リテールアジェンダ2021レポート #01

【ファミマ 足立光・スケダチ 高広伯彦】 マーケターは、真の「マーケティング」のために、他部門への影響をあきらめてはいけない

 2021年10月、東京都内でリテール領域のマーケティングをテーマにしたカンファレンス「リテールアジェンダ2021」が開催。ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の足立光氏をスピーカーに迎え、スケダチ 代表の高広伯彦氏がモデレーターを務めたキーノート「ファミマのマーケティングの“今”」をレポートします。

10月18日に発表した新プライベートブランド「ファミマル」など、ファミリーマートの新しい戦略には、組織としての強みづくりやマーケティングの再定義があったと言われます。足立氏は何をどのように考えてファミリーマートを牽引しているのか、そして今後何を目指しているのか、その思考を深堀りしました。
 

マーケティングは商売そのものか?


高広 まず、足立さんが考えるマーケティングの定義から教えてください。



足立 私が考えるマーケティングの定語は3つあります。ひとつ目は、さまざまなアクションを起こすことによって、人の心の中を変える、そして結果的に行動を変えるということです。そういった意味では、会社の中で一番マーケティングらしい仕事は「人事」なんです。会社説明を工夫して行って応募者数を増やすことや、社内制度を変えて従業員のモチベーションを上げることなど、実はみなさんが考えているマーケティングと同じ仕組みなんです。

2つ目は、部署や担当の割り振りが明確でない仕事でも、ビジネスのために必要なことは全部やる、というプロデューサー的な役回りをすることです。実際、何か新しい試みをしようとすると、どこの部署の管轄なのか曖昧な仕事なども結構出てきます。それらを全部拾って、きちんと回してあげるプロジェクトマネージャー的な仕事も、マーケティングの重要な要素です。

3つ目は、一発屋では企業として意味がないし再現性も無いので、継続して成功できるような仕組みをつくることです。「ブランド」も「組織づくり」も、成功を継続させるための方法です。

私がファミリーマートに入社して最初に実践したことは、「誰に、何を、提供するか」の再定義です。ファミリーマートは良くも悪くも特徴が薄かったです。

高広 「ファミマって、なんですか?」と、お客さまへ聞いた時に明確な回答が出ないということでしょうか。

足立 はい、明確な答えは出ないと思います。その場所にファミリーマートがあるから行くけれど、あえて選ぶ理由はあまり無い。だからこそ、どんなお客さまにたいして、どのような訴求をしていくか、どんな特徴や「行く理由」をつくり続けるかが、とても重要です。

高広 コンビニは、すべての人がターゲットではないんですか。

足立 もちろんすべての方々がお客さまです。ただ、すべての方がコアターゲットではないですよ。

高広 さきほどの、マーケティングの定義の2つ目でプロデューサー的立場という話がありました。このようなイベントでは、よく企業のマーケティング担当者が「もう広告代理店の時代ではない。プロデューサーになってくれる人が欲しいんだ」と発言されたりしています。

足立 それには少し違和感があって、そもそもプロデュースすること自体が「あなた(マーケティング)の仕事」ですよね。



高広 マーケターが外部からプロデューサーを探そうとするけれども、足立さんの定義でいうと、それは社内の人が担当することになりますか。

足立 はい、プロデューサーは内部にいるべきです。映画のプロデューサーを思い浮かべると分かりやすいのですが、必要な監督を連れてきて、資金調達をしたり、色々と調整をしたりするじゃないですか。それと変わらないことを私はマーケティングとして行っているので、プロデューサーを外部から連れてくる意味が分かりません。断片的な、かつ究極的にはプロジェクトの成功に責任を負わない外部の方に、プロデューサーは担えないし、担ってもらうべきでもない、と思います。

高広 日本ではプロデューサーはどういう仕事かが明確に定義されていないですが、一般的に映画のプロデューサーは、資金集めとキャスティングなどが主な仕事ですよね。マーケターも、それに近いということですか。

足立 はい、なんなら映画のプロデューサーは、どこからどのように公開していくかまで関わっていますからね。

高広 そういう立場だということですね。先程の3つの定義をひと言で表せますか。

足立 「商売」ですね。

高広 マーケティングとは商売であると(笑)。

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