ダイレクトアジェンダ2021 #02

20期連続の増収増益、サントリーウエルネス 沖中直人社長が語る「顧客原理主義」

 2021年7月に都内で開催されたダイレクトマーケティングのカンファレンス「ダイレクトアジェンダ2021」。そのキーノートには、サントリーウエルネス 代表取締役社長の沖中直人氏が登壇し、健康食品通販市場でトップを走り続ける同社がどのように顧客、ひいては人間を理解しているか、さらに同社が目指すDXについて語った。聞き手は、DINOS CORPORATION CECO(Chief e-Commerce Officer)の石川森生氏が務めた。
 

「人生100年時代」の不安、シニア層の多様性に真剣に向き合う


石川 最初にサントリー、そしてシニア世代を中心に顧客の支持を得ているサントリーウエルネスの目指す方向性をお話しいただけますか。
 
沖中 直人
サントリーウエルネス 代表取締役社長

沖中 サントリーは、1899年に鳥井商店として創業しました。何と言ってもサントリーを象徴するのは、「やってみなはれ」という創業者である鳥井信治郎の言葉。信治郎はウイスキーを誰も飲んだことがない時代に「日本人による日本人のためのウイスキーをつくろう」と考え、成果が得られるかどうかも不確実な中でブレンドの研究からウイスキーの貯蔵まで長期にわたるオペレーションをやり通し、サントリーという会社をつくり上げました。
 
石川 森生
DINOS CORPORATION CECO

それから123年経った現在、サントリーは「人間の生命の輝きをめざし」という社是のもと、お酒だけでなく飲料事業、外食事業、フラワー事業、文化事業など、様々な事業を運営しています。なかでも注目すべきは、特別養護老人ホーム「高殿苑」に代表される高齢者の養護介護事業。人生100年時代と言われるいま、サントリーには「おぎゃあ」と生まれた瞬間から歳を重ねていくまでの中で、選んでいただける商品のポートフォリオが揃っていると考えています。

その中でサントリーウエルネスは「老化を、科学する。」というコンセプトで商品研究を40年近く重ね、おかげさまで20期連続の増収増益を達成し、今年度も非常に好調に推移しています。これだけたくさんの人が100年生きる時代というのは人類史上初で、ナレッジが全くありません。世の中ではアクティブシニアなどのキラキラした表現をよく見かけますが、実際は50歳を過ぎると様々な不安を抱えるようになります。90歳のお客さまにインタビューすると、「ここまで生きるとは思わなかった」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

人間は年を重ねると、未来への不安から様々な影の部分が増えていきます。それをきちんと理解することが、我われにとって大事だと考えています。私が社員に問うのは、「どうすれば人間は幸福に生きられるのか」ということ。そこに貢献する会社になろうと、議論を重ねているところです。

そうする中で私が一番大事にしたいと思っているのは、サントリー流の「顧客原理主義」です。これは顧客のことを一番理解している会社になれば、自ずと業績は付いてくるという考えです。特にサントリーウエルネスは、世界で一番シニアのことを理解している会社になろうと、そのための活動を徹底的に強化しています。

みなさんは、シニアに関するセグメンテーションを行なっていますか。15歳と21歳の違いは議論しても、65歳と72歳の違いについて考えたことはありますか。もちろん若い世代にも多様性はありますが、その多様性と65歳の多様性は全然違うんです。健康状態、所得、既婚未婚、子どもの有無、持病の有無、ガンの家系か…。サントリーウエルネスは、その人たちの幸福に向けて一緒に共生していくことで、誰も真剣に向き合っていないかもしれない「シニアの多様性」に本気で向き合う会社になろうと思っています。

そこで我われが目指すのは、メーカーとして最高品質の商品の提供はもちろん、コンタクトセンターでの電話対応など、あらゆるサービスを最高レベルにしていくこと。その先に、日本一のDX企業としてCX(Customer Experience:顧客体験)を提供していくということを掲げています。「日本一のDXとは、よく言ったな」と思われるかもしれませんが、やはり目標は高く、志も高く取り組んでいきたいと考えています。

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