リテールアジェンダ 特別企画 #01

マーケティングプロフェッショナルが語る「リテールとメーカーの連携」で本当に必要なこと

組織同士、組織内の分断は、どうすれば打開できる?


——皆さんの共通認識としては、リテールとメーカーの間だけでなく、それぞれの組織内でも分断が起きているということですね。その状況を打開するためには、何が必要でしょうか。

鈴木 先ほどお伝えしたように、双方の理解が必要です。特に店舗は、日々の作業が膨大で忙しい。本部から「この商品を売れ」「接客はこうしろ」といろんな指示が来て、お客さまの声を上げる余裕はないですよ。それに、声を上げるルートさえないことも多いです。

富永 そうですね。店舗に行くと分かるのですが、そこは常にたくさんの商品が入荷されて、店頭に積んだ商品がどんどん売れていくフローな場所です。そうした姿をあまり理解せずに、本部やメーカーが商品をどんどん送り込むのですが、そうなると店の運営が回らなくなります。



——その状況に気づかないのは、なぜでしょうか。

富永 店舗を少ししか見ていないからです。1日ずっと店舗にいて観察すれば、分かること。そういうネイチャーとしての店舗をリテールもメーカーもお互いに理解しないといけないと思います。

特にリテールは、徹底的に縦割り組織で、ビジネス全体の最適化を邪魔しているケースが多いんです。リテールの中にマーケティングを理解した人がいて、その人が全体をマネージする仕組みが大事だと思います。そういう人とメーカーの偉い人がきちんと話ができるといいですよね。

——リテール側にマーケティングを理解した人材が必要で、そこからメーカーとの交流をつくるという2ステップが必要になるのですね。

郡司 そうですね。リテール側からすると、メーカーのマーケティング部門の人と会話する機会はすごく少ないんですよ。自分のココカラファイン時代を振り返っても、きちんと話ができていたのは、花王さんぐらいかな。



——なぜ花王とは、できていたのでしょうか。

郡司 単純に交流の機会が多いからでしょうか。花王さんがときどき、リテールを呼んでフェアを開催するんですよ。そういう機会に対話したりして、話が盛り上がることがよくありました。

鈴木 基本的には、リテールとメーカーでお互いに話し合って、不必要な慣習など無駄をなくすことが必要ですよね。意外とややこしいのが、この視点から考えられるのは、現場ではなく、経営者だということ。

富永 そうですね。「マーケティングは、経営でもある」という文脈から考えると、小売のCEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)は、CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)でもあると言えます。

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——メーカーの場合、CEOとCMOが分かれているケースが多いですよね。

富永 それは、メーカーのCMOには、商品開発という機能が含まれるからでしょう。商品開発からマーケティング、リテール対策までCEOやCOOの管轄に入れてしまうと、業務と責任が大きすぎるという面があると思います。

リテールにおけるCMOは、商品部がどの商品を店舗に並べるのかを決めて、それを販促チームでどうコミュニケーションするかを決めて、店舗運営部門で発注や在庫管理など物の流れをみてと機能が3つぐらいで収まるんですよ。なので、それらをひとりで管掌するのが合理的です。そうした役割は、リテールでは営業本部長という肩書きの人が担っていたり、そのポジションを置かずにCEOが担っていたりもします。

郡司 ただ、なかには単に営業部長が偉くなって営業本部長になっただけという、肩書きだけの会社もあります。そういう会社では、営業本部長は本当の意味でのCOO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)やCMOではないんですよね。

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