人間理解・インサイト実践アカデミー #01

なぜマーケティングに人間理解が必要なのか? 【富永朋信氏×鹿毛康司氏 スペシャル対談】

  ナノベーションの教育プログラムから、新たな塾「人間理解・インサイト実践アカデミー」が6月25日開講します。開講にあたり、講師を務めるPreferred Networks執行役員 最高マーケティング責任者の富永朋信氏、かげこうじ事務所代表 マーケター/クリエイティブディレクターの鹿毛康司氏による対談が実現しました。人間理解・インサイトのスペシャリストである2人からマーケティングにおける人間理解とインサイトの重要性など、ここでしか聞くことのできない話を伺いました。

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マーケティング自動化の罠とは


――人間理解・インサイト実践アカデミーの開講にあたり多くの方から「なぜマーケターに人間理解が必要なのですか?」という質問を受けます。富永氏と鹿毛氏は、どのようにお考えですか。

富永 ここ最近、マーケティング領域でもボタンをひとつ押したら自動で分析結果がわかるような便利なツールやサービスが多く出てきています。そのため、ともすると「マーケティングは、エクセルに式を入れたら、勝手に答えが出てくるようなもの」だと思っている人がいるのかもしれません。

 しかし、マーケティングの本質は便利なツールで可能になるようなことではなく、人間理解に基づいて「仮説・施策構築・実施・検証」を繰り返すことにあると考えています。勝利の方程式があり、その式に自社を当てはめることで正解が導き出されるという…そんなアルゴリズムは、マーケティングには存在しないんです。

鹿毛 たしかにそうですね。人間理解の重要性を分かっていない人は、世の中に対して自分はどう役立つか大きな志をもって入社したのかもしれませんが、実際の仕事がツールに数字を入れることばかりになったりすると、それがマーケティングだと思い込んでしまっているんだと思います。

――お二人とも厳しいですね。

富永 人間理解とマーケティングの関連を筋道立てて説明してみます。マーケティングとは、その前提として、自社の商品やサービスをより多くの人に買ってもらいたいわけですよね。そうであるならば、マーケターは人間がなぜものを買うのか、きちんと理解し、そこに寄り添った考え方をしなければならない。私は商品やサービスが売れる理由には、「なんとなく買う」「良いから買う」「好きだから買う」の3種類があると思います。

 まず「なんとなく買う」は、コンビニエンスストアでドリンク棚の前に立ち、商品を手に取る。それは無意識に取っているように見えて、実はその商品を見たことがあるか、聞いたことがあるから手にしているわけです。では、無意識に選ばれる状態をつくるには、どうすればいいかという疑問が生まれてきます。

 一方で、「良いから買う」は、他の商品と比較して良いわけで、買う人には何の商品と比較するのか、どこが良いのかを考えて選んでもらう必要があります。

 そして、「好きだから買う」は、もう一段難しくて、商品・サービスに対して感情が発生しなければいけないので、感情が発生する仕掛けが必要になります。

 そのような購買意欲を生み出すために、「自社の商品を聞いたことがある状態」や「良いと思ってもらえる状態」「好きだと思ってもらう状態」をつくり出すことがポイントになります。

 商品・サービスに対して良いと感情を抱くことは、「人間の心の動き」です。自社商品がどのように良いと思って欲しいのか、自社商品をどのように好いて欲しいのか、その設計図を描くこと、そしてどのようにお客さまに働きかけたら、そのように感じてもらえるかを徹底的にお客さまに感情移入して考えること。それらをベースに施策をつくらないと効果的なマ−ケティングはできません。つまり、人間理解が必要になるのです。
 
株式会社Preferred Networks 執行役員 最高マーケティング責任者
富永 朋信氏

鹿毛 それこそがマーケティングですよね。一方で、商品やコミュニケーションを開発するときに「お客さまのことを考えよう」という問いを立てても、この商品のどこがよいか、この商品を買う人はどういう人か、という属性ばかりをみて、顧客その人自身、すなわち人間を見落としているケースがあります。また、「顧客行動を抽出して抽象化することが、マーケティングの勝利の方程式だ」というような考え方が横行するのを見かけることもしばしばです。

 今、富永さんが話した3つの消費行動をしているのは人間なわけです。自社の商品・サービスのことを一生懸命に研究するのは当たり前の話ですが、マーケターにとって一番重要なことは「人間を研究すること」なんです。「なぜ人間理解を学ばなければいけないの?」という疑問を持ったということは、成長への大きなチャンスです。ぜひ人間理解を共に学びましょう。

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