ネプラス・ユー大阪レポート
「敬意をもって、小さく、農業。」シャープ山本氏、コピーライター日下氏が語るコミュニケーションが嫌われる理由
「敬意」がないと、聞いてすらもらえない
日下さんは、広告というコミュニケーションは、そもそも邪魔ものなんだから「お邪魔します」という敬意が必要だと言います。そして、それは山本さんが言う「振る舞い」にも通じます。
日下さんは「かしこさにもつながりますが、敬意があったら、かしこくなり過ぎることはないんだと思います。この人、分かるかなあとか、分かってくれるかなあとか、敬意があれば分かりやすく伝えようとするじゃないですか。逆に簡単すぎても敬意が欠けている気がします。こいつらはアホやから簡単に言うたろ、というのも違う気がするんです。タレントを出しといたら喜ぶやろ、買うやろという発想も敬意がありません」と語ります。
次に、山本さんは「敬意と言っても、誰に対する敬意なのか。たとえば、私のはたらく会社にはTwitterの中の人である自分に対する敬意は、ありません(笑)。たとえば、冷蔵庫の発売に合わせてツイートしろと言われますが、それで冷蔵庫が売れるわけがないんです。なぜなら壊れたら買うモノだから。なので、ツイートしたら売れるだろうという考えに、自分、ひいては広告とコミュニケーションに対する敬意がないと感じます。それはもっと言うと、お客さんに対する敬意もないということです。SNSを通じて商品を見せさえすれば、それでお客さんの行動が変容するだろうという考えは、言い換えれば、自分たち、企業の言いたいことを言えば、それで人間は行動するだろうという人間観です。これはそもそも、とても偉そうな態度だと思います。広告にタレントを出しておけばいいと単純に考えるのも、広告をつくる側に対しての敬意がないと思います」と語りました。
それに対して日下さんは「クリエイターに対する敬意がないですよね。クリエイターよりも、メディアを持ってる人が偉いとなりがち。たとえば、テレビCMを流すときに、GRPばかりを気にされる。でも、その効果は中身次第です。たとえば、人が多く集まる百貨店にモノを置けば勝手に売れるということではなくて、そこに何を置くか、つまり中身が重要です。同様に広告も、場所よりも何を伝えるかが大事です」と話します。
たしかに視聴率の高い番組に流れるテレビCMでも、スキップされたら意味がないですよね。どこに流すかより、何を流すかが重要です。ネプラス・ユーの他のセッションで紹介されたワトソンクリックの山崎氏が手掛けられたCMも、視聴者が「邪魔者」と感じないもののひとつだと思います。
能川 一太氏
日下さんの話を聞いた後、あるテレビ番組で、松竹の社長さんが、現場のクリエイターが活躍し、挑戦することができる場をつくることが重要なので、別の事業の一つとして不動産事業も行っていると言っていました。場を持つ人が、場をクリエイターのために活かすという、いい話だなと思って観ていました。
広告は邪魔者で嫌われているから、誰も耳を傾けてくれません。そこを前提に、コミュニケーションするためには、相手への「敬意」が無いと、聞いてすらもらえないということだと思います。