リテールアジェンダ2021レポート #03

ファミマ CMO 足立光氏が「マーケターは必要ない」と語る理由


高広 あきらめずにいてほしいという前に、やっぱりマーケティングの4P+Cを知ることが大事な気がしました。

足立 みんな知っていますよ。

高広 いやいや知っているけれど実現していない。4P+Cを知っていて、それを実践することがマーケティングだという考えがないと、あきらめることができないじゃないですか。

足立 自分の権限、自分の仕事ではないと思っちゃうからですね。
 


高広 マーケティングの従事者に対して、これから先マーケターとして生きていく道はあるんでしょうか。

足立 マーケターとして生きていくなら、例えばマーケッティング・リサーチなどのマーケティングの一部の領域でスペシャリストになっていくのか、4P+Cという本来のマーケティングで経営者になっていくのか、その違いだけだと思います。

高広 経営者になってマーケティングを駆使していくことを目指す人と、マーケティングのスペシャリストとして生きる人と、それぞれを目指す人たちに足立さんからひとこと投げかけるとしたらどういう言葉がありますか。

足立 自分や自分の部署に権限がなくても、会社全体を変えることはできます。たとえば、ある広告をつくろうと決めます。いろんな部署がその広告に反対したとしても、その広告がなぜ正しいかを説得して回り、みんなが理解してくれると、会社全体が変わってくるんです。何かの施策を起点に色んな部署、または会社全体を変えていくということ、影響を与えていくということは、ポジションにかかわらず可能だと思います。

 「足立さんはCMOだから(権限があるから)できるんじゃないの?」と思われているかもしれませんが、P&Gという会社では20代後半ぐらいの年齢でブランドマネージャーになるわけです。他部署である営業やサプライチェーンなどにいる方々は優秀で年上ばかりですし、それらの方々に対して自分は何の権限もありません。でも、何かを変えるとか新しい施策を実現するために、そういう人たちを説得して共感を得くようにしていました。ポジションや年齢に関係なく、それは誰でもできると思うからあきらめないでほしい。

高広 マーケティングは社内における、ゲームチェンジャーですか。

足立 はい。でも、大変ですよ(笑)。

高広 大変なことを実現するのが、一番マーケティングのスキルを伸ばすし、ビジネスへの影響も大きいから、そこをがんばれということですね。

足立 難しいことをやり続けないとスキルは伸びていかないし、経験値もたまらない。ロールプレイング・ゲームと同じで、弱い敵を倒しても経験値はたまらないじゃないですか。負けそうになっても、がんばって強い敵を倒してこそ経験値がたまっていくんです。自分が「ちょっと無理かも」と思う仕事をたくさんやっていくと、経験値がどんどんたまるでしょう。

高広 マーケティングの従事者は、社内でいろんな動きをしてロールプレイングゲームのように立ち向かって、それでスキルも実績も上げていくということですか?
 


足立 ゲームでもラスボスは強いほうが面白いですよね。偉い営業の人などに怒られたりすると、「面白い」と思っちゃいます。生きている感じがする。まさに戦場にいる感じで、私はワクワクしちゃうんですよね(笑)。

高広 ロールプレイングゲームをしながら、ワクワクする感覚をマーケティグ従事者が持てばスキルも伸びるし、将来的な幅が広がる。

足立 マーケティングは何かしら目標値があって、それを達成しようとPDCAを回しますよね。それはまさに、人の金でシミュレーション・ゲームをしているようなものです。

 面白いゲームにはまると、2晩でも3晩でも寝ずにできますよね。それはつまり、「没頭」しているということです。でも、同じことをやっていても、「嫌だなあ」と思った瞬間にストレスになります。だから、マーケティングも含む仕事は、「ダメだったらまたやり直せる」ゲームだと思って楽しんだほうがいいです。そうしたら、どんなに大変な仕事でも、楽しく「没頭」して打ち込むことができます。

高広 マーケティングの基本を忠実に実行しながら、足立さんはそれを楽しむ気持ちを日々持ち挑戦し続けていることが分かりました。本日は貴重なお話ありがとうございました。
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