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マーケティングアジェンダ

「愛を叫べ、意味を創れ」元P&G伊東氏&音部氏、エステー鹿毛氏登壇(聞き手:ドミノ・ピザ ジャパン富永氏)

 国内外のブランド企業からトップマーケターが参加する合宿形式のカンファレンス「マーケティングアジェンダ」が、5月にロイヤルホテル沖縄残波岬(沖縄・読谷村)で開催された。昨年に続く2回目の開催となった今回のテーマは「Create The Future ~ The Power of seeing the invisible ~ (未来創造:見えないものを見る力)」。

 初日のキーノートには、クー・マーケティング・カンパニー 代表の音部大輔氏、吉野家 戦略担当顧問/OFFICE MASA代表の伊東正明氏、エステー 執行役 エグゼクティブ クリエイティブ ディレクターの鹿毛康司氏が登壇。

 音部氏と伊東氏は、P&G時代に「ファブリーズ」を担当した経験を持ち、一方の鹿毛氏は「消臭力」を含むエステーのマーケティング戦略を担ってきた。芳香消臭剤市場で両社がどのように新しい市場を生み出してきたのか、ドミノ・ピザ ジャパンCMOの富永朋信氏をモデレーターに議論が交わされた。  

 

「ブランド」という言葉の解釈

富永:「ブランド」という言葉には、マーケターの数だけ解釈や理解があります。セッションを始めるにあたって、まずは「ブランド」という言葉に対する、それぞれの考えをお聞きしたいと思います。
 

富永 朋信 氏
ドミノ・ピザ ジャパン
執行役員 チーフマーケティングオフィサー

日本コダック(現コダック)、日本コカ・コーラ、ソラーレホテルズアンドリゾーツ、西友などでマーケティング関連の職務を歴任。日本コカ・コーラではiModeでコカ・コーラが買える自販機システム「Cmode」の立ち上げを担当。それ以来、「購買=ブランド選択+チャネル選択」という式の解を模索し続けている。西友では同社のイメージを一変させるキャンペーンを連発した。ブランドの構造はカテゴリによって違うことに気付き、全てのカテゴリのブランド構築に対応できる方法の開拓に頭を悩ませている。座右の銘はたくさんあるが、今のお気に入りは「過ぎたハンサム休むに似たり」「鏡を信じるな」


伊東:一言で言うと、ブランドはお客さまとの「約束」です。これは抽象的な意味ではなく、ビジネスとして見たとき、ブランドの強さは粗利を生み出すことができます。そのため、強いブランドはさらに投資ができて、継続的に成長できるようになる。その全ては、お客さんに対する製品からの約束であり、お客さんとの関係性の中に成立していると思っています。
 

伊東 正明 氏
吉野家 戦略担当顧問
OFFICE MASA

P&Gにてジョイ、アリエールなどのブランド再生や、グローバルファブリーズチームのマーケティング責任者をアメリカ・スイスにて担当。直近までヴァイスプレジデントとしてアジアパシフィックのホームケア、オーラルケア事業責任者、e-business責任者を歴任。2018年1月より独立、ビジネスコンサルタント


音部:私は「意味」だと思っています。ブランドは、何かの名詞であることが多いですが、もともとの意味に異なる意味を付与したものです。例えば、シャンプーの資生堂「TSUBAKI」は、花の名前です。これに何らかの意味を付与して、いいシャンプーであるというイメージを纏わせていく、これがブランディングです。つまりブランドとは「意味づくり」、あるいは「意味」そのものだと思っています。

音部 大輔 氏
クー・マーケティング・カンパニー代表

P&Gジャパン、マーケティング本部に17年間在籍し、ブランドマネジャー、マーケティングディレクターとしてアリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドを担当し、市場創造やシェアの回復を実現。のちにUS本社チームでイノベーションの知識開発をマーケティングとして主導。帰国後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂など多様な文化背景、製品分野で、複数ブランド群を成長させるブランドマネジメント、組織構築、人材育成を指揮。2018年より現職。博士(経営学 神戸大学)。


鹿毛:僕はアメリカでブランドを勉強してMBAを取得し、32歳のとき鼻高々で帰国しました。認識が変わったのは、約20年前に起きた雪印事件。当時、現場で対応していたところ、ある手紙をもらったんです。そこには「雪印は大嫌いだけど、応援する。母ひとり子ひとりで育ててくれた私の母はお乳が出なかったから、一番高い雪印の粉ミルクを買っていた。その母の愛情を否定したくないから、雪印にがんばってもらいたい」とありました。

鹿毛 康司 氏
エステー
執行役 エグゼクティブ クリエイティブ ディレクター

競合他社と比べて1/10の広告費を覆すために2004年から自社サイト『エステー宣伝部.com』を開始。動画配信を中心にネットを使ったコミュニケーションにチャレンジ。2006年からツイッター、サイト、CMを融合したコンテンツマーケティングに着手。震災後の消臭力プロジェクトではその威力が最大化する。2017年自社サイトを『エステーQ』と改名。新たなコミュニケーション手法にチャレンジ中。


 伊東さんや音部さんの話は実にその通りなのですが、もうひとつ、ブランドは「消費者と一緒につくるもの」でもあります。ブランドがお客さんの頭の中や人生の中に入ることを20年前に知ってから、マーケターとしての戦い方が変わりましたね。
 

ファブリック棚から置き型消臭芳香剤カテゴリーへ

富永:ニオイを解決するというテーマのもとで戦いを繰り広げてきたお三方ですが、最初に市場をどう捉えていましたか。時代としては、音部さんが最初なのでしょうか。

音部:そうですね。「ファブリーズ」はアメリカで大きく売れてから日本でスタートした商品。しかし、日本で売り出したばかりのころ、商品の購入意向がある人はターゲットの3%程度でした。さらに、1回使うと劇的に効くため、リピートが少なかったのです。そこで、3%の人が1年に1本しか買わない状況から、数十%の人が毎月買うようになる状況とは、何だろうかと考えました。

 毎月買うということは、ルーチン化が必要ということです。ルーチンは問題発生の前に起こります。例えば、ルーチンとしての掃除は部屋が汚れると認識される前にしますし、服が汚れたと認識される前に洗濯します。ニオイが発生する前に部屋にファブリーズを使うという習慣を確立するのがいいのではないかと考えました。



伊東:実は今でこそファブリーズは消臭芳香剤だと認識されていますが、売り出した当初は布についた匂いをとるという機能性から、洗濯洗剤と同じファブリックケアというカテゴリーで販売したのです。しかし、本当のターゲットはホームケア、つまり住宅用の置き型の消臭芳香剤カテゴリーでした。

 その際、従来から販売している消臭芳香剤メーカーに競合だと気づかれないよう、インテージやニールセンのPOSデータも、消臭芳香剤とは違うファブリックケアのカテゴリーで出してもらっていました。

富永:水面下で戦略を進めていくのは非常に難しいですが、うまくいけばかなりのアドバンテージになりますね。スーパーやドラッグストアでも、それぞれの棚の担当者が違ったり、カテゴリー間には壁がある。その壁を越えるためにはまったく異なるアプローチが必要で苦労しますが、実現できれば、カテゴリーを侵食していることに気づかれずにシェアをとっていくことができます。エステーが、その戦略に気づいたのはいつ頃なのですか。

鹿毛:気づいたときは、かなりやられているときでした。それに、P&Gとエステーは広告予算も大きく違います。当時は、すごく焦りを感じました。

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