ネプラス・ユー大阪外伝 #03

「変わらないために自らを変える」 広告界の巨匠 杉山恒太郎氏が語るクリエイティブの役割【ネプラス・ユー大阪2022レポート外伝 第3回】

 

「変わらないために、変わる」クリエイティブとマーケティングとブランドの交差点


 最後に「変わるもの、変わらないもの」というテーマに関することについて話が展開されました。杉山氏の著書「ピッカピカの一年生を作った男」 (小学館文庫)から「変わることを恐れないで、未来に向かって成長するという熱い気持ちを持ち続けることこそ、ピッカピカの精神そのものである」という猪熊氏からの紹介がありました。

 それに対して、杉山氏は「変わらないために、変わる。 変わらされる前に自分から変われば、 大事なところは変わらないで済みます。伝統を守ろうとすると、古くなるだけですが、伝統は作り続けるものです。そして新しいことは過去の遺産の中にあります。『未来は常に懐かしく、過去は常に新しく』という考えで、懐かしさのスパイスを過去から持ってくる。それがクリエイトという作業です」とクリエイティブの真髄について語りました。

 さらに続けて「新しいことを知っていると新しい仕事をするということは全然違います。新しいことを知っているだけでは意味がありませんが、本当に新しいものは歴史を学ばないと出てきません」と歴史を学ぶことの重要性についても話しました。

「変わらないために、変わる」という杉山氏の言葉がまさに、ブランディングとマーケティングとクリエイティブの交差点を言い得ている言葉だと考えます。ブランドとして大事にしている商品やサービスの根幹を、消費者や市場の意見に左右されて頻繁に変えてしまうのは、信念も軸もありません。

 しかし、消費者の変化に合わせてマーケティングの力を借りて、チューニングすることや新たなエッセンスを加えることは必須です。さらに、それを消費者に届けるためのクリエイティブによる跳躍も必須です。

「変わらないために、変わる。変えてはいけないものと、変えなければいけないものを見極める」この部分が非常に重要だとこのセッションを通じて感じました。
  
対談中の猪熊氏(左)と杉山氏(右)

 杉山氏の作品である小学館「ピッカピカの一年生」キャンペーンなどは、こちらの記事にまとまっています。クリエイティブの功績はこちらでご覧ください。

 それでは、次回のレポートに続きます。お楽しみに。

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