Road to ダイレクトアジェンダ2021 #02

パーソナライズシャンプーが大ヒット、最先端ビューティーテックから学ぶ「悩みに寄りそう商品戦略」青山商事 藤原氏、スパーティー 深山氏【ダイレクトアジェンダ事前対談】

前回の記事:
「コロナ禍、人とのつながりで得られる価値」オイシックス 西井敏恭、FABRIC TOKYO 森雄一郎【ダイレクトアジェンダ事前対談】
2021年7月1日からベルサール汐留(東京)で開かれる「ダイレクトアジェンダ2021」は、通販・直販事業に携わるトップマーケターが集結し、2泊3日で行う合宿型カンファレンスです。最先端の知識を得る座学だけではなく、ネットワーキングを重要視しており、毎年多くの人とのつながりを生み出し、参加企業のビジネス成長を支援しています。

本企画では、「ダイレクトアジェンダ2021」開催に向けて、注目すべきテーマや参加企業へのメッセージ、初参加でも楽しめる心構えなどを3回にわたってお届けします。第2回目はダイレクトアジェンダのカウンシルメンバーである青山商事 リブランディング推進室室長補佐の藤原尚也氏と、今回ダイレクトアジェンダに初参加のSparty(スパーティ)代表取締役の深山陽介氏が登場。

いま話題の「パーソナライズ」をテーマとした商品展開で注目を浴びる深山氏にブランド立ち上げの秘話やパーソナライズ商品とD2Cのこれから、そして当日聞くことができるオープニングキーノートの先出し情報をお届けします。
 

パーソナライズを軸としたビューティーテック企業の誕生

藤原 深山さんがヘアケア領域でD2Cビジネスを選択したのは、何か理由があったのでしょうか。

藤原 尚也氏
青山商事
リブランディング推進室室長補佐
深山 新卒で広告会社に入社し、美容とは関わりの少ない仕事をしてきました。一時期、ヘアケアや化粧品関連のクライアントを担当したことはありましたが、「商品数が多いな」や「並んでいる商品はどれも似ているな」と思っていたくらいで、自分が美容という領域で会社を設立するとは思ってもいませんでした。
 
深山 陽介氏
Sparty(スパーティー)
代表取締役

Spartyが展開する「MEDULLA」は、オンライン上で9つの質問に答えると、3万通りの組み合わせから個人に合わせてカスタマイズした商品を自宅に届けてくれるサブスクリプション型のサービス。2018年5月にローンチし、累計会員数は2021年1月時点で30万人を突破。

藤原 会社を設立されたのはいつですか。

深山 
2017年の7月です。結婚を機に前職を辞めて、会社を設立しました。その頃から、一緒に住みはじめた妻の悩みを聞いたことがきっかけだったんです。

妻はくせ毛をコンプレックスに感じていて、色んな種類の高級シャンプーを使っていました。私はその横で、無駄なお金の使い方だなと見ていました(笑)。

藤原 私もヘアケア商品のマーケティングに携わったことがあるので、くせ毛に悩む人が多いことは分かります。

深山 それで、妻になぜそんなに頻繁にシャンプーを買い替えるのかと聞いてみると、「世の中には良い商品はたくさんあるけど、自分に合った商品を見つけるのはとても難しい」と言うのです。それを聞いて、そう思っているのは妻だけではないかもと思いました。
 

その頃、妻がTwitterで見ていたのは「#シャンプー難民」というハッシュタグ投稿でした。それで自分でも調べてみて、毎日投稿したり、アクションしたりする人がとても多いことをはじめて知ったのです。

商品ラインアップの増加や悩みの多様化によって、「商品を見つける」という行動自体が難しいと感じる人が増えていることに気付いて、その困難を自分が解決できないかと思い、パーソナライズしたシャンプーを提供する会社を設立しました。

常にそばにいる妻の悩みを解決したかったですし、くせ毛が悩みの妻を満足させられれば、きっといい商品ができるだろうという思い付きから始めたのです。

藤原 ノンシリコンや界面活性剤を少なくした商品など、顧客の要望に合わせればいくらでも商品化はできたと思うのですが、あえてパーソナライズにしようと思ったのはなぜですか。

深山 
前職でデジタルマーケティングに携わっているとき、海外のトレンドとしてビューティーテックやパーソナライズ商品があることを知りました。すでに米国には大きな市場ができており、日本もパーソナライズ化に向かっていくと考えたのです。それに、広告もパーソナライズが当たり前でしたので、「モノのパーソナライズ化の時代が来る」と思いました。
 

自分に寄り添う体験づくりが鍵になる

藤原 深山さんが提供されているシャンプーは、ホームページを拝見すると「9つの質問」で商品提案が完了するようですが、このメソッドというかスキームに落ち着くまでにどのような過程がありましたか。

深山 最初は質問の数が30個くらいありました。実際の顧客に体験いただくテストを実施したのですが、体験者全員が質問の途中で離脱してしまったのです。「質問項目が多くて、回答に疲れてしまう」と。

藤原
 いくら自分にあったものを探すと言っても、30個の質問は確かに多い印象です。

深山 そのテストでもうひとつ分かったのが、顧客は「漠然とした悩みは抱えているけど、シャンプーについては詳しくない」、「普段ドラックストアなどでなんとなく買っているだけ」、「自分に合ったいい商品だったら購入したい」という、明確な答えを持たない方が多かったことです。そこで、質問を9つまで絞ってシンプルな診断にしました。

藤原 そんな経緯があったんですね。

深山 ボタニカルで透明感のあるシャンプーが流行していた時代に逆行して、あえてボトルをカラフルなデザインにしました。そういった差別化にどんどん挑戦していきました。

藤原 私も実際その質問に答えてみたのですが、1番面白かったのは最後に気分を問われたことです。てっきり、9個に絞られた質問なので、自分の頭皮や髪質のことだけを聞かれると思ったのですが、最後に「あなたの気分は?」と聞かれて、「え、それはいま関係ないじゃん」と思ってしまった。

そのとき私は「元気・アクティブ」という項目を選んだのですが、そこで表示されたのが黄色でした。ひまわり好きな自分にはピッタリだなと、びっくりしたんです。気分を選択させることには、何か理由があるのでしょうか。


深山 シャンプーを選んで手に取るという店頭での体験をオンラインに置き換えるには、購入するときの心の高揚感自分に寄り添ってくれる体験をいかにつくれるかが重要です。効果・効能だけで選んでしまうと、顧客に楽しさを与えられないと思ったんです。

藤原 オンラインでの顧客体験を、リアルと同じように与えるということですね。

深山 質問に答えて名前を入力した後も、結果が表示されるまでに7秒くらいかかります。実はサイトの仕様上は名前を入力すれば、すぐ結果を表示できるのですが、「待つ」というワクワク感や高揚感をあえてつくり出しています。
 

パーソナライズ商品のBtoB参入の可能性

藤原 男性の私でも商品が欲しいなと思いました。この仕組みを法人にも提供していくと聞いたのですが、本当でしょうか。

深山 ブランドとしての展開で言うと、2020年に「HOTARU PERSONALIZED」というパーソナライズスキンケアを発売して、とてもご好評いただきました。

次はパーソナライズドサプリメントを発売する予定です。また、自社開発で培った仕組みや技術を他社に提供します。大手メーカーと連携してパーソナライズD2Cブランドをつくる支援を進めていきたいと思っています。

藤原 自社開発だけでなく、他社とのコラボレーションは、可能性がかなり広がりますね。それは美容に限らずでしょうか。

深山 
そうですね。最近ご相談いただいた企業の中には食品会社もありました。まだまだ領域は拡大できると感じています。
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