マーケティングアジェンダ2022 レポート #06

「スターバックスらしさ」を生み出す人事評価制度と世界観のつくり方とは【マーケティングアジェンダ2022レポート第3回】

 

ミッション&バリューズの体現が担保される評価制度


富永 意図や仲間に対する思いやりのような抽象的な事柄の評価は難しいと思います。では、どのように辛口な評価を下したり、問題点を指摘して成長を促したりしているのでしょうか?
  
Preferred Networks 執行役員 最高マーケティング責任者
富永 朋信氏

加藤 まさにおっしゃる通りです。数字として明確に評価基準が決まっていないので、普通に考えるとフィードバックも優しく、評価もなんとなくよいものになってしまいがちです。

スターバックスではマネージャーは部下の報酬に関して、ある程度決定できる権限が付与されています。その権限を持つということは同時に、結果について評価相手にも会社にもきちんと説明をするアカウンタビリティ(説明責任)があるということです。権限と、その説明責任が明確に紐づいているので、一人ひとりの評価を適正に判断することが促されます。

でも、何よりも大切なことは、マネージャー自身にも「人々の心を豊かで活力あるものにするために」というミッションの体現が求められる点です。マネージャーの立場から、評価対象者に対して「より成長してもらうためには、今その人に必要なものは何だろう」とマネージャー自身も一生懸命に考えるわけです。

さらに、ミッション&バリューズをチームとしてしっかりと体現することができていれば、相手はそれを受け止めてくれるだろうという信頼感ができます。このお互いの関係性があるからこそ、適切かつ必要なフィードバックがきちんとできるのだと思います。

富永 まず評価の制度設計がとても秀逸だと感じました。普通の人事制度であれば、年に1、2回程度行う儀式ぐらいの感覚になってしまう可能性もあり、形式的に決まる評価に対して、どこか逃げの気持ちが残ると思います。しかし、スターバックスの評価制度の場合、マネージャーは評価の根拠を人事部に説明しないといけないので、ミッションやバリューを綺麗ごととして放置せずに、組織に組み込んでいくための仕組みとして、本気で取り組んでいることが伝わってきました。

パートナーの一人ひとりが自分で考え、思いついたことを実行する。日々の仕事が大なり小なり自己実現に繋がるような運用がされている。その結果、自己実現に満ちた業務の設計と、それを評価する冷徹な仕組みだと思います。この2つのコンビネーションが、非常にうまく機能しているのだと思った次第です。

加藤 また、この仕組みだと、本当によく人を見ていないと駄目なんです。1年に1回の期末に形式的な面談をして終わりではないので、1年間対話を繰り返すことは、フィードバックを通して相手の成長を促すだけでなく、適切な評価をするためという意味合いもあります。評価をする側は非常に大変ですが、うまく回ればとてもパワフルな制度だと感じています。

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