リテールアジェンダ2022レポート #03

シェアードサービスをBPOに切り替え、トリドールホールディングスがDXを推進する上で大切な覚悟とは?【リテールアジェンダ2022レポート第2回】

 

DXを内製化しないからこそ、このスピード感で実現できる


鈴木 これを聞いて多くのマーケターが、自社の上司もこうやってくれないかなと考えていると思いますが、本気になればこのスピード感で実行できます。
   
デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長
鈴木 康弘 氏

磯村 では、なぜそれが実現できるのかというと、我々は内製化していないからです。最近では、「DXは内製化しろ」という話がはびこっていますが、そもそもエンジニアがそんなにいるわけがありません。そのため、すべてベンダーにつくってもらっています。ただし、ベンダーの言いなりになるのではなく、私が指示した通りに機能を取りこんでもらうというハードな交渉を経て、SaaSとBPOの組み合わせができました。

このようにするとベンダー側は、他社の外食産業でもトリドールHDのノウハウを提供することができ、ギブ・アンド・テイクでSaaSを次々に導入していった背景があります。そのため、同時並行で進めることができました。

鈴木 それはベンダーにとってもメリットですね。では、どのような業務をBPOしているのですか。

磯村 主に人事や給与、財務会計、庶務、コンタクトセンター、店舗のサポート、ITです。BPOにする基準は、事業規模が増えたときに、増員しなくてはいけない業務は足かせになってしまうので外に出しました。仮に、従業員が増えたから給与計算が間に合いませんでした、とは言えないのでBPOにしました。そこでは、経理の専門家ばかりが集まっている会社なので増員もできるでしょう。

SaaSとBPOの組み合わせで業務を実現しましたが、実は業務をいくつかに分類しています。まず、財務会計やレンタル端末、データマネジメント、電子決済などは、グローバルでも共通でできる業務です。このような汎用性の高い業務は、自社の業務をSaaSに合わせました。一方で、FLマネジメントやデジタルフードセーフティなどの、業界特有であり日本特有の業務は、他社にも通用する自社のノウハウをSaaSへ取り込んでもらいました。POSも、この辺に入ってくるので、データを取りこんでもらい、すべてSaaSで実現しました。それ以外、自社の独自性が高い業務は、BPOセンターの作業として吸収する。これが全体の業務改革の骨格です。
   
SaaSとBPOの組み合わせ

鈴木 磯村さんは、さらっと説明していますが、ここまで全体を見て実行することは非常に大事なことです。

磯村 実際に、BPOセンターにバックオフィスの業務をどのように移管したのかという話ですが、1990年の時点では、ひとつの事業会社でした。その会社を2016年に、持株会社と事業会社に分けました。これは私が入社する前の状態です。

その次に、持株会社からシェアードサービス会社をつくり、戦略や企画の業務は持株会社に残し、経理財務、人事給与、IT運用、コンタクトセンター、店舗事務支援などの、ルーティン業務をシェアードサービス会社に置きました。

そのシェアードサービス会社のルーティン業務を、次々にBPOベンダーへ移管しました。私は、このシェアードサービス会社の社長も兼務していて、ここの業務をすべてBPOに出すということを先頭を切って取り組んでいます。
   
BPOセンターへの業務移管

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