ダイレクトアジェンダ2021 #02

20期連続の増収増益、サントリーウエルネス 沖中直人社長が語る「顧客原理主義」

 

手法は同じでも、なぜ結果が異なるのか


沖中 毎日のルーティンの変化が大事といっても、健康食品は一般的に大量のテレビCMを打ったり、インターネット広告でも一度クリックすると長く追跡されたりするのですが、正直やりすぎではないかと思うところもあって…。

石川 そうですよね。ただ、デジタルを活用したダイレクトマーケティングでは、たとえばランディンページをつくってA/Bテストをひたすら繰り返し、CPA(顧客獲得単価)をどれほど下げるかを手法として押さえていかなければならない面もあると思います。これらと、サントリーのミッションとのバランスはどう取っていくのでしょうか。

沖中 もちろん、ビジネスとしては数字も大事ですが、やはり一番大事なのは「お客さまを向いて仕事をすること」です。それをしながら収益を上げるという両方がすごく大事です。

シニアの人は中々、本音を言ってはくれませんし、人間理解は本当に大変なのですが、その人たちの本当のインサイトに共感してサービスを展開すれば、それは結果として売上や利益に跳ね返ってくると考えています。



それに顧客理解を徹底的にやりながらシニア層の多様性に応えようと思えば、やはりデジタル以外に手段はありません。そのためにはデジタルというテクノロジーを学んで、オペレーションエクセレンスにならないといけないわけです。そのうえで顧客の解像度を高められるよう、DX推進に向けて採用した人材には、「お客さまを理解することから逃げるな」と口を酸っぱくして言っています。

石川 今のお話はすごく重要ですよね。DXという文脈の裏には、今までやってきたリアル側の本業が立ち行かなくなり、その理由をデジタルに乗り遅れたせいにするという雰囲気がある気がしています。だから「DXは大事だよね、投資しようね、人を集めようね」と。

ただ、サントリーウエルネスはその順番が逆で、もともとビジネスの強い軸があって、それをさらに強くする情報を得るためにDXが必要だという流れなんですよね。

沖中 そうですね。DXを取り入れなければお客さまの役に立てないから、それに本気で取り組むために、人事制度までも変えたらいいと言っているんです。

石川 結局のところ、私たちが知っている手法とサントリーがしている手法は大差ないはずなんです。でも、根っこに持っているフィロソフィーが違うから、たとえ同じ数字を見ていても感じていることが違います。それが創業から120年以上にわたって脈々と受け継がれていることがすごさではないかと思いました。
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