マーケティングアジェンダ2022

昨年は電通がグランプリ 「ヤング・クリエイティブ・アジェンダ」次回開催が決定

 

「タバコ=悪」というネガティブイメージを覆す課題に挑戦


 なぜJTは今回の課題を設定したのでしょうか。タバコは好きと嫌いが明確に分かれる商品であり、どこか人間臭さがあるものです。そんなタバコの日本の喫煙状況は、現在17.8%が喫煙者です。喫煙者の割合が47%であった1965年のピークからどんどんとタバコ産業は右肩下がりになっていますが、度重なる増税によりたばこ税は2兆円にも及びます。 

 2020年4月には改正健康増進法が施行され、職場や飲食店(屋内)での喫煙がほぼ不可能になり喫煙者が外に追いやられ、屋外喫煙所も喫煙者で溢れています。煙やにおいで一般の方からクレームがあり屋外喫煙所も撤去されている状況。健康意識の高まりで20年前くらいから小中学校の道徳教育では「タバコ=悪」と教えられ、イメージ醸成教育がされています。法改正や教育などの外部環境の変化により、日本人は喫煙の機会が急激に減少しているのが現状です。

 このような現状の中、JTでは「タバコを吸う方と吸わない方の共存社会」を実現するための取り組みとしてタバコを吸う人は、吸わない人に配慮する。吸わない人は吸う人への理解許容をするという共存の考え方をビジョンとして掲げ、タバコを選択する生活が尊重される豊かな社会の実現をすべくさまざまな取り組みを実施しました。

 テレビCMでは、喫煙者と非喫煙者がお互い認め合うメッセージを放映し、Web広告では、屋外喫煙所の必要性の訴求やマナーの啓発活動を行いました。また加熱式タバコ(プルームシリーズ)の発売により、周りに迷惑をかけない共存社会を実現する商品として訴求も行っていました。

 一方でJTの課題は、改正健康増進法が施行されタバコを吸える場所が減少傾向にあり、物理的な共存が不可能な状況になっていることです。共存社会を目指すためにも、喫煙スペースを守り、吸う人への共感が必要になってくると考えます。また、タバコを吸うシーンが世の中から消えてきているため、社会的にもタバコを吸うことが「悪」になってしまい、肩身の狭い思いをしている喫煙者に対して応援メッセージのコミュニケーションを取ることができていない課題がありました。

 そこでヤング・クリエイティブ・アジェンダの企画を通し、クリエイターにはタバコ、喫煙には一定の価値があり社会に存在してもいいのでは、という世論を形成する新しいコミュニケーションのテーマとして、「タバコの価値向上に向けたコミュニケーション」を設定しました。

 このゴールは、喫煙者と非喫煙者に対してそれぞれ異なるコミュニケーションが必要になりました。喫煙者に対しては、タバコの価値を再認識してもらうこと。非喫煙者に対しては、タバコは悪ではなく、世の中にあってもいい存在だと理解許容してもらうことです。クリエイターの方には、コミュニケーションコンセプト、コミュニケーション全体像を考えていただくことが求められる課題でした。
 

電通とは異なる視点で、優秀賞に選ばれたADKとライトパブリシティ


 残念ながら、グランプリに輝くことはできなかったですが、優秀賞の2社を紹介します。

 1社目は、ADKクリエイティブ・ワンです。同チームは、「喫縁ドナー」をテーマとして掲げて企画を制作しました。紙巻きタバコの喫煙1回分でDNA検査に必要な唾液量が採取できることを活用し、全国の喫煙者に骨髄ばんくのドナー登録の場を提供し、喫煙者が感謝する企画をつくることです。DNA検査から白血球の型が分かるので、全国の喫煙所で吸い殻回収とドナー登録キャンペーンを実施し、収集したサンプルを日本骨髄バンクと連携し、ドナー登録者と患者をマッチングさせ、移植手術につなげられるようにする取り組みです。

 このキャンペーンにより、タバコが命を救うきっかけになったことを各種メディアで発信、拡散することで、喫煙者はタバコを吸うことが命を助けることにつながるとポジティブに認識させ、非喫煙者には命をつなぐきっかけになると喫煙者への理解を得られるようにするアイデアを発表しました。

 2社目は、ライトパブリシティです。同チームでは、「売っているのは『一服の価値』」をテーマとして掲げ課題を制作しました。発表の内容は、タバコを吸う人が味わっている「一服の価値」を向上することです。本来一服はタバコだけに当てはまるものではなく、いい休憩を取ればいい仕事につながるが、日本人は休むことにネガティブな考えを持っている。そのため、タバコを吸わない人も「一服の喜びを体感」できたら、日本はもっと一服文化に優しくなれると考え、一服の価値をもっと多くの人、非喫煙者にも伝えていくのがJTの使命であることを発表しました。

 具体的には、「一服を、分け合おう、I PPUKU SHARE」と題して、吸う人と吸わない人が一服の時間をシェアできる自販機を提案しました。別々の場所にある自販機でリアルタイムに繋がれ「一服をシェアできる」。吸う人には1本のタバコ、吸わない人には1杯のコーヒーが無料提供され、分煙を徹底しながら人がつながる場所を提供することです。1月29日に一服の日を設定し、自販機設置の推進や一服を通して日本中の人をつなげることを提案しました。

 ワンパクの阿部さんは実際に開催してみて、「課題告知からプレゼンまで2日間というタイトな日程の中、思っていた以上に参加した方々が熱量を持って取り組んでくれたのがとても印象的でした。各々のアイデアやアウトプットも2日間で考えたとは思えないようなものも多く、若い方々の思考の深さや柔らかさを感じた提案も多かったです。審査員の方々も事業会社の現役のマーケターの方々だったので、参加者はいい意味で緊張感も持てたのではないかと思います」と、感想を述べています。


 

マーケティングアジェンダ2022では大手テーマパークが出題!


 昨年同様、マーケティングアジェンダ2022でもヤング・クリエイティブ・アジェンダを開催します。今年は大手テーマパークから課題が出題される予定、各企業のクリエイターがさまざまなアイデアや施策を提案し、マーケターとの出会いの場を創出します。

 ワンパクの阿部さんは今年の開催に関して、「マーケティングアジェンダの参加社からいろいろな声をいただきましたが、この取り組み自体はとても評価されたと感じています。日程・時間的な制約が多い中ですが、もっと面白くできる余白も残っています。今年も若いクリエイターの方々には『参加してよかった!』、マーケターの方々には『クリエイターってすごいね!』と思ってもらえるような内容に更にブラッシュアップしていきたいと思いますのでお楽しみに!」と、語っています。

 今年の マーケティングアジェンダは、通常のプログラムに加えて2度目のヤング・クリエイティブ・アジェンダも非常に注目のプログラムのひとつです。是非、あなたも「マーケティングアジェンダ2022」に参加し、ビジネスマッチングと最新のクリエイティブに触れてみてはいかがでしょうか?

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