カスタマーエンゲージメント研究会 #7Sponsored

カスタマーエンゲージメントの先駆者たちが「新・評価指標」を議論【研究会レポート】

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【調査レポート】ノウハウ・人材不足の悩みが噴出 デジタルマーケティングの成果が出ない企業が“今”取り組むべき唯一の打ち手
 カスタマーエンゲージメントの定義の作成や、日本の業界標準となるカスタマーエンゲージメントスコアの設定を目指す「カスタマーエンゲージメント研究会」の第3回が2021年1月に、第4回が5月に開催された。

 第3回では、これまでの議論の振り返りを行ったあと、今後の議論の参考のため、エンゲージメントスコアをすでに設定し顧客との関係性向上に活用している日本経済新聞のデジタルメディア「日経電子版」についてデジタル事業メディアビジネスユニット 営業企画グループ 部次長の小林 秀次氏が講演を実施。

 第4回では、日本の業界標準となるカスタマーエンゲージメントスコアを設定するためのディスカッションが行われた。それぞれの内容をレポートしていく。
    

カスタマーエンゲージメントスコアづくりの方向性

   
 第3回ボード会議の開催直前には、ボードメンバーがいくつかのグループに分かれて、カスタマーエンゲージメントの定義とそのスコアをどのような方向性でつくっていくべきかをブレインストーミングした。

 先行して行われたグループのディスカッションでは、共通項として「エンゲージメントとは行動を誘発する感情の動き」ではないかという話が出たという。ここで言う「感情の動き」とは、感情の振り幅が発生したり、テンションが上がったりすることだ。ただ、PDCAを回すためにも、感情の動きを代替する行動指標を見つける必要がある。また、エンゲージメントの軸は、商品軸やブランド軸、ライフスタイル軸など、いくつかのケースがあるという話もあった。

 一方、もうひとつのグループでは、カスタマーエンゲージメントとは「長期にわたる顧客と企業の相互の体験によって構築される関係性」であるといった話がなされた。その考えのもととなる事例として、幼少期から近所にあったサントリーのビール工場に何回も遊びに行っていた女性が、大人になってサントリーのアルコール飲料ブランドのファンになったことや、ビール工場の見学後にビールの購入確率が高かった人は、工場を案内するスタッフとのコミュニケーションを相互に取っていたことなどが挙げられた。

 また、カスタマーエンゲージメントスコアについては、スコアの向上が購入率やフリークエンシー、LTVなどと相関が出るようなものにすべきだという話が出たという。

 続いて、エンゲージメントスコアを自社で構築し、実務で活用しているという日本経済新聞より、同社が運営するデジタルメディアの「日経電子版」のエンゲージメントスコアの取組みについて紹介。今回の日本経済新聞の試みからエンゲージメントスコアの有用性の高さを見ることができた。
    

第4回研究会。カスタマーエンゲージメントスコアの2案を激論

   
 5月に開催した第4回研究会の冒頭では、カスタマーエンゲージメントスコアの設定に先駆けて、Repro 取締役CMOの中澤伸也氏から、そのスコアの土台となる基礎ロジックと指標開発の方向性が語られた。
    

      
 それを踏まえたうえで研究会事務局は、カスタマーエンゲージメントスコア(以下、CE)の考え方について次の2案を提示した。

■案①

 総合的な「顧客体験の満足度(質)」と「コミュニケーションの総量(量)」の掛け算をCEとするべきではないかという考え方だ。具体的には、顧客一人ひとりに5段階で評価してもらう満足度と、その顧客が起こしたアクションの総計(総アクション数)を掛け合わせる数値をCEとして算出。そうして算出した各顧客のCEを合計し、顧客数で割ることによって、ひとり当たりの平均CEを求める。
  
各顧客のCE= 満足度×総アクション数
サービス全体のCE= 各顧客のCEの合計÷顧客数

 満足度は一定期間ごとに測定し、更新していく必要があるため、四半期ごとに定点観測でアンケートを実施していく想定だ。このアンケートに回答しない人がいることも予想されるが、そこは割り切り、あくまでも回答者の結果のみで集計を行う。

■案②

 総アクション数のみに注目し、それをそのまま各顧客のCEとして扱う考え方だ。これは、顧客との信頼関係や顧客の満足度は、結局のところ顧客の行動に表れるのではないかという前提に基づいている。

 良い顧客体験が累積する、つまり満足が累積すると、それが「アクション数=非取引行動」に表れ、その結果として購買行動に至るという考え方である。そこで、購買行動の一歩手前の非取引行動に着目してCEを追う。

 この場合の指標は非常にシンプルで、各顧客の総アクション数がCEとなる。そしてこれを案①と同じように、各顧客のCEを合計して、顧客数で割ることによって、一人当たりの平均CEを求める。
 
CE=総アクション数
サービス全体のCE=各顧客のCEの合計÷顧客数
    

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