マーケティングアジェンダ2022 レポート #07

A.T.カーニー梅澤氏とファミマ足立氏が語る「観光立国・日本」への道筋とは 【マーケティングアジェンダ2022レポート第4回】

  現在の日本では人口減少が著しく進み、特に地方はマーケットとしての魅力を大きく失いつつあります。そんな日本を救う切り札は、「観光」ではないでしょうか。観光庁・文化庁の全国各地の観光資源事業を支援し、「まちづくり」「ナイトタイムエコノミー」プロジェクトを仕掛けてきたA.T.カーニー 日本法人会長でCIC Japan 会長でもある梅澤高明氏をスピーカーに迎え、ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の足立光氏が聞き手を務めた「マーケティングアジェンダ2022」のキーノート「So what?で考える日本の『観光立国』再始動」からは、日本が世界の観光市場で成長するための切り口が見えてきます。
 

「観光立国」の4条件「気候・自然・文化・食」


足立 「マーケティングアジェンダ2022」最後のキーノートとなりました。梅澤さんはA.T.カーニーの会長ですが、今回は経営コンサルティングとは、違うテーマの話を聞いていきたいと思います。

梅澤 最初に現在、取り組んでいることについて紹介します。いろいろなことをしているので、よく「何者なんですか?」と聞かれますが、今は大きく分けて3つのことに取り組んでいます。

A.T.カーニー 日本法人会長/CIC Japan 会長
梅澤 高明氏

ひとつ目はA.T.カーニーという世界40カ国に展開している経営コンサルティング会社での仕事です。日本の会長という立場ですが、実態はいちパートナーとして得意分野、特に都市開発やイノベーション、経営ビジョンなどコンサルティングの現場で働いています。

2つ目は、2020年10月に日本最大級のスタートアップ向けの都心型イノベーション拠点「CIC Tokyo」を立ち上げて、そこの会長兼代表をしています。虎ノ門ヒルズビジネスタワーの2フロアに約200社のスタートアップが入居している超巨大なシェアオフィスです。都内で一番熱量の高いイノベーション拠点になっていると自負しています。

そして3つ目は、3年前に立ち上げた「ナイトタイムエコノミー推進協議会」という一般社団法人です。夜のカルチャーとエコノミーの創出を大都市はじめ全国で取り組む民間チームです。そして同法人を発展させる形で、「自然文化観光機構」という一般社団法人も立ち上げました。これは昼間のコンテンツを中心に、自然観光や文化観光の開発を全国でサポートする民間の専門家チームになります。

今日のセッションは「観光立国」がテーマなので、私の問題意識からスタートしたいと思います。日本の産業競争力は相当厳しく、特に地方の行き詰まり感は深刻です。その閉塞感を打破しようとしたとき、地方の観光や文化は、高いポテンシャルがあると思っています。観光立国の司令塔的な立場であるデービッド・アトキンソンさんは、観光立国には4つの条件が必要だと言います。それは「気候・自然・文化・食」です。

この4条件を満たしているのは、日本を含めて世界でも数カ国しかありません。特に日本は観光資源として「自然と文化」に舵を切っていく必要があると考えています。文化の面でみると、漫画・アニメ・ゲームはもちろんのこと、食・建築・工芸・伝統と、実に新旧さまざまです。これだけの間口の広さと奥行きを持っている文化立国は、世界でも数少ないと思います。私のメインテーマとして、今後、数十年のキャリアは日本の文化と観光を中心に取り組んでいこうと考えています。

インバウンド観光は、日本の成長戦略のひとつであり、新型コロナ前は訪問客数が右肩上がりで伸びていました。輸出金額という側面でも、2019年時点で自動車に次ぐ第2の産業になっていましたが、コロナでほぼゼロになってしまいました。ところが、アニメや漫画に注目すると、IP別の総収入ランキングでは、世界のトップ10のうち5つが日本発です。

足立 どんなキャラクターですか。
   
ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)
足立 光氏

梅澤 ポケモン、ハローキティ、アンパンマン、スーパーマリオ、そしてなぜか少年ジャンプが入っています。食に関しても、ミシュランガイドの星の数、あるいは三ツ星レストランの数で、東京は世界で1位を取り続けています。建築業界のノーベル賞といわれるプリツカー賞の受賞者を最も多く輩出しているのは、米国と日本です。丹下健三さん、安藤忠雄さん、伊藤豊雄さん、坂茂さん、磯崎新さんなど計8人の、世界で活躍する日本人建築家が受賞しています。それから伝統文化でも、みなさんご存知のように、歌舞伎、茶道、日本庭園などさまざまな歴史を持った文化が日本には存在しています。インバウンドに対して多くの品揃えがある日本が一番稼げるのは、やはり観光だと考えます。

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