SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020 #01
消費行動は「BUY」から「VOTE」へ。佐藤夏生、山口有希子、リュウシーチャウが語るマーケティング
2020/12/07
「ソーシャルデザイン」をテーマにした東京・渋谷の都市フェス「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2020」が11月7~15日、開催された。
11月10日には、注目トークセッションとして「Brand Design for Social Design未来をつくるマーケティングへ」が行われ、パナソニック コネクティッドソリューションズ社の常務でエンタープライズマーケティング本部 本部長の山口有希子氏、ブランドエンジニアリングスタジオEVERY DAY IS THE DAY クリエイティブディレクターの佐藤夏生氏、レノボ・ジャパン マーケティング統括本部 統括本部長のリュウ シーチャウ氏の3名が登壇。
モデレーターを渋谷未来デザイン 理事の長田新子氏が務め、目覚ましい進化を遂げる近年のマーケティングの可能性について、9つのキーワードをもとに議論が交わされた。
11月10日には、注目トークセッションとして「Brand Design for Social Design未来をつくるマーケティングへ」が行われ、パナソニック コネクティッドソリューションズ社の常務でエンタープライズマーケティング本部 本部長の山口有希子氏、ブランドエンジニアリングスタジオEVERY DAY IS THE DAY クリエイティブディレクターの佐藤夏生氏、レノボ・ジャパン マーケティング統括本部 統括本部長のリュウ シーチャウ氏の3名が登壇。
モデレーターを渋谷未来デザイン 理事の長田新子氏が務め、目覚ましい進化を遂げる近年のマーケティングの可能性について、9つのキーワードをもとに議論が交わされた。
「購入者」を「消費者」と表現することへの違和感
長田 事前にお三方からは、「ブランドデザイン」「ソーシャルデザイン」というテーマにまつわるキーワードをいただきました。
<9つのテーマ>
- BUYから、VOTEへ
- Purpose
- Never say no to new things
- Force for Good.A force for growth
- ブランドの求心力と遠心力
- Great experience
- 課題解決から、可能性創造へ
- Sustainability
- Consumer centric
それぞれキーワードを選んだ人から、取り上げた理由を語ってもらいたいと思います。まずは、佐藤さんの「BUYから、VOTEへ」、これはどういう意味でしょうか?
佐藤 購買という行為に対し、単なる物とお金のやり取り(BUY)ではなく、企業やブランドへの投票(VOTE)的な意味合いが強くなっていると感じています。
そこで、モノを購入する人を「消費者」と表すのにも違和感を感じています。「生活者」「ターゲット」「顧客」という言葉も当てはまらなくなり、次にハマる言葉が何かをずっと考えているんですけど、今のところ一番近いと思う言葉は「ファン」かなと。皆さんは、どう思われますか?
山口 私は「Purpose」というキーワードを出したんですが、佐藤さんの話を聞いてVOTEの意味に近いように感じました。単にモノを売るのではなく、そもそもその企業が存在する意味や価値提供、それがより重要な時代になっているということですよね。
この数年間、それを自分の中で考える機会がものすごく増えました。というのも、消費者の嗜好が変わり、特に若い人は値段が高くても社会的に意味があるモノを買ったり、給料が高水準であることよりも社会的意義のある会社に就職したり、価値観が変わっていると思うんです。
シーチャウ プロダクトの形が変化していることも関係しているのではないでしょうか。昔はプロダクトが先に決まって、そこからマーケティングを考えましたが、今は改善しながらつくっていけるタイプが多いですよね。そういう意味では消費者とインタラクションを取りながらやれることが多いので、VOTEしやすいのかもしれません。
そうしたモノのつくり方やマーケティングの方法がどんどん変わっていくことで、VOTEが強くなっているように思います。
山口 言い換えれば、消費者のパワーが強くなってきたということですよね。個人の発信力も強くなり、自分の意思を伝えられる人が増えたからこそ色々な変化が起きています。
シーチャウ そうですね。自分の欲しいものを自分で選びたいという人は増えていると思います。コンテンツに対してもそう。今日もある記事に、「10~20代のYouTubeの視聴率がテレビより高い」と書いてあったのですが、それも自分の意思で自分にとってプラスになる情報を選ぶことができるからだと思うんです。その分、コンテンツが多様化して、だんだんシビアになっているのかなと思います。
佐藤 僕もその通りだと思いますね。それは世の中のブランドを見ていても感じます。
昔はブランドと言うと、利益が大きく強度の高いものを指す言葉として使っていましたが、今は知られてないし小さいけれど、ストロングなブランドが続々生まれている。まさにVOTEを体現しています。
個人がやっているようなコーヒー屋さんやパン屋さんであっても、プライドを持ってイノベーティブなことができれば、しっかりファンがついてリスペクトされます。規模に関係なく、ブランドが成立するようになっていて、それは面白くもあり、ちょっと怖くもありますよね。
山口 熱狂的なファンがいるブランドですよね。だからこそ強い。誰でもブランドを立てられる分、競争は激化していますね。
佐藤 ある種クレイジーでないと勝てない時代。
長田 先ほど山口さんから、「Purpose」というワードをいただきましたが、それについては、どうでしょう?
山口 企業は「Purpose」よりも利益にフォーカスしがちですよね。それも必要ですが、意識しなければならない重要ポイントは、本質的な企業の存在価値だと思うんです。そこに向けてマーケティングやブランディングをしないと、VOTEに繋がっていきません。
シーチャウ 「Purpose」がなくて、長続きしている企業を見たことがありません。何十年も存続してきた企業はラッキーだから残れたのではなく、存在価値を示しながら進化を続けてきた結果、続いてこられたはずで、「Purpose」はなくてはならないものだと思います。