B2Bアジェンダ2022カウンシルメンバー特別企画

「B2B企業がマーケティングを『経営ゴト化』するためには?」【日本HP 甲斐博一】

  2022年10月12日から13日にかけて静岡県・浜松市(THE HAMANAKO)にて、BtoB企業のマーケティング部門の責任者が集結する合宿型カンファレンス「B2Bアジェンダ2022」が行われます。その開催に向けて、カンファレンスのカウンシルメンバーが「B2B企業がマーケティングを『経営ゴト化』するためには?」をテーマに寄稿する連載がスタートします。初回は、日本HP 経営企画本部/部長の甲斐博一氏が日本におけるB2Bマーケティングの発展と、その必要性の解説です。
 

B2Bマーケティングを考える上で欠かせない「営業との関係性」

 
日本HP 経営企画本部/部長 甲斐博一氏

 日本企業におけるB2Bマーケティングは、営業活動の発展とともに歩んできました。1970年代から多くの企業がセミナーや展示会で名刺交換を行い、その情報をもとに営業活動を展開するという方法が定着し、マーケティング部門は、その活動の中核としてセミナーや展示会を企画し、円滑な営業部門の活動を支援してきたという経緯があります。

 1990年代後半からは、インターネットの普及とともに、製品・サービスの提供側と顧客側の情報格差がなくなり始めました。加えて、2000年代からはデジタルサービスであるCRM(Customer Relationship Management)やSFA(Sales Force Automation)の発展とともに営業活動や案件管理がデジタル化されていきます。さらに、MA(マーケティングオートメーション)ツールの登場とともにリード獲得や管理の手法もデジタル化されるなど、これら一連の活動をマーケティング部門がリードすることになっていきます。

 一方、2000年代に入ると多くの企業において営業部門の生産性が追求され、一人あたりの売上を伸ばすことが重要指標となります。さらに、人口減少時代となった現在、営業人員の確保そのものが困難になり、どの企業にとっても生産性の追求がますます必要となっています。それ故に、マーケティング部門が営業の前さばきであるリード獲得の段階を担うことで生産性が向上すると理解し始めた企業も増えました。このように近年のB2B企業のマーケティングは営業部門と密接な関係を築きながら、時を刻んできたのです。

 加えて、日本経済が右肩上がりであった時代に営業部門を率いてきた人たちが、現在は経営側にいるケースも多く、彼らにとってのマーケティングは営業の売上を手助けする機能のひとつと捉えられています。残念ながら、これは言い換えれば、「マーケティング=販促機能」であり、B2B企業の「経営とマーケティングの関係」を考えていく上で重要な課題となります。
 

マーケティングの本質を見失ってしまったB2Bマーケティング


 B2Bマーケティングの「マーケティング」とは、そもそも何でしょうか。マーケティングの本質的な定義はここでは言及しませんが、マーケティングをプロセスとして分解して考えると、必要な要素が浮かび上がってきます。

 詳細は「B2Bアジェンダ2022」での各セッションでの議論に譲りますが、マーケティングを大きく分解すると、「現状分析➝戦略設定➝リソース配分➝プログラム実行➝評価と修正」というプロセスを歩むことが多いでしょう。ここで問題になるのは「マーケティングを営業活動のサポート」と定義してしまうことによる弊害です。こうした考え方では、マーケティングは営業部門の戦略実行計画配下にリソース配分されることになり、その前にある戦略策定の部分での活動が大きく欠如してしまうケースが多くなります。

 それでも前述のとおり、営業部門または営業部門出身の経営陣から見ると違和感はなく、結果として本来のマーケティングが実行すべき、上流工程が完全に欠如してしまいます。ここに現在のB2Bマーケティングが抱える課題が存在するのです。B2Cにおいては、そもそもマスマーケットを対象としているケースが多く、上流工程は自然な形でマーケティング部門に取り込んで実行することになります。繰り返しますが、B2B企業においては営業部門が歴史的にビジネスをリードしてきた経緯から、この状況を生みやすくしているのです。
 

B2B企業がマーケティングを「経営ゴト化」するためには?


 上記の課題を解決し、経営の一部としてB2B企業にマーケティングを定着させるためには次の2つのアプローチが必要となります。

 ひとつは、マーケティング部門が上流工程をしっかりと実行することです。そのためには、上流工程で使うスキルや実施すべき項目を理解する必要があります(詳細は「B2Bアジェンダ2022」での議論に譲ります)。ただ簡潔に言うと、この上流をマーケティング部門がやりきってこそ、初めてマーケティングが販促部門から脱皮することになります。

 そしてもうひとつは、経営側におけるマーケティングへの期待値の修正です。もちろん経営側がマーケティングを自ら学び、その期待値を理解する企業も一定数いますが、多くの企業ではボトムアップで取り組むことになります。それには経営陣と言葉を合わせ、人間関係を構築しながら、さきほどのマーケティングにおける上流工程の存在を少しずつ理解するように促し、小さな成功を収め積み重ねていくことが必要となります。

 そもそもマーケティングを理解し、きちんと実行できる組織能力が日本企業全体にあれば、現在のような「生産性の低さ」、ひいては世界的にみても「上がらない給与」といった状況は発生しないはずです。B2B企業に「マーケティング」を組織能力として定着させることは、日本経済の発展、そして豊かな暮らしの構築に最も大切な要素のひとつだと私は信じています。

 B2Bアジェンダへカウンシルメンバーとして参加するのは、私も初めてです。B2B企業が「マーケティング」の必要性を感じるセッションを多く組んでいますので、ぜひご参加ください。会場でお会いできることを楽しみにしています。
 

B2Bアジェンダ2022 開催概要

 
名称
B2B アジェンダ 2022
日時
2022年10月12日(水)-13日(木) <1泊2日>
会場
THE HAMANAKO(ザ 浜名湖)
〒431-0101 静岡県浜松市西区雄踏町山崎4396-1
参加者
BtoB事業を行い、マーケティング起点での企業変革に取り組む経営者、役員。
B2Bマーケティングに従事するマーケター、営業企画、営業推進部門の管理職の方々など
参加費
B2B事業者枠:無料(審査有)
プレミアムB2B事業者枠:150,000円(税込165,000円)
パートナー枠:290,000円(税込 319,000円)
ハッシュタグ
#B2B22
主催
株式会社ナノベーション
特別協力
アジェンダノート(Agenda note)

B2Bアジェンダ 公式サイトは、こちら

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