マーケティングアジェンダ2022 レポート #03

カインズ 最高イノベーション責任者が語る「ホームセンターのDX化」が成功した戦略【マーケティングアジェンダ2022レポート第2回】

 

「めだまオヤジ大作戦」というユニークな顧客戦略とは?


 次に、池照氏はカインズの顧客戦略について話を展開します。

「顧客戦略のためにまず分かりやすいチャートを作成しました。カインズの認知度は30%程度で7割程度の人は知りません。当然、お店を知らない人が商品を買ってくれるわけがないので、多くの人に認知してもらうためにオウンドメディアの『となりのカインズさん』を立ち上げました」

 さらに、池照氏は「認知をしてもらえると、次にWeb広告が効いてきました。そして、新規顧客に対してアプリ会員への入会を促し、既存の顧客でまだ会員ではない人に対しても店舗スタッフが入会を促すようにしました。そうすると、顧客一人ひとりの購買データなどからどういう顧客かが明解に見えてくるため、マーケティングオートメーションツールを活用して顧客に合わせたアプローチができるようになりました」と続けます。

 この話を踏まえて、モデレーターの風口氏は、現代のマーケティングについて「人を動かす、心を動かすことがマーケターの仕事だと言う人がたくさんいます。その実現のために、顧客に大きな影響を与える社員や店舗スタッフなどの協力を得ると同時に、購買データからマーケティングオートメーションを活用してアプローチしていくことが大事ですね」と述べました。
    
日本アイ・ビー・エム チーフ・マーケティング・オフィサー 執行役員
風口 悦子氏

 池照氏は「私がDXに取り組む前からマーケティングオートメーションを活用していましたが、リーチできていたのは顧客全体の0.7%程度でした。マーケティングチームがいくら頑張っても、そもそもの母数が少ないため、ほぼ機能していない状態だったわけです。これがアプリ会員を増やそうと思ったきっかけでした」と言います。

 風口氏は「マーケティングにおいてどこに何が効くのかを考えるのはセオリーだと思いますが、全部を数値化したチャートをつくり、その経緯を見ながら改善していくというのはすごく参考になりました。具体的な取り組みについて、もう少し話を聞かせてください」と投げかけます。
  
めだまオヤジ大作戦

 池照氏は「うちの戦略にはふざけた名前が多くて、これは『めだまオヤジ大作戦』です(笑)。資料の通り、商圏内か商圏外か、会員か非会員か、という顧客の分布をチャート化したものになります。このオレンジ色のところはデジタル会員で、チラシを配るよりもWeb広告を出すよりも圧倒的に経済合理性が高いです。お金をかけ続ける施策は負担が大きいため、効果があるアプローチはもちろんですが、同時にコストを抑えられる方法を考える必要があります。これをもとにどこに投資するべきか、判断しました」と述べました。

 風口氏は、「チラシの商圏を考慮したときに、デジタル化すればその効果は下がるかなと思ったのですが、効率やコストを考えると、今のこのオレンジ色の部分が戦略のところで、チラシ商圏内外からデジタル会員を広げていくことが重要なKPIの一つになっていますか」と聞きました。

 それに対して、池照氏は「そうですね、コストをかけ続けることは辛いですよね。媒体によって効果が違うと思うので、媒体を組み合わせて最も低コストで実践できる方法が何かを模索しているのが、『めだまオヤジ大作戦』ですね」と話しました。

※後半に続く
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