リテールアジェンダ 特別企画
小売業のDXには、“楽しさ”のデザインが必要
2020/12/02
楽しさと煩わしさの境界
一方で、なんでもかんでも「新しいパターン」を配置すればいいと言うわけではありません。
「そんなにたくさん用意しても利益が取れないから?」いえ、それもありますがそれは企業の論理であり、脳の「決定回避の法則(多すぎると決められない)」に反するからです。
買い物には「自己決定感」と言う楽しさにつながる要素もある一方で、自己決定の連続にはカロリーが必要です。脳は体の中で最もカロリーを消費する燃費の悪い臓器ですから、度を越すと「煩わしい」と感じてしまいます。
さて質問です。「楽しさと煩わしさの境界」どこにあるでしょうか?
「親切とお節介の境界は?」と聞いているようなものですので、これはとても難しい質問です。「それは人によって違うでしょう」と言う声が聞こえてきそうです。その通り、人によって違うのです。だからこそ難しい。
しかし、セオリーくらいは見出したいと思います。「楽しさ」と「煩わしさ」の天秤、つまりバランスの問題ですので、
① 今かけてもらっている労力をなるべく増やさずに、その行為そのものに「楽しさ」を加えることができれば、バランスとして楽しさが勝つと考えられます。—今あるものをエンタメ化
② 新しいルールを強いるような「全く新しい体験」は、余程の楽しさが提供できないと煩わしさが勝ってしまうでしょう。——既知のルールの応用
③ いくら新しいパターン(情報)だからと言って、10発中9発フィットしないようなものは(広告のCTRが1桁と言うことはコレに該当)、煩わしくて発狂することでしょう。——パーソナルフィット
そして、最後にゲームデザインにおいて当たり前すぎて見逃されがちなものが「④フィードバック 」です。
フィードバックのないゲームなどあり得ません。十字キーを押したらキャラクターが動く、レベルが上がれば称賛のサウンドが鳴る、プレイ結果がランキングされるなど、ゲームデザインはフィードバックのデザインとさえ言えます。
それを踏まえて、今のマーケティングキャンペーンや小売アプリを見渡すと、このフィードバックがあまりに足りないことがわかります。
まとめると
①生活者が既にやっている行動を
②誰もが知っているルールを応用してエンタメ化
③内容をパーソナルフィットさせて
④十分なフィードバックをする
その仕組みをユーザーテストし「楽しさ>煩わしさ」となっているかをチェックする。これが成功していればユーザーは繰り返し行動を起こしてくれますので、数字的にはMAU(マンスリーアクティブユーザー)ではなくDAU(デイリーアクティブユーザー)が増えるはずです。