リテールアジェンダ2021レポート #01
【ファミマ 足立光・スケダチ 高広伯彦】 マーケターは、真の「マーケティング」のために、他部門への影響をあきらめてはいけない
マーケティングを実践するうえで、一番重要と考えること
高広 マーケティングは、実際何から始めればいいと思いますか。そもそも「マーケティングって何だろう?」という点をお聞きしたいです。
足立 先ほど3番目の定義で、ビジネスが継続して成功できるような仕組みづくりが大事だという話をしました。マーケティングという仕事のほとんどは、何かしらの数字を伸ばす責任があります。どうしたら数字が伸びるのか、そのための仮説を多く考えて検証していくと、「これは!」というアイデアが出てきます。
私が、ファミリーマートに入社した昨年10月時点で、マーケティングなどをこう変えていこうという仮説がある程度できていて、それをプレゼンできる状態にありました。
高広 最初に何から変えたんですか。
足立 今日は「戦略」を重視するマーケターがお聞きになっているので気がひけるのですが、私は消費者や自分の周りにいる方々がどうすればもっとファミリーマートに来店して、もっと購入してくれるのかというアイデア出しから始めているんです、戦略ではなく。
私自身も私の周りの方も、コンビニに行きます。だから、何をしたらその人たちに響くだろうかというアイデアをたくさん出していきます。
さらに課題に対する改善も考えます。例えば、お客さまとコミュニケーションをとるためのオウンドメディアの掲載コンテンツがバラバラだった点を統合することで、同じメッセージを多くのメディアで同時に伝えれば、より施策の認知が上がるなどの効果が出るだろうと思います。でも、課題の解決だけでは十分ではありません。なので「何を訴求したらいいんだろう」「何をしたらいいんだろう」と、響きそうなアイデアをたくさん出して、それを集約して検証していくと、最終的に「戦略」になります。
高広 それを足立さんは、ひとりでブレスト的にしているんですか。
足立 いえ、毎晩出歩いて(笑)、色んな方々と話して刺激を受けながら考えています。
高広 私もコンサルタントの立場から色んな企業で「中の人」として仕事をしていたりすると、広告代理店や外部のコンサルティング会社の人から、「おたくはここが課題です。だからこの課題を解消しましょう」と言われます。でも、足立さんは、課題解決だけじゃないプラスアルファの妄想力がすごいなと思いました。
足立 課題解決はマイナスをプラスマイナスゼロにするということですよね。それはそれでやらなければいけないことですが、どの方向性でプラスに変換していくかが決まらないと、その解決の努力が無駄になるかもしれない。
高広 医者と患者の関係でいうと、医者は患者を治すところまでは責任をもつけれども、そこから先、より健康になることまでは手を貸してくれない。それは医者の役目ではない、ということと近いですかね。
足立 はい、単に課題解決するぐらいでは、絶対に勝てません。我われファミリーマートの相手は、日本ナンバーワンの小売企業なわけですよ。もちろん差を埋めるという意味では、治すとか改善するということも必要です。でも、それだけでは絶対に追いつかないし勝てないので、どうやったらもっと上にいけるかというアイデアが必要だと思っているんです。