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NewsPicksユーザーと青山商事が手がけた「共創」。就活における課題改善と老舗企業の変革
2022/08/01
- ブランド価値,
- 市場創造,
- 事業開発,
- ファンマーケティング,
老舗の企業やブランドでは、世間の認知度が高いにもかかわらず、購買意欲が旺盛な若年層の顧客が増えず、売上増に結びつかないといった課題を抱えているケースが多くあります。紳士服製造・販売大手の「青山商事」と、展開するスーツブランド「洋服の青山」もそのひとつでした。そうした状況からの打開策として取り組んだ青山商事とNewsPicksの共創コミュニティの取り組みを追った「マーケティングアジェンダ2022(2022年5月25~28日開催)」のセッションをレポートします。
競合よりも顧客に。20~40代のNewsPicksユーザーと共創していく
青山商事が創業した1964年、スーツは1着20万円ほどの高級品で、百貨店に行かなければ手に入らないものでした。しかし、現在は一世帯当たりのスーツに対する支出金額は、年間で2000円以下です。「洋服の青山」の平均購入額が約2万円であることから、スーツの購入頻度は数字上10年に1回程度になってしまっていることは大きな課題です。実際、青山商事の売り上げも2015年から徐々に下降し、2020年のコロナ禍が追い打ちとなり、減少しているという現状があります。
また、「洋服の青山」における現在の主要顧客は50代以上のシニア層で、ビジネスパーソンの中心層である20~40代が、男女ともに少ないという現状があります。
このような状況を改善するには、「顧客との向き合い方を改めて見つめ直し、顧客が本当に求めている商品やサービスとは何かを徹底的に探る必要があります」と、青山商事リブランディング推進室副室長の平松葉月氏は語ります。
そこで青山商事は、20~40代のビジネスパーソンがメインユーザーのソーシャル経済メディア「NewsPicks」の法人向けマーケティング支援事業「NewsPicks Creations」とのコラボレーションを模索しました。NewsPicksユーザーとともにブランドづくりやものづくりを行うことで、顧客に向き合い、「洋服の青山」の新しい価値を生み出していくことを目指したのです。
“ファーストスーツ”体験を見直す。ビジネスウェア3.0を定義する
そうして2020年4月に生まれたのが、業界・企業ではなくビジネスパーソンが主導してブランドをつくる共創コミュニティ「シン・シゴト服ラボ」です。掲げたコミュニティのミッションは、「ビジネスウェア3.0を定義する」です。
「ビジネスウェア1.0」は、かつてビジネスパーソンが一様に着用していた白シャツとネクタイ。まさに洋服の青山が成長を遂げた高度成長期を象徴するものです。
「ビジネスウェア2.0」は、ビジネスカジュアルやオフィスカジュアルなど、地球温暖化の影響を受け、政府が真夏や真冬の室内温度設定を緩やかにするために、服装のカジュアル化を奨励したことを機に生まれました。
そして今回の「ビジネスウェア3.0」は、コロナ禍を経て働き方や働く場所が多様化する中で、新たなスタイルをビジネスパーソンと共に模索することです。
平松氏は、「これまでは、みんながスーツを着ているから自分もスーツを着る。政府が推奨しているからカジュアルな服を着るというように、ビジネスパーソンが自分たちで服装を決めることはありませんでした。でも、ビジネスウェア3.0では、『自分の着る服は自分たちで考えていこう』という意味を込めています」と言います。
これまでに「シン・シゴト服ラボ」が実施したプロジェクトは主に3つです。
1つ目は、洋服の青山の店舗スペースに併設されたシェアオフィス「BeSmart(ビー・スマート)」を活用したプロジェクトです。コミュニティメンバーのアイデアを生かして、オンラインミーティングなどで自分の印象をよく見せられるようにリングライトや高画質カメラなどを用意した「WEB映え1UPルーム」と、仕事に集中するための工夫を徹底した「究極の集中部屋」をつくりました。それによって空きも目立っていたシェアオフィスの個室が、予約で埋まるようになりました。
2つ目は、テレワーカーに向けた商品開発プロジェクトです。テレワーカーのための服をテレワーカー自身がオンライン上で企画し、クラウドファンディングに出品しました。
そして現在取り組んでいる3つ目のプロジェクトは、服装に悩まない就職活動の実現を目指す「#きがえよう就活」です。近年は就活の面接の際に「服装自由」と記載している企業が多くありますが、就活生にアンケートしたところ、その8割が「本当に自由な服を着ていいのか」「普段どおりの私服でいいのか」など、何を着るべきかに悩んだ経験があると回答したのです。また、服装よりも、入社する企業が自分に合うかで悩みたいという本質的な課題感も見えてきました。
一方で、企業の採用担当者にも同じようにアンケートをすると、「就活生が服装自由という条件に悩んでいる」と感じている人が7割以上にも及ぶ結果になりました。また、服装自由と案内しても、就活生のほぼ全員がスーツで来るという実情もありました。
※アンケート詳細に関しては、こちら
「『洋服の青山』はリクルートスーツで一定以上の売上を上げていますが、「ファーストスーツ」(一着目のスーツ)である就活時のスーツ体験が良くない記憶になってしまうと、その後の人生でスーツを着る機会が減ってしまうと思います。その課題をビジネスパーソンや就活生と一緒に解決していけたら、もっとよいスーツ体験やより良い社会になると思い、このプロジェクトを立ち上げました」と平松氏は語ります。
社内の人材、プロジェクトを通じて視座が高まった
「マーケティングアジェンダ2022(2022年5月25~28日開催)」のセッションでは、「老舗企業が『共創』を通じて得られるものとは何か」「なぜNewsPicksユーザーは共創に関わるのか」この2点について話しました。
NewsPicks Creations事業責任者を担う纓田和隆氏は、「経済・社会が変わり続けている一方で、『見え方』『捉えられ方』が老舗企業は固定化、定着化してしまっていることが課題としてあり、その課題に対してアプローチしたのが『共創』である」と、こうした取り組みの意義について語りました。
「シン・シゴト服ラボ」のこれまでの2年間の「共創」から得られた価値について、平松氏は「商品やサービスなど形のあるものはもちろんですが、それ以外の部分で思いがけない価値が得られました」と語ります。
青山商事はコミュニティの責任者であるコミュニティマネージャーを「洋服の青山」でしか働いたことのない同社プロパーの人材に任せました。そうすることにより、「洋服の青山」の内側から外側に向かって共創するという構図をつくりだし、内側から世の中とつながっていくことで時代に取り残されないブランドに変えようという狙いです。
実際、活動を通してプロパー人材の視座が驚くほど高まったと言います。さらに、社内を動かすにあたって、巻き込んでいく部署がどんどんと増えました。NewsPicksユーザーとして「シン・シゴト服ラボ」に参加している、就職活動サイト運営会社ワンキャリア 経営企画部 Evangelistの寺口浩大氏も、その変化を目の当たりにしたと話します。
「僕たちコミュニティの参加者は、たとえ青山商事の人に嫌われたとしても給料や評価が下がるわけではないため、思ったことを素直に口にすることができます。コミュニティマネージャーの方は最初すごく遠慮がちで、正直なところリーダーシップも感じられませんでした。しかし彼女の人柄の良さにメンバーも応援したいという気持ちが芽生えて、彼女と一緒にどうすればこのコミュニティがうまくいくかを考え出しました。その結果、彼女の表情や佇まい、スキルなどにも少しずつ変化が訪れ、今では見違えるように成長したなと感じています」と語ります。