マーケティングアジェンダ2021外伝 #01

元ネスレ高岡浩三氏、ファミマ足立光氏によるキーノート「イノベーションメソッドの根本に迫る」【マーケティングアジェンダ2021レポート外伝_第1回】

 

なぜイノベーションを生み出せたのか?イノベーションを考えつくために重要なことは?

 高岡氏は、多数のイノベーションを生み出してきました。その秘訣について、「重要なことは2つある」とまとめます。


 1.    新しい現実を考える

 
誰しもが「もう変わらないだろう?」と感じていることがあるが、5年から10年くらいのスパンで、「新たな問題」が「新しい現実」を連れてくる。

 車社会で言えば、高齢者の事故が増えた問題で、交通事故をゼロにするという新しい現実が出てきた。高齢化社会で言えば、シニアが増えて定年が伸び、働き方、死に方を考えるという新しい現実。よくよく考えてみれば、30年前から高齢化社会の問題は変わっていない。しかし、ここ5~10年で新たな現実として出てきた。

 この「新たな現実への変化」を解決するのがイノベーション。日本人は知識として蓄えるのは得意だが、物事の意味を考えることが少ない。徹底的に意味を考えることが大事になる。

 2.    ダイバーシティ思考

 日本人の「常識」を疑うことから、イノベーションが生まれる。高岡氏が30歳で部長になった時、海外から日本では当たり前の質問をたくさんされた。例えば、日本はホワイトカラーが偉くて、ブルーカラーが下という文化があるが、なぜなのか? 海外ではそんなところはない。全く違う国の人と話すと、思っても見なかった質問をされ、当たり前のことに問題やイノベーションのヒントが隠れていることに気づく。

 その他にも、「日本のスーパーマーケットは400社もあり、なぜ大手に寡占されないのか?」という当たり前のことを考えてみよう。日本は、都道府県ごとに魚、肉など食材が違う。そして、基本的には地元で取れたものを食べる。魚が食べられるようになったのはここ100年のこと。だから、日本のスーパーマーケットは生鮮食品が中心で、自然と地方ごとに特色のある店舗を運営することになり、数が多くなる。そして生鮮食品ではないジャンルでは大手に卸した方が効率が良く、さらに海外は冷凍食品を買う文化だから店舗は少なくなる、という背景がある。こういった発想は普段の生活からは生まれてこない。
 

自分以外の方にイノベーションを思いついてもらうためにはどうすればいいか?

 さらに、「ダイバーシティを推進するためには、全く日本のことを知らない人を採用するのには限界があるので、外国人になったつもりで日本人の当たり前を疑う訓練をすると良い」と、高岡氏は続けます。


 「そのために、人事評価の2割でイノベーションを評価するようにした(ネスレ日本では社員のイノベーションを表彰する「イノベーションアワード」を開催)。訓練が進み、最初の応募件数は70件だったのに、現在では2500人程度の社員から5000件以上が応募されている。イノベーションアワードのレベルが上がると、出てくる優秀なアイデアはある程度スモールに成功しているので、いきなり投資できる。そして、どんな役職だろうと、即プロジェクトリーダーにし、社長直属にする」

 高岡氏の一番お気に入りの成果は、人気パティシエが監修をした「キットカットショコラトリー」。イノベーションアワードでアイデアが出たもので、それを売れるようにブラッシュアップし、数百億円以上を売り上げ、ついに全世界展開につながった。

  KITKAT Chocolatory | ネスレ キットカット ショコラトリー ブランドサイト

 初めは全員が素人。だからNRPS(「NR」「New Reality(新しい現実)」、「P」は「Problem(問題)」、「S」は「Solution(解決策)」)のフレームワークを浸透させ、推進した。


 参考:ネスレ日本 元社長兼CEOが語る DXによるイノベーション

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