リテールアジェンダ2021レポート #02
「本気で日本一のコンビニを目指す社員」が現れはじめた、ファミマ改革の裏側
ファミリーマートが目指すコンビニ改革
高広 議論が「マーケティングとは?」に寄りすぎているので、毛色を変えた質問をしましょう。足立さんが入社して、「ファミマは、ここが一番変わったんじゃないか」という点を挙げるとすると何がありますか。足立 お客さまから見たファミリーマートが「変わった」と言えるほどの自信が、まだ私にはないです。おかげさまでそれなりに順調ですが、まだイメージが変わったという段階までは到達していないと思うし、あえていうなら「最近、ファミマは元気だな」くらいのイメージでしょうか。
ただ、一番を目指そうと考える社員が増えているような気がします。この半年くらい、前年比日商伸び率では他のコンビニを連続で上回っているんです。「もしかしたら、できるかもしれない」と希望を持つ人が出はじめています。 ファミマはチャレンジャーなんですよ。「2番手だから、このままでいいや」とリスクをとらず、攻める気持ちが無かったら、絶対に変わらないんです。
高広 最初にマーケティングは人事の側面もあると話をされていましたが、人の考えを変えることは大変な仕事ですか。
足立 すごく大変ですよ。マーケティングのとても重要な仕事は、実はインナー・マーケティングなんです。営業部の方がマーケティング部の方向性を信じてくれなければ、これをやろうと積極的に動いてくれませんよね。商品部の方たちも、「これをつくったら面白そうだから、つくりましょう」と言ってくれません。そこがうまく回らないと、何も動かないんです。
社内の雰囲気や社員の気分を変えて、みんなをやる気にさせるのが大変です。でも、社員のやる気が上がると業績が伸びるんですよ。インナー・マーケティングは、小売のように多くの方々が関わる事業では、ビジネスを伸ばしていくうえで、すごく重要な要素だと思います。
高広 海外のいわゆるMBA的な教科書には、エンプロイー・エンゲージメントや数字と業績は連動しますね。
足立 そうです。私はいままで、赤字だったり、他社に負けていたりする会社にしか転職してないんですよ。入社のタイミングでは、社員が「がんばっても何も変わらない」とあきらめています。
でも、がんばることで自分の担当している仕事が成功し、目標達成する施策がどんどん出てくると、私も勝てるかもしれないと思うし、営業もこれはいけるかもしれないと思って、社内の雰囲気が大きく変わってくる。会社が明るくなり、みんなが前向きになって頑張り出すんです。
高広 社内の雰囲気が変わり、がんばろうという意識になるには、小さな成功の積み重ねが大事かと思いました。
足立 まさにその通りです。
高広 小さな成功の積み重ねのなかでも、何を社員に見せると一番反応がありましたか。
足立 売上でしょうか。「こうすれば、成功する」という戦略はつくっても、成果が出なければ誰も信じてくれないし、ついてきません。私は、「アーリー・スモール・ウィン」という表現をしていますが、できるだけ早いタイミングで、小さくても目に見える成果を出していくと、この方向性が正しいとみんなが考え始めてくれます。さらに成功が続いて方向性の正しさが実証され始めると、あとは放っておいても自走できるようになります。
これはなぜかというと、もののつくりかた、どのように売ればいいかを理解できると、自分が担当する商品を成功させたいと思うから、自主的に動くようになるのです。だからこそ、早く成功事例をつくってあげて、それをどういう風に実行したかを共有してあげると、みんなが勝手に真似しだすんです。