リテールアジェンダ2022レポート #02
DX推進のために経営者の成績表をガラス張りに?トリドールホールディングスのDX戦略とは【リテールアジェンダ2022レポート第2回】
2022/12/06
丸亀製麺をはじめ多数の飲食ブランドを世界中で展開するトリドールホールディングス(以下、トリドールHD)。「グローバルフードカンパニーを目指す」という目標の達成に向けて「DXビジョン2022」を掲げ、2023年4月までに全業務システムのSaaSへの移行を発表するなど、全社でDXを推進している。今回は、同社 執行役員 兼 CIO 兼 CTOの磯村康典氏をスピーカーに迎え、デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏が聞き手を務めた「リテールアジェンダ2022」のセッション「常識を疑え、覚悟を持って未来へ!トリドールのDX戦略」の前半をレポート。新型コロナによって大打撃を受けて飲食業界に起きた変化と、同社のDX戦略とその原資を財務諸表から算出して確保する方法などに迫る。
コロナをきっかけにDXが加速したトリドールホールディングス
鈴木 今回、聞き手を担当するデジタルシフトウェーブの鈴木康弘です。まず簡単に自己紹介をしましょう。最初に入社した富士通では、システムエンジニアをしていました。その後、ソフトバンクに転職し、そこでECの専門会社を立ち上げてから(現セブンネットショッピング)、セブン&アイHD取締役執行役員CIO(最高情報責任者)に就任し、グループシステムの改革とデジタルシフトの骨格をつくりました。その後、2017年にデジタルシフトウェーブを立ち上げ、現在はデジタルシフトを目指す企業の支援を行っています。では、磯村さん自己紹介をお願いします。
磯村 康典 氏
磯村 私も鈴木さんとほとんど同じような経歴です。最初にシステムエンジニアとして富士通に入り、ソフトバンクに転職。その後、鈴木さんと一緒にセブンネットショッピングの創業期から8年ほど経験した後、トリドールHDや吉野家など、外食産業向けのITシステムを提供しているガルフネットに入社し、2019年9月にトリドールHDの執行役員CIOに就任しました。
鈴木 今回、磯村さんに登壇してもらいたいと思った背景は、トリドールHDのDXがものすごい勢いで進んでいるからです。特に注目したいのは、どのように経営層を説得し、前に進めていったかという部分です。では早速、外食業界の現状から磯村さんに説明していただきましょう。
磯村 まずは「国内外食上場企業 売上高トップ10社の2020年・2021年の業績」についてです。外食業界はコロナ禍で非常に厳しい状態にあり、2020年度はトップ10社中7社が赤字でした。トリドールHDも2020年4、5月の売上は半分に減ってしまい危機的な状況でしたが、それをきっかけにDXが加速しました。2021年度にはトップ10社とも黒字化していますが、どのように挽回したのか。国内外食トップ企業の特徴を見ていきたいと思います。
国内外食上位の特徴のひとつ目は、ファストフードやレストランのようにアルコールに依存していない業態が上位にいることです。実はコロナ以前は、居酒屋チェーンも入っていたのですが、やはり一番打撃を受けてしまいました。2つ目は、お惣菜などを買って家で食べる「中食」である持ち帰りや、デリバリーに対応していることです。3つ目は、日本国内だけではなく、グローバルでビジネスを展開していることです。トリドールHDも世界30ヵ国1700店舗以上を展開しているので、1つのエリアで業績が悪化しても、影響を受けにくい組織をつくりつつあります。