マーケティングアジェンダ2022 レポート #01

元ユニ・チャーム・木村幸広氏が語る、インドで見つけた消費者の「自我」と「3人の消費者」とは【マーケティングアジェンダ2022レポート第1回】

 

現場に足を運び、「3人の消費者」の自我を探る


木村 ここから本題に入っていきますが、テーマである「消費者の『??』を追求せよ~消費者視点って何をみていますか?~」の「??」に入る言葉について、私は元P&Gで現在はクー・マーケティング・カンパニー 代表取締役の音部大輔さんが提唱されている「自我」だと考えています。

尾澤 自我ですか? マーケティング視点で考え直すと、インサイトという言葉にも置き換えられると思うのですが、あくまでも消費者の自我という認識で合っていますか?

木村 はい、「私は誰ですか?」ということに対する答えですね。よく我々マーケターは、消費者ひとりのペルソナとブランドが1対1の関係を持つようなイメージを持つと思います。しかし、それは幻想です。

消費者の自我を探るためには、例えば、「3人の消費者」について考えるべきです。これは「3人のお客さまの声を聞きましょう」ということではありません。過去にインドで、ベビー用紙オムツの使用促進の啓発活動をしていたときのエピソードを元に説明します。

当時、インドの家庭を訪問して市場調査をしていた時、『育児をしている自分にすごく幸せを感じる』とお母さんが話してくれました。立派な話だなと思ったのですが、お母さんの目を見て、どこか違和感を感じました。ふと振り返ると、後ろに姑さんがいたんです。

そのときのお母さんの話は、母としての意見なのか、妻としての意見なのか、それとも主婦としての意見のどれでしょうか。この場合、「母」「妻」「主婦」として、1人の中に3人の自分がいるということですよね。

尾澤 なるほど、とても興味深い話ですね。マーケティング活動するときに、現場を観察することが大事だとよく聞きます。でも、木村さんは、消費者が言うことをそのまま聞くのではなく、その人の中の「どの人格の、どの役割が話しているのか」が大事だと気づかれたことが素晴らしいですよね。その視点は、どういう活動の中で培われたものなのでしょうか?
   
対談中の尾澤氏(左)と木村氏(右)

木村 そこに住む人の生活をまず自分自身がしっかり経験することです。現場に自分がいたことで違和感を感じられたことがなにより大きかったのかなと思います。

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