ネプラス・ユー2020 #01

ブランドと販促、利益を生むのはどちら? サントリー、ダイキン、ライオン、日産が議論【レポート】

 2年目を迎えたマーケティングフォーラム「ネプラス・ユー」が9月15~18日の4日間にわたって開催された。本記事では、初日に行われた人気オンラインセッション「ブランド VS 販促 利益を生むのはどちらだ」をレポート。

 大手メーカーでブランドマネジメント、あるいは販売促進などを担うスピーカーが、企業の中でしばしば起こる「ブランディング施策と販促施策のどちらが重要か」という論争に切り込んだ。
 

立場の異なる4人のマーケターが討論


 限りある予算を使って、商品やサービスの売上をつくるうえで、ブランディング施策に重点を置くのか、あるいは販促施策に力を入れるのかといった論争がしばしば起こる。ブランドと販促の切り分けは簡単ではないものの、結果的により大きな利益につながるのは、どちらなのか。

 その議論の論客として迎えたのは、サントリーで営業推進本部長を務める中村直人氏、ライオンで6年間の営業経験を経て、現在はオーラルケア事業の主力ブランド「クリニカ」のブランドマネジャーの横手弘宣氏、ダイキン工業で広告や広報などを歴任し、現在は広告宣伝グループ長としてブランドづくりを手掛ける片山義丈氏の3人。モデレーターは、日産自動車 日本マーケティング本部 副本部長の堤雅夫氏が務めた。


 

販促×ブランド、利益につながる方程式


 はじめに堤氏が「これまでの経験から、より大きな利益を上げるのはブランドなのか、販促なのか、本音を聞きたい」と3人に投げかけた。

 それに対して「自分のポジションから言うと、答えは販促であるべきですが、正直なところ両方という回答になる」と切り出したのは、中村氏だ。中村氏は営業戦略として販促施策を仕掛ける立場にあるが、「仕事をする中で、販促とブランドの関係性をより高めていくことの重要性が見えてきました」と明かす。

 ひと口にブランドと言っても、サントリーにはサントリーというコーポレートブランドと、ザ・プレミアム・モルツなどのプロダクトブランドの両方が存在する。これらのブランドについて、消費者に良いイメージを定着させるために中村氏が提唱するのは、「接触回数×インパクト(報酬予測誤差)」の方程式だ。

 これが意味するのは、「消費者がブランドと接触する折に期待値以上のインパクトを残してブランドのいいイメージを脳内に刷り込み、マスメディアや店頭、外食などでたくさんの接触機会を創出して、積み上げていくことが重要。だからこそ販促とブランドの両面が欠かせない」と中村氏は話す。



 例としては、角ハイボールが分かりやすい。角ハイボールは、テレビCMによるイメージ醸成、飲食店での接点、店頭における缶入りの角ハイボール缶のプロモーションを全国で一斉に展開。これら全てをイメージビジュアルでつなげることで、ハイボールといえば角瓶、あるいはサントリーというイメージを定着させることに成功した。

 「ブランドとして良いイメージを定着させていくためには、やはり接触回数が重要。そのためにはマスメディアを含む広告と販促の両方が必要だと思っています。ただ、お客さまとの接点をつくっていくという点で、今は販促が特に重要になると感じています。私の立場としても、従来にない販促施策でしっかりと接点をつくり、利益を出していきたいと考えています」(中村氏)。

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