ネプラス・ユー大阪レポート

「敬意をもって、小さく、農業。」シャープ山本氏、コピーライター日下氏が語るコミュニケーションが嫌われる理由

  2022年7月21~22日に大阪にて初開催されたマーケティング・カンファレンス「ネプラス・ユー大阪」に参加しました。今回は、私がモデレーターを務めた公式セッションの「コミュニケーショントーク」と、スピーカーとして参加した「ラップアップセッション」、そして会場で感じた雰囲気などについて、お伝えしたいと思います。ネプラス・ユー大阪に参加した人は思い出に浸りながら、そうでない人は参考に読んでみて「次回は参加したい!」と思っていただけたら幸いです。

  では、まずは「コミュニケーショントーク」から紹介していきます。セッションの書き起こしではなく、当日までの流れやスピーカーのお二人の発言を受けての、私の感想なども交えてお伝えします。
 

なぜコミュニケーションは嫌われるのか、関西の2人と語る


 今回のコミュニケーショントークのテーマは、「なぜコミュニケーションは嫌われるのか(あんたら、かしこすぎるねん)」でした。スピーカーは、シャープ公式Twitterの「中の人」として消費者と日々コミュニケーションしているシャープマーケティングジャパン デジテルマーケティング部の山本隆博さん。もうひとりは、「商店街ポスター展」などの仕掛け人でフリーランスのクリエイティブ・ディレクター&コピーライターとして活躍する日下慶太さんです。
    
山本さんの自己紹介

 山本さんは「Twitterを始めて10年。会社が傾いているときも、社内外から非難されながら続けてきました。今日は、Twitterなんかしても、何も良いことなんてないですよ、という話をしようと思います」と自己紹介されました。
   
日下さんの自己紹介

 日下さんは「昨年末に電通を退社し、大阪でシーシャ屋を始めました。広告の仕事も続けていて、代表作は商店街のポスター展です。地方を元気にする活動を続けています」と話します。商店街ポスター展とは、電通の若手クリエイターがボランティアで商店のポスターを制作し、アーケードに展示するという企画です。ポスターのクリエイティブのユニークさがテレビ番組やSNSで大きな話題となりました。
   
能川氏の自己紹介

 さて、今回のネプラス・ユー大阪のテーマは、「変わるもの、変わらないもの」です。たとえば20年前、この世にTwitterというSNSはありませんでした。そういう意味ではコミュニケーションの手段やツールは変わっています。一方で、「伝えること」など、変わらないもの、変えるべきではないものもあるのだと思います。

 セッションの実施前に、私も含めて3人で1時間ほど話をしました。山本さんは主にTwitterで、日下さんは主にポスターで消費者とコミュニケーションをとっていて、両者ともに多くの人に受け入れられています。それは、なぜなのか。メディアの違いはあれど、何らかの共通点や再現性のあるポイントが見つかればいいなと思いながら打ち合わせが始まりました。3人でいろいろ話をするうちに「コミュニケーションで嫌われないために大切なこと」について、いくつかのキーワードが出てきました。そのキーワードの中からセッションでは3つに絞り、改めて話を伺うことにしました。
   
コミュニケーショントークのタイトル

 我々のセッションのタイトルは「なぜコミュニケーションは嫌われるのか」です。皆さんの中にも、今までにそんなことを考えたことがある人も、いらっしゃるのではないでしょうか。あるいは、そう言われれば、「何でだろう?」と思われたかもしれません。

 また、サブタイトルの「あんたら、かしこすぎるねん」とは、どういう意味なのか疑問に思った人もいるでしょう。まずは、その話からしていきます。ちなみにこのサブタイトルは、日下さんが名付け親です。
 

「かしこさ」とは何なのか




 日下さんは「みんな、だんだんかしこくなっていきます。特に、マーケティング業界はカタカナが多く、かしこい人が、かしこい人に向けてしゃべっていて、他の人が置いていかれているのではないかと思います。作家のチャールズ・ブコウスキーが『難しいことを難しく言うのがインテリ。難しいことを簡単に表現するのが芸術家』と言っているんです。ようは簡単なことを難しく言うのはアホということです。それは、芸術家でなくてもとても大事だと思います」と口火を切ってくれました。

 続けて「広告もまさに、難しいことを簡単にして消費者に伝えることを続けてきました。でも、今はかしこすぎる人が、かしこい人に語っている。これが昨今のマーケティングの風潮のような気がしています。それはやっぱり、かしこい人にしか伝わっていません。しかし、マーケティングは一般の人、大阪のおばちゃんも対象にするケースがあります」と話します。
  
フリーランス クリエイティブ・ディレクター&コピーライター
日下 慶太氏

 私も普段から難しい話を簡単な例で分かりやすく話す人を「かしこい人だなあ」と思っていましたが、このお話を聞いて、そういう人は「かしこい」ではなくて「あたまがいい」なのではないかと思いました。

 山本さんは「広告やマーケティングに関わるシステムや技術がかしこいのか、あるいはマーケティングに従事する人たちがかしこいのか分からないけど、とにかくターゲットに対する解像度が、かなり高いことが気になります。こいつに買わせる、当てる、刈り取るという言葉遣いが日常茶飯事になっています。そして解像度が高すぎて、それに当てはまらない人を排除するという暴力性が気になります。自社の広告に当てはまらない人は除外する、というような振る舞いが積み重なることによって、広告が嫌われていると思います。解像度を上げるのではなく、あえてぼんやりとさせて、企業側がアホになった方が嫌がられないのではないでしょうか。アンチ「かしこさ」ではありませんが、時にはかしこくないほうが、ものごと上手くいくはずです」と語ります。

 では、その「かしこさ」に気を付けて、嫌われないようにコミュニケーションするには、どうすればいいのでしょうか。
  
シャープマーケティングジャパン株式会社 デジテルマーケティング部
山本 隆博氏

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