マーケティングアジェンダ東京2021外伝 #01

早稲田大学 長沢教授、ユナイテッドアローズ 藤原氏「ラグジュアリー戦略で消費者心理を支配する」逆張りのマーケティングとは

 

顧客がなかなか買えないようにしろ

 
 7.顧客がなかなか買えないようにしろ について、
×:顧客が買いやすいようにしろ
◯:顧客がなかなか買えないようにしろ
 
 いつでもどこでもすぐ手に入る、ということも大事ですが、待っている時間のワクワクの創出が大事という金言がありました。何ヵ月待ちでなかなか手に入らないとか、そこに行かないと買えないということも効果的です。合わせて13の内容も紹介します。
 
 13.需要を増やすために、時間が経つにつれて価格を引き上げろ

「平均価格を上げ続けると、欲しいと思った時が買い時になる。なぜかというと、買った時よりも価格が高くなることと「自分は目利き」と満足感が得られるが、逆に買った時より安くなると「もう少し待てばよかった」という不満になる。
 
 「あの時買っておけばよかった」と「得られた時の充足感」を生み出す、まさに買われるタイミングをコントロールすることは、レア感の”演出”で面白いな、と感じた内容でした。

 高級腕時計ブランドのリシャール・ミルは、『買ってくれた人ありがとう、買えなかった方は残念でした』と売り切れた広告を出したりもして演出をしています。このレア感の演出は一歩間違えると不満になってしまうのでやりにくさ・難しさはあるのですが、うまくできると満足感がぐっとあがりそうですよね。
 

   

広告の役割は売ることではない→こだわりや物語を伝える

  
 9.広告の役割は売ることではない について、
×:広告の役割は売ること
◯:広告の役割は売ることではない

 広告は売ることではないと長沢教授が語るのは、はじめから機能やラインアップや価格を見せても売れないということです。言い換えると、自身のブランドのこだわりや、物語、つまりラグジュアリーな部分を伝えることを蔑ろにしてはいけないということです。
 
例えば、誌面の全面広告を使って、商品は真ん中にちょこんと一つだけという広告。そもそも売る気がなく、「私たちのブランドを忘れないでちょうだい」という明確なコミュニケーションになっている。

 藤原氏は「イベントポップアップなどでSNSにてユーザーの言葉で盛り上げることを多くやっている」と語ります。これもサービス・商品の機能性/価格ではなく、その先にある豊かな生活を語ってもらい、それが結果広告となることが大事だからです。

 量販店のチラシには、数十もの商品が並んでいます。一方、ラグジュアリーブランドは一つ。どちらが伝わるか、印象に残るかは一目瞭然です。PRする際にも、あれもこれもと伝えてしまって結局何がいいたいのかわからず取り上げてもらえないことが多いのではないでしょうか。とても参考になりますね。

 もちろん、ある程度ニーズが高まった消費者に対して従来型のチラシ・獲得向けの広告を売って儲けることはなんら間違いではないです。なぜなら、欲しい時に提供するのも愛だから、そして結局儲からないと事業は継続しないから。ここは誤解しないようにしましょう。
   

ラグジュアリーが価格を定め、価格はラグジュアリーを定めない→価格が価値を決めるわけではない

   
 12.ラグジュアリーが価格を定め、価格はラグジュアリーを定めない について、
×:顧客が買いたい価格にしろ
◯:ラグジュアリーが価格を定め、価格はラグジュアリーを定めない

 これは価格競争がメインにならないように、売り手至上主義にしろ、ということ。ブランド側が価値を定め、その価値を感じた人が買えばいい。価格が価値を決めるわけではないからです。
 
ラグジュアリーは比較級ではない、最上級がラグジュアリー。
比較級はプレミアム。
また、ラグジュアリーの訳は「贅沢」ではなく「類稀」。すなわち似たようなものがないモノ・コトに対して、価値を感じる。
レクサスはメルセデスから比較されていた。ポルシェは最上級だったから比較されなかった。

 「ここじゃなきゃ、これじゃなきゃだめ」を作る。それが価値を作る。1円安いから、は価値ではないということです。highestというのはもちろん、既存の組み合わせでの類稀感・オリジナリティを出しても良いでしょう。この「類稀」という言葉、大事なキーワードですね。

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