B2Bアジェンダ2022外伝 #02

売上を10倍の200億円に。ペイント業界のリーディングカンパニー武蔵塗料の企業変革の真髄【B2Bアジェンダ2022レポート外伝 第2回】

 

商品の本当の価値を知る大切さ


 最初に、福井氏は社長に就任した当時の武蔵塗料の課題について語りました。
   
武蔵塗料ホールディングス 代表取締役
福井 裕美子 氏

「決められた仕事を効率的にすることばかりが大事にされ、工場では会話をしない状態でした。製造という観点ではプロフェッショナルとして100点でしたが、つくったものが消費者にどう届くのか、どこに価値を感じてもらっているのかなどを考える習慣がありませんでした。これは自分たちの仕事の価値がどこにあるかを知らない状態とも言えます」と、福井社長は当時を振り返ります。

 例えば、社員に「この塗料が最終的に何に使われているか知っていますか?」と聞いたら「知りません」と答える社員が大半という状態だったようです。商品を最終的に受け取る消費者との距離があると、自分の仕事と消費者の笑顔が結びつきにくくなってしまいます。こういったことは、皆さんの企業でも起きているのではないでしょうか。

 その結果として、社員一人ひとりが自分の仕事や商品に対する肯定感が低くなり、本当の意味での価値を考えません。そのため、仕事や商品に改善していこうという思考にならないため、新製品やヒット企画が生まれてこなかったのです。
 

概念と理念の浸透が価値を上げ、売上を上げる


 当時の武蔵塗料は、なぜそのような状況になってしまっていたのか。それは「忙しいから」でした。期日までの納品と製造効率を大事にしていたのです。そこで福井社長は、組織が成長するために、まずこの概念・思想の整理が必要であると考え、経営理念をもとに会社の在り方、考え方をまとめることから着手しました。

 しかし、就任したばかりの若い社長の言葉では社員からの共感が得られないと考え、当時の社員に尊敬されていた創業者である祖父が考えた社是を、現代風にわかりやすく再構築することから始めました。ただ、「概念的なものであり、思想は価値のないものだ」と思われていたので、「忙しいのに、なぜ既にあるものをつくり直すのか」といった反発もあったといいます。

「当時は『全社員が精神的に物質的に豊かで誇りを持てる』という経営理念に一文がありましたが、人それぞれ豊かさのために、どういう会社であるべきなのか、どういう働き手であるべきなのかという解釈が異なりました。そのため、まずは解釈を揃える必要があると考えて、『よい会社にするために、力を貸してください』と強い意志を示して、少しずつ協力してもらいました」と福井氏は語ります。

 そして、社是を読みやすい言葉に書き換えた「musashi color」という80ページの小冊子をつくりました。この内容と意志がそぐわない場合は、辞める社員もでるのではないか。と覚悟したそうです。私は会場で福井社長が持っていた秘伝の「musashi color」を見せてもらいました。内容は詳しくはお伝えできないのですが、本質的な内容が非常にわかりやすくまとめられていました。
   
武蔵塗料のmusashi color

 実際にカンファレンスの会場で武蔵塗料の社員にインタビューしましたが、毎日順番を決めて交代で「musashi color」を読み合い、理解を深める文化があるといいます。また、この冊子を無くしたら社員の資格を失ってしまうくらい大切にされていました。

 これを世界全拠点の言語に直し、1000人以上の社員が理解するという、ものすごい徹底ぶりです。この「musashi color」があったからこそ、社員一人ひとりがお客さま満足と社会貢献を追求し、仕事への姿勢を変化することができた結果、プロダクトのクオリティが高まり、市場に受け入れられる価値を提供でき、売上が向上していったのです。

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