リテールアジェンダ2022レポート #01
ファミマ 足立光氏とサツドラ 富山浩樹氏が語る「小売業のマーケティングの極意」【リテールアジェンダ2022レポート第1回】
2022/12/01
「店舗体験」「商品サービス」「伝える力」の3つを軸に、小売の戦略について徹底議論を交わした「リテールアジェンダ2022」のスペシャルセッション「小売が売上を上げる3つのポイント」をレポートします。サツドラホールディングス 代表取締役社長 兼 CEOの富山浩樹氏をスピーカーに迎え、ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサーの足立光氏が聞き手を務めました。両者がLTV(ライフタイムバリュー)を上げる施策の中で、顧客の属性に合わせたカテゴリー展開をしっかりと考え抜くことなど、リテールの売上を伸ばす極意について迫ります。
サツドラの合言葉はLTV
足立 早速ですが、富山さんは売上を伸ばすために、普段どんなことを考えていますか。
富山 浩樹 氏
富山 我々はドラッグストアを展開していて、日用品などを総合的に扱っています。そのため、ただ売上を上げるという目的だけであれば、少し価格を下げたり、チラシを配布したりすれば、達成できます。でも、本当に重要なのは、ただ売上を上げることではなく、お客さまのLTV(ライフタイムバリュー)です。このLTVは、社内でも合言葉のように様々な場で出てきます。
足立 なるほど。要するに、瞬間的な売上ではなく、いかにお客さまに継続的に買い続けてもらい利益を増やしていくか、という部分にフォーカスしているんですね。そのために、どういったアプローチをとっていますか。
富山 まず、商品カテゴリーで考えることですね。どんなジャンルの商品を購入するお客さまのLTVが高いのかに目をつけ、そのジャンルのマーケティングを強化します。たとえば、ペットフードの中でもキャットフード、さらにその中でも缶詰などのウェットフードを購入するお客さまが来店頻度と購入額ともに高いです。そのため、ウェットフードをここ10年間ほど継続的に強化カテゴリーとして、競合に負けないよう意識しながら取り組んでいます。
一方で、ウェットフードのLTVが高いとはいえ、お客さまの母数を増やさなければ、いずれ頭打ちになることは明確です。新規顧客を獲得するためにも、サツドラをもっと知ってもらう必要があります。そのため、我々の店舗以外でウェットフードを購入している人を振り向かせなければいけません。
足立 そのために、どのような取り組みをしましたか。
富山 ニャンドラキャンペーンという企画を実施しました。プロ野球チップスのカードと同じように、対象商品と一緒にニャンズカードが付いてきます。ニャンズカードの猫は「ニャンフルエンサー」と呼んでいて、InstagramなどのSNSでファンの多い人気の猫に協力してもらっています。それにより我々はもちろんのこと、ニャンフルエンサーさんも宣伝してくれるため、SNSで非常に盛り上がり、今までサツドラで買い物をしていなかった新規顧客の獲得に成功し、売上も上がりました。
https://satudora.jp/campaign/nyandoracampaign3_lp/(こちらのサイトから引用)
足立 サツドラのウェットフードを購入することが目的のお客さまを増やす、つまりサツドラにとってウェットフードはサツドラの入口になるカテゴリーになるのだと思います。では、他のカテゴリーの商品を購入してもらうためにはどんな工夫をしていますか。
富山 一般的にマーケティング業界では、計画購買と非計画購買が3対7と言われています。この比率は、私も実感していて、何かをきっかけに来店してくれたお客さまがいかに店内を回遊してくれるかが重要です。そのため、どのカテゴリーの売上がどのように増えたかを確認しながらPDCAで回し続けています。
足立 つまり、その店に来店する理由になるような入り口になるカテゴリーをいくつかつくり、まずはそこを競合に負けないようにしっかりと強化していく。そして、来店してくれた方に非計画購買も含めて、他のカテゴリーの商品を購入してもらうという店舗づくりですね。サツドラの例でいうと、ニャンズカードをきっかけに来店したお客さまに対して、他の商品も購入してもらえるような店舗づくりが重要だったということですね。