ウーマンズインサイトアジェンダ

「正射必中」弓道の考え方が、ゴディバの7年で売上3倍を実現した

 10月28日、29日の2日間、京都・都ホテルにて開催された女性向け商材のマーケティングをテーマにした「ウーマンズインサイトアジェンダ 2019」。キーノートには、ゴディバ ジャパン CEOのジェローム・シュシャン氏が登場。2010年にCEOに就任して以降、7年間で売上3倍にするなど、ここ数年のゴディバの急成長を支えている立役者だ。ビジネスを伸ばす秘密と、今後の戦略について語った。
 

大事なのは、「正しいこと」への集中

 
ゴディバ ジャパン CEO/代表取締役社長 ジェローム・シュシャン氏

 ゴディバのミッションは、「お客さまにハピネスを届ける」。もう少し具体的に言うと、記憶に残る幸せな瞬間(トキ)を届けるということです。ミッションを持つことはとても重要で、これが我われ社員にとってのモチベーションになり、おかげさまでこの7年で売上が3倍に伸びました。

 私のビジネスの考え方は、来日してから30年間続けている弓道に影響を受けています。弓道には「正射必中(せいしゃひっちゅう)」という言葉があります。これは、正しく射れば必ず当たるという意味で、「的に当てることではなく、正しく射ることに集中する」。そうすれば必ず結果が付いてくるという考え方です。

 これがビジネスにおいても当てはまると考えています。私たちは、常に売上や目標ばかりを気にしがちですが、まずは正しいことに集中する。そうすれば、自然と結果が付いてくるのです。

 では、ゴディバにとっての“正射”とは何か。それは、「商品」「チャネル」「接客」「広告」の4つです。これらの基本をしっかり行えば、売上がついてくると考えています。とは言え、それを実現するのは、簡単なことではありません。

 そこで大事なのは、いきなり高い目標を達成しようと考えないこと。弓道で矢を射るとき、的に向かって必ず当てなければいけないと気負ってしまうと、変なプレッシャーがかかって的に当たりません。これはビジネスも同じです。

 ゴディバはこの7年間で売上3倍を達成しましたが、これは1年あたりの成長率で言うと15%増にあたります。ただし、私が社内に掲げていた毎年の売上目標は、2~3%増でした。それに向けてチームで良い商品、良いキャンペーン、接客サービスでベストを出したからこそ良い結果が生まれたのだと思います。もし最初から15%を目標にしていたら、始める前に諦めてしまって、この結果は出ていなかったかもしれません。
 
弓を引く動作を実演するシュシャン氏。
 

「Aspirational & Accessible」憧れと身近さの両立を目指して


 ゴディバは「Aspirational & Accessible(憧れだけど身近な)」をビジネスモデルに提唱しています。多くのブランドは“憧れ”か“身近”のどちらかで、この両方をやろうとしているブランドは、なかなかありません。

 我われは百貨店に店舗を持ちながら、同時にコンビニエンスストアで商品を買うこともできます。これはゴディバのユニークなビジネスモデルだと思います。

 このビジョンを打ち立てたとき、社員からは不安や疑問の声があがりました。ですが、この戦略は成功しました。数字としても裏付けされていて、2017年に日経リサーチが23万人に調査した「ストア戦略サーベイ」によると、店の魅力を示す指標「場力(ばぢから)PQ」において、セブンイレブン、ユニクロ、ローソン、東急ハンズなど日常で使うブランドに続いて、ゴディバが5位。「時間消費プレミアム」の項目では、1位を獲得しました。これはゴディバがプレミアムなブランドであり、日常ブランドでもあることを証明していると思います。

 マーケティングのポイントとしては、オケージョンに合わせたチャネルの展開が功を奏しました。百貨店ではお歳暮・お中元などのギフト需要、ステーションモールは自分のためのセルフ需要、ショッピングセンターは若い世代の利用が多く、アウトレットは旅行帰りに買うお土産。コンビニエンスストアは今すぐに欲しい商品など、オケージョンごとに商品の買い方は異なります。それぞれに合わせた展開で、この7年間で全てのチャネルで売上が伸びました。

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