マーケティングアジェンダ
「Amazon、セブン-イレブン 巨大流通にメーカーが勝つ戦略」デジタルシフトウェーブ鈴木康弘・日本マクドナルド足立光 対談【後編】
2018/06/13
デジタルトランスファーの鍵は「人」にあり
足立 Amazonの話がたくさん出たので…鈴木さんは4月に著書『アマゾンエフェクト!「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうか』を上梓されました。鈴木 私が代表を務めるデジタルシフトウェーブでは、経営者にデジタルトランスファーを指南しながら、その実現のための戦略構築や組織整備をサポートしています。デジタル対応に悩んでいる経営者が、本当に多い。危機感を覚えてはいても、社員には相談しにくいし、提案にやって来るソリューションベンダーには騙されている気がすると…。
足立 まあ実際、騙してますからね(笑)。
鈴木 そうなんですよ(笑)。そこで蓄積された知見をもとに、「デジタルシフトの本質とは何か」「日本企業はなぜデジタルトランスファーから取り残されているのか」「これからどうすればいいのか」といったことをまとめたのが本書です。
なかでも紙幅を割いたのが、「人」の問題です。デジタルトランスファーを実現するために、旧態依然とした日本企業の「組織」を、「人」を、どのように変えていくべきかを述べました。
足立 上司や経営層がデジタルに理解を示してくれない、あるいはデジタルのことがわかっていない。多くの企業の担当者に共通する悩みですね。
鈴木 米国では、IT技術者の4分の3が一般企業に所属しています。一方、日本では多くのIT技術者がSIerなどITサービス事業者に所属しています。デジタルトランスファーを内側で考えるのと、外側から提案してもらうのとでは、実行のスピードが全く違う。僕らは、デジタルトランスファーを担う人材を一般企業内に育成すべく取り組んでいます。
真の「カスタマーファースト企業」は、どうしたら顧客に資する仕事ができるか、社員一人ひとりが考えている企業です。そして今の時代は、そのためにデジタル・ITどう生かしていくかを念頭に置いて考えることが重要です。
足立 考えることもそうですが、どんどんやってみることですよね。まずはやってみないと、成功か失敗か判断できないことがあまりに多いですから。
鈴木 先行き不透明な今の時代、何が“当たる”かは、正直なところわかりません。そうした環境下で成功している企業は、社内にベンチャー企業がたくさんあるイメージです。顧客のために必要な変化を起こすためのプロジェクトが、常に社内でいくつも動いている、AmazonやGoogleのような「変化対応型組織」へと変革していくこと。これが今、多くの日本企業に求められていると思います。
私はよく、経営者の方にこんなふうにお話しします。社長は、見事な王国を築いていらっしゃいます。でもこのままでは、「王様の耳はロバの耳」状態になってしまい、御社は最大限に成長することはできません。そろそろ法治国家に変えませんか。社長の経験と勘でやってきた部分を、ルール化して実行するのです。社長は大統領になってください……と。
足立 それ、鈴木さんが言うのはいいですけど、我々が言ったらクビになっちゃいますよね(笑)。
鈴木 いや、私もセブン&アイにいた頃は、社内でこういうことを言うと顰蹙をかっていました(笑)。外に出たから言えることなんです。もし、皆さんの会社のトップを説得するのに、私を使ってもらえるようだったら、喜んでやりますよ。
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