーカーの距離が遠いですよね。リテールはメーカーに対して「いくらリベートをくれるの?」「テレビCMが3000GRP入るなら、置いてあげるよ」みたいな話しかしません(笑)。
本当は、もっと「お客さまがこんなニーズを持っているから、こういう商品はつくれないの?」といった会話をしてもいいはず。最近、SPA(製造小売業)が消費者から受け入れられているのは、製造と販売の距離が近いことが背景にあると思っています。
それから、リテールの中でマーケティングを理解している人は、ほとんどいませんよね。チラシやテレビCMなど、プロモーションがマーケティングだと理解している人が大半。富永さんのようなマーケティングのスペシャリストが入社することもありますが、かなりのレアケースです。
郡司 昇氏
店舗のICT活用研究所1999年ランド設立。セイジョー(現ココカラファイン)とFC契約。2007年セイジョー入社。調剤事業部課長を経て、営業管理課長兼ココカラファインHD調剤担当で業務効率化・コスト削減・アライアンス等担当。2013年ココカラファインOEC社長就任。2016年ココカラファイン統合マーケティング部長兼任。2018年4月~現職。
店舗のICT活用研究所1999年ランド設立。セイジョー(現ココカラファイン)とFC契約。2007年セイジョー入社。調剤事業部課長を経て、営業管理課長兼ココカラファインHD調剤担当で業務効率化・コスト削減・アライアンス等担当。2013年ココカラファインOEC社長就任。2016年ココカラファイン統合マーケティング部長兼任。2018年4月~現職。
富永 もうひとつ言えるのは、実はリテールの本部内でも連携が取れていないケースが多いということ。例えば商品企画担当と、店舗運営担当のコミュニケーションが少ない、 みたいな。
一方で、メーカー社内もマーケティング部門は「開発部門は売れない商品ばかりつくって」と文句を言って、営業部門も「売れる宣伝をしない」と他部門を批判してばかり。
そんな中で、メーカーの営業担当がリテールのバイヤーとの商談で「ヨーカー堂さんの顧客には、ウキウキファミリー層がたくさんいるので、こんな棚にしたらいいですよ」みたいな、全く使えない調査結果を持っていったりしてしまうんです。