リテールアジェンダ2022レポート #03

シェアードサービスをBPOに切り替え、トリドールホールディングスがDXを推進する上で大切な覚悟とは?【リテールアジェンダ2022レポート第2回】

  丸亀製麺をはじめ多数の飲食店を展開するトリドールホールディングスは、「DXビジョン2022」を掲げ、新型コロナをきっかけに全社でDXを推進してきた。今回は、トリドールホールディングス執行役員 兼 CIO 兼 CTO磯村康典氏をスピーカーに迎え、デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏が聞き手を務めた「リテールアジェンダ2022」のセッション「常識を疑え、覚悟を持って未来へ!トリドールのDX戦略」の後半をレポート。トリドールホールディングスが全社で取り組んできた「DXビジョン2022」の全貌からDX推進の実情、組織体制、DXの実現に向けて大切なことまでを語った。
 

「DXビジョン2022」を実現するための基本方針の4つの核とは


鈴木 トリドールHDがDX推進に向けて掲げた「DXビジョン2022」について教えてください。
   
トリドールホールディングス 執行役員 兼 CIO 兼 CTO
磯村 康典 氏

磯村 まずは「DXビジョン2022」を目指す姿からお話しします。トリドールHDの基本方針のひとつ目は、店舗スタッフが「食の感動体験の探求」に集中できるように業務プロセスとITシステムを最適化することです。そして2つ目は「グローバルフードカンパニー」に相応しい成長スピードと高い事業継続性を支えるためのビジネスプラットフォームをSaaS(Software As a Service)、BPO(Business Process Outsourcing)、DaaS(Device As a Service)、ゼロトラストセキュリティの4つを組み合わせて実現することを基本方針としました。
   
DXビジョン2022の目指す姿

鈴木 一般的にDXというと、eコマースなどのフロントの話ばかりですが、磯村さんの言っていることは、会社全体のシステムを指していますよね。

磯村 そうですね。SaaSやDaaSのようにソフトウェアもハードウェアデバイスも購入するのではなく、月額料金を支払って使うことにより、やめたいときにやめることができることが重要なポイントになります。BPOでは、社内で業務を行うのではなく、アウトソースしているのですが、単なる外注とは異なります。わかりやすく例えると、部署を丸ごと外にお願いするイメージです。ここではよく、最後の承認は社内で行うなどの例もありますが、トリドールHDでは決済権まである程度渡しているんです。給与計算や経理の記帳などを任せています。

最後に、ゼロトラストセキュリティですが、社内のネットワークは信用せずにインターネットと直接繋ぐことを大前提とし、許可された端末は、許可されたWebサイトへどこからでも安全にアクセスできるネットワークを築くようにしました。
   
ゼロトラストネットワーク・セキュリティ

鈴木 この4つのが核になっているんですね。

磯村 はい、続いて「DXビジョン2022」をどう推進してきたのかを話します。2020年3月以前の業務システムは、自社システムでデータセンターにあり、端末はすべて購入したPCでした。ネットワークも社内ネットワーク(VPN)を使用し、バックオフィスの提携業務はすべて社内でオペレーションしているという状態からスタートしました。そこから最初に実施したのは、IT部門に対する不満を解消するための改革です。データセンターをやめ、すべてAmazonのAWSへの移行を3カ月で実施しました。

鈴木 それが一番手っ取り早く、コストも下がりますね。

磯村 そうなんです、それにトラブルも減ります。最終的にはすべてSaaS、BPO、DaaS、ゼロトラストに持っていくのですが、現在は、まだレガシーシステムと目指す姿のシステムが混在している環境です。少しずつですが、新しいほうの割合が高まっているのが現状です。

鈴木 さらっと話していますが、この計画を提案した磯村さんもすごいし、これを承認した社長もすごいと思います。

磯村 そこは、やはりトップの決断があったからこそ、進められたと思うので、ここも非常に大事なポイントだと思います。

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