マーケティングアジェンダ2022 レポート #02

グローバルマーケティングで成功する三種の神器とは、元ユニ・チャーム・木村幸広氏が解説【マーケティングアジェンダ2022レポート第1回】

前回の記事:
元ユニ・チャーム・木村幸広氏が語る、インドで見つけた消費者の「自我」と「3人の消費者」とは【マーケティングアジェンダ2022レポート第1回】
  マーケターが常に意識しなければならない「消費者視点」は、1人に対して3人の消費者が存在することを前回の記事で解説しました。今回は、その後半で3人の消費者だけではなく環境や文化によって4人目の消費者もいることを忘れてはいけない、新たな消費者の顔と日本市場が縮小している状況で世界に対してビジネスを拡大していかなければいけない時代のグローバルマーケティング成功する秘訣は何か。元ユニ・チャーム グローバル・マーケティング・オフィサーの木村幸広氏をスピーカーに迎え、コアラスリープジャパン マーケティングディレクターの尾澤恭子氏がモデレーターを務めた「マーケティングアジェンダ2022」のキーノート「消費者の『??』を追求せよ~消費者視点って何をみていますか?~」の後半をレポートします。
 

インドで見つけた新たな4人目の消費者の顔


木村 インドでは、女性が経済的自立を実現するなかで、さきほどの「母」「妻」「主婦」に続いて、4人目の自我が生まれています。ユニ・チャームはインドで生理用品を普及する活動を実施しています。

インドの生理用品の使用率はまだまだ低い状況です。女性が自分のための生理用品を購入するためには経済的な自立が必要です。



そこで実施したプロジェクトが「Jagriti」です。田舎に住む女性にユニ・チャームから商品を購入してもらい、それぞれの村で販売してもらうというプロジェクトです。その女性が生理のケアの仕方を同じ女性に教育し、商品を販売することで自身も利益が得られます。
 
経済的に自立したイメージを持つことが、実はとても重要なポイントです。自分たちで給料をもらい生活していくと、例えば、「化粧品を買おうかな?」と少しずつ自分に対して気を使いはじめるんです。特に使い捨て商品の普及では、商品の良さを伝えるだけでは不十分で、やっぱり女性自身が自分のためにお金を投資しようという環境をつくらなければいけません。

尾澤 なるほど。単純に「高くて買えないから値下げをする」のではなく、「どうして買えないのか」を掘り下げた結果、4つ目の消費者としての顔を作ることで、買えるように支援をしていったわけですね。新しく市場をつくるために、一部だけを考えるのではなく、市場が回るように全体を見るというマーケティングを実践されているんですね。
 

まずは小さくはじめる


尾澤 ここまでの木村さんの話がとても勉強になる一方で、「やはりユニ・チャームだから、こういう活動や時間的な余裕が許されたのではないか?」という疑問が残ってしまいます。実際にベンチャー企業や組織能力などのリソースが少ない会社が実行するときは、どこが肝になるかアドバイスをお願いします。

木村 「こんな啓発活動がビジネスになるの?」という話ですよね。その問いは、実は私自身も悩んできたことであります。では、このインドという大きな国で、それもリターンも不明確なチャレンジに対して、どう取り組んだか。最終的に我々が実行したことは、今まで話したマーケティングはすべて実施エリアを小さく絞って開始しました。
  
木村グローバルマーケティング合同会社 代表
アルダ株式会社 CMO(元ユニ・チャーム 常務執行役員 グローバルマーケティングコミュニケーション本部長)
木村 幸広氏

市場をつくるには、まずはお客さんの本当の心理をインプットする。それによって生まれたマーケティングのリターンがその場ですぐ得られるように、とにかく小さくはじめる。リターンとして取れるようには、エリアを絞るなど、しっかり設計していかないといけない。

グローバルマーケティングに携わってきてわかったことは、成功には三種の神器があって、その中には必要条件と十分条件があるなと考えます。1つ目は「消費者の隠れたニーズを提起する唯一の商品・サービス」。2つ目が「消費者が買いたいところ・瞬間で買いたくなる場作り=営業力」。3つ目は「消費者自身が隠れたニーズに気づく、シャープで新鮮なコミュニケーション」です。3つ目のコミュニケーションについては、広告やパッケージの作り方の話なので、どちらかというと十分条件に分類します。

商品やサービスが良くて、それがしっかり手に届くところにある状態を作れないと、何をやってもうまくいかないと思うんですよ。それと営業力で、これは本当に大切です。そうなると、やっぱり小さなところからはじめないとできないんですよね。

尾澤 確かインドでは1枚入りのおむつの人気があるという話を木村さんから伺いました。所得が低いため、まとめて購入するよりもその都度、購入したいという社会的背景や、働くお母さんがオムツを出先で買いたいというニーズを捉えたものですよね。そのような発想ができるのは、消費者の生活をしっかり見ているからだと思いました。
     
コアラスリープジャパン マーケティングディレクター
尾澤 恭子氏

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