ネプラス・ユー大阪外伝 #01

マーケティングの民主化による「変わるもの、変わらないもの」 【ネプラス・ユー大阪2022レポート外伝 第1回】

 

(2)マーケティングの参加者が多様化し、顧客の支持や知識がマーケティングの源泉に


 次に高広氏が2つ目のマーケティングの民主化の視点、マーケティングに参加者の多様化と顧客の支持といった点について深堀りをしました。
   
スケダチ 代表
高広 伯彦氏
 「マーケティング研究の中でこの数年ずっと注目され続けているものに『サービス・ドミナント・ロジック』というのがあります。

 従来のマーケティングは、モノの中に企業の知識や知恵をもって生み出された「価値」が内在していると考えられてきました。その価値をお金なりなんなりで、お客さんは購入する。つまり、モノの価値と同等の価値のあるお金で交換する。これを「交換価値 Value-in-Exchange」と言い、モノ中心思考が支配している状態を「グッズ・ドミナント・ロジック」と呼びます。一方で、価値というがモノに予め内在しているものではなく、それを使う人々との間で「共創」されるという考え方をするのが「サービス・ドミナント・ロジック」という考え方だということです。

 「グッズ・ドミナント・ロジック」が「交換価値」なのに対し、「サービス・ドミナント・ロジック」では「使用価値 Value-in-Use」「文脈価値 Value-in-Context」という見方がなされます。
ここで高広氏は我々にも馴染みのある商品を例にして説明をします。お茶やコーヒーなどを温かい状態でキープできる保温ボトルを例に考えると、その保温ボトルが価値を発揮するのは、それを買ったお客さんが温かいものをその中に入れて使用したときであり、店頭に並んでるときや、それを買ったときには、「温かい飲み物を暖かくキープする」という価値は生まれてすらいません。

 「サービス・ドミナント・ロジック」はここに注目しており、保温できるボトルを企画し、製造し、販売することができるのは、企業側のスキルやナレッジといった資産の賜であり、また、飲み物を保温したいという状況やそれを作って入れるという行為は、お客さん側のスキル・知識といった資産によって行われると考えるようです。そこで、「サービス・ドミナント・ロジック」では、企業とお客さんは、スキルや知識といった「資産」を交換しあっているのであり、それがぶつかり合うところに価値が発生していると考えています。そのため、価値とは一方的に企業から提供されるものではなく、企業とお客さんの間で「共に創造される」、つまり「共創」されるものだと分かります。
 



 しばしば、「お客さんの声を反映して作りました」というのがありますが、それは「共創 co-creation 」ではなく、「協働 co-production 」だと言うそうです。「共創」というのは、企業とお客さんが互いに知識などの資産を交換することで価値を生み出すことであり、つまりお客さんというのは昔から常にマーケティングの参加者だった、というふうに高広氏は話します。「モノ消費からコト消費へと言われているが、サービス・ドミナント・ロジックの視点では、モノ消費と言われてるものも実は本質的にはコト消費。加えて言うなら、消費というよりも、利用・活用という言葉のほうがふさわしい。そうされることによって価値が発生すると考えるので。」
 こうした「サービス・ドミナント・ロジック」の話に加え、Google の検索連動型広告が、ユーザーのクリック率で表示のランキングが上がらない仕組みになっており、それは「ユーザーの支持」によるマーケティングだとして、すでに以前から実現しているという話も出ました。
 

ニーズはそもそもある、ニーズは作れない。ウォンツを作って需要をつくる


 続けて、田部氏は「よくマーケティングの様々なシーンで『いかにニーズをつくるか』と語られますが、そもそもニーズはつくれないということを改めて意識しなければなりません」と話します。

 ニーズはあくまでも、本来の人間が持つ「欲求≒目的」であり、潜在的に必要としていることです。それを解決するのが「ウォンツ≒手段」になります。ただ、いつしかこの手段の提供自体が顧客のニーズそのものであると捉えられてしまい、商品をそのまま訴求してしまっている企業が多いのが実態です。さらに、田部氏は、次のように整理します。

Who:対象顧客
Insight:インサイト(ニーズ・ウォンツから考え、抱える不満や課題を発掘)
What:選ばれる理由
Value:顧客が受け取る価値    
 

 田部氏いわく、WhoやWhatが大事だと言われているが、まだまだ企業が一方的に顧客や価値を決めるている場合が多い、大切なのは顧客がどのようなインサイトを抱えていて、そこにどのような言語化できていないニーズやウォンツがあるかを見極めることだと指摘しました。さらに、Whatは単なる便益と独自性ではなく、顧客が受け取るValue(価値)に変換し、更新し続けないといけません。
ここが大事なポイントになります。

 また、高広氏からは「Value Proposition(バリュー・プロポジション)が使われることがあるけれども・・・」と、言葉の解釈についてコメントがありました。
 「この言葉を、"価値提供"と考えてる人が多いけれども、正しくは"価値提案"。proposition は  propose。結婚の"プロポーズ"から考えると、プロポーズした段階では結婚していない。"価値提供"というのは一方的に結婚したことにしてる感じ」
 「サービス・ドミナント・ロジック」の話では、価値とは共創されるもので、一方的なものではないと説明されましたが、企業は常にお客さんと共創するために"提案"をし続けなければいけない、それが"価値提案 Value Proposition"ということ、だそうです。

 ネプラス・ユー大阪の別のセッションになりますが、広告界の巨匠であるライトパブリシティ 代表取締役社長の杉山氏は「広告クリエイティブは自己紹介ではない。 物の価値を転換すること。スペックよりWhyが重要で、意味を伝える。クリエイティブは人の感情の捉えごっこ。技術が進化し、産業構造が変われば、人の感受性(パーセプション)も変わり、生活様式もガラッと変わる」と語っています。まさに、このバリュープロポジションをクリエイティブによって価値に昇華させて伝えているのです。

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