ダイレクトアジェンダ2021 #02

20期連続の増収増益、サントリーウエルネス 沖中直人社長が語る「顧客原理主義」

 

創業から脈々と流れる、社会のためになるという精神




石川 サントリーウエルネスを語るにあたって、まずはサントリーを深掘りしないといけないと思い、鳥井信治郎さんの生涯を描いた小説「琥珀の夢」を読みました。これは小説としてもすごく面白いのですが、それ以上にサントリーがなぜトップを走り続けてこられたのかがよく分かります。

私はこの本を読んで初めて知ったことがたくさんありましたが、一番印象的だったのは、仕事のことと同時に、従業員や社会のことがひたすら描かれていること。鳥井信治郎さんがお金を儲けるためではなく、従業員や社会のためになるという目的のために仕事をしている姿が一貫して書かれているんです。そういったところがサントリーの強みなのではと感じました。

沖中 そうですね。サントリーの根っこには、お酒や飲み物を通じて、いかにみなさまの生活文化を創造していくのかをずっと追求してきたということがある気がします。

石川 それとマスターブランドとしてのサントリーの強さも感じました。サントリーウエルネスはもちろん業界トップの強さがあるのですが、その根底にはサントリーのウエルネス事業だからこその強さがあるのだなと。

沖中 その通りです。私もサントリーが120年間ずっと蓄積してきた信頼の上にはじめてサントリーウエルネスがあるということを常々、社内の人間に言っています。

この先、超高齢化社会でシニア層が増えれば、世の中とサントリーウエルネスの接点はどんどん増えていきます。そのときに予防だけでなく共生という領域まで貢献できるようになれば、子会社であるサントリーウエルネスがサントリーホールディングスに貢献できるようになる。それによってサントリーという会社がますます世の中に必要とされるようになるというのが、私たちの役割だと思っています。

石川 なるほど。「琥珀の夢」にも書かれていましたが、そもそも自分の仕事が社会の役に立つということが大前提なんですよね。
 

サントリーがDXを目指す理由


石川 サントリーは120年余り経っても変わりようがないものを持っていますよね。私は「かなでもの」という家具ECの経営もしているのですが、特にベンチャーとして新しいビジネスを立ち上げた場合、企業規模やプロダクトなどのフェーズが変われば、ビションやミッションは変えてもいいという感覚がありました。

正直に言えば、私たちのビジネスは、いわゆるダイレクトマーケティングという手法論が先にあり、そこにうまくはまるように展開していこうとしている面がある一方で、サントリーはそうではありません。実は、それが一番ビジネスとして強く、後からひっくり返すことが難しいと思わせるポイントでした。
 

沖中 ありがとうございます。ただ、そこがサントリーの強さでもある一方で、弱さでもあると思っています。だからこそ、あえて「日本一のDX企業になる」と言っているんです。

サントリーは、人間に寄り添うという文化が強いがゆえに、デジタルテクノロジーを「人間らしくない」と忌避してしまう傾向にあります。でも、デジタルを使っている人たちも、お客さまのことを考えて技術として使っているわけなので、サントリーももっと謙虚にテクノロジーに向き合い、それを取り入れてお客さまにもっと貢献できる会社になっていかなければならないと考えています。

石川 なるほど。そのうえでサントリーウエルネスの話を伺いたいのですが。先ほど沖中さんがお話しされたようにシニア世代をセグメンテーションしたときに、サントリーウエルネスが提供しているサプリだけでは解決できない課題もたくさんあると思います。そういったところに対して、120年もの間、脈々と流れているサントリーのビジョンを踏まえながら、どのようなアプローチをしていこうと考えているのでしょうか。

沖中 サプリメントだけで「本当の健康がどこまで実現できるか」という質問ですよね。そこはモノを提供するだけでなく、サービスとして人間が健康のために毎日のルーティンをいかに変えていくかを含めてデザインしていく領域まで踏み込んでいくことが必要だと考えています。

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