マーケティングアジェンダ2022 レポート #04

カインズがIT小売企業へ変貌できた「アメとムチ理論」【マーケティングアジェンダ2022レポート第2回】

 

IT小売企業へ向けて4つの顧客体験施策


 セッションの終盤では、「消費者を理解するためには?顧客体験をどう提供していくのか?」という視点で話が展開されました。

 池照氏は「デジタルを活用し、何をお客さまに提供していくのか?、冒頭で話した通りデジタル戦略の目標としてお客さまの煩わしさを解消する、心にぐっと響くような体験をつくることをお題目に挙げています。そこで4つの顧客体験施策を考えました」と説明しました。

カインズのデジタル戦略

1.    Stress free(ストレスフリー)
お客さまが買い物をするとき、商品をカゴに入れてレジに持っていき、店員が商品をまた別のカゴに入れ、最後に袋に移して帰る。この過程は、昔からしてきたことだが、煩わしい作業になる。また、商品がどの棚にあるか分からなければ、店内を歩き回り探すこともありる。こうした「買い物の煩わしさ=ストレスをなくしていこう」という方針になる。

2.    Personalize(パーソナライズ)
デジタルを活用して、一人ひとりの今、欲しいものに寄り添っていこうという方針。そのために、お客さまのスマートフォンにアプリを入れてもらい、デジタル会員を増やす。

3.    Emotional(エモーショナル)
オウンドメディアの「となりのカインズさん」を中心に、商品の購入だけではない提案をしていく。暮らしの中でのさまざまなアイデアや毎日がちょっと楽しくなる体験を創造する。

4.    Community(コミュニティ)
お店で買うものだけがすべてではない。「となりのカインズさん」を中心にコミュニティをつくっていく。

 この4つの顧客体験施策を聞き、風口氏は「顧客体験の中でも、やはりどのようにビジネスに繋げていくかが考えられていますね。大袈裟な話、100万人の営業マンがいれば100万人の相手をすることができますが、現実的にできません。デジタルは、そうした課題を解決に近づけてくれる素晴らしいツールのひとつです」と述べました。
  
対談中の風口氏(左)と池照氏(右)

 続けて池照氏も「この顧客体験施策の中にも経済合理性があり、ひとつの施策に対して、いかにコストを下げて継続的に行なっていくことができるか?という考え方はすごく大事になると思います」と話しました。

 最後に風口氏は「池照さんが共通して伝えていたことは、サービスをお金の観点=PLできちんと考えるということです。そして、それを経営陣だけではなく、社員全員が共通認識として持ち、何をどう実現していくために戦略があるのかを理解することです。つまり、社員一人ひとりがカインズのブランドであり、お客さまに対する重要なメディアとしての役割を果たしていました」と述べました。

 社員が自分が携わっている事業のメカニズム、何で儲かっているのかを理解している会社は多くはありません。カインズ流の顧客主義DXからは、DX推進に社員のPL理解が必要なことが見えてきます。

他にもマーケティングアジェンダ2022のレポート記事を公開予定です。
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